塚田こども医院/ヘルス・レター 531

鉄欠乏性貧血


 成長の著しい子どもたちには様々な栄養素が必要です。とく鉄分は血液を作るだけではなく、筋肉にもとても重要。

 ゼロ歳後半〜1歳と思春期は鉄分の摂取量が足りないための貧血(鉄欠乏性貧血)がしばしばおきています。

 お子さんの栄養の取り方についても気をつけていただき、もし貧血になっていたらしっかりと治療を受けて下さい。

1.貧血には2種類ある?

 「貧血」という言葉はよく混同されています。朝礼の途中などで倒れることがありますが、これは脳にいく血流が少なくなり、立ちくらみをおこしたもの。正確には「脳虚血」という状態です。

 もう一つの「貧血」は、血液の成分が薄い状態をいいます。

2.医学的な貧血とは

 血液には赤血球という血球成分があります。扁平な袋になっていて、その中にヘモグロビン(血色素)というたんぱく質を入れています。ヘモグロビンは酸素や二酸化炭素を運ぶ大切な役割をしています。このヘモグロビンが一定量以下になることを医学的に「貧血」とよんでいます(表.1)。

 もしヘモグロビンが異常に少なくなると、体内の酸素が不足し、顔色が悪くなったり、疲れやすくなったりします(表.2)。過度に貧血が進行すると、生命の維持に支障をきたし、成長障害や死にいたることもあります。

 そこまでいかなくても、元気がない、体調を崩しがち、運動すると具合が悪くなる、などという子どもは貧血も疑うべきでしょう。

3.血液と鉄分の深い関係

 体内でとても大切な働きをしているヘモグロビンは、鉄の元素を中心にもつたんぱく質。赤血球の寿命はおよそ100日で、ほぼ毎日1%の赤血球が入れ替わっています。ヘモグロビンの中の鉄は捨てられることなく、新しいヘモグロビンに使われます。

 鉄は筋肉組織や肝臓などでも使われています。そのため体がどんどん作られる乳児期と思春期にはリサイクル分だけでは足りず、食事からより多く鉄分をとる必要があります。

 生理の始まった思春期以降の女性は、血液が体内から失われるわけですから、やはり鉄分がよけいに必要になります(表3.)。

4.思春期が心配

 いま思春期の女性は多くの問題を抱えています。「太りたくない」という思いが強く、過度なダイエットに走りがち。栄養不良によって貧血になるだけではなく、成長障害、自律神経失調など、体の異常をきたすこともあります。将来、子どもを生むことができない体になってしまうことも。

 お子さんの体重が急に伸びなくなったら要注意。さらに体重が減ったり、生理が止まったら赤信号です。医師に相談して下さい。

 また激しいスポーツを過度に行うことで貧血が進行することがあります。体格が大きくなるのに見合うだけの十分な鉄分を摂取できていないかもしれません。また足の裏を強く打ち付けることによって赤血球が壊されていることもあるようです。

 子どもにとって健康を害さないよう、スポーツについても適切に指導することが必要です。

5.食事の注意

 もしすでに鉄欠乏性貧血の状態になっているときには、食事で補うだけでは不十分です。鉄という原料を薬で補給しなくてはいけません。といっても数か月内服するだけですが。

 食事は鉄分の多いものを・・レバー、ひじき、カキ、大豆、あさり、豆腐、ほうれんそう、などなど・・。しかし、これらだけを食べていたのでは、他の栄養不足が生じます。

 基本はバランスのとれた食事を、毎日3食、抜くことなくきちんととること。そうすることで、体に必要なすべての栄養素を十分にとることができます。

6.毎日の生活から食育を

 病気やケガをすると自分の体のことを意識します。でもそうなってからでは遅いこともあります。

 「食」という漢字は「人」を「良くする」と書きます。子どもたちの日常の中に、「食」を通して体と心の健康作りに関心をもってもらうことが大切です。学校や家庭で、日ごろからの働きかけをぜひお願いします。

表1.ヘモグロビンの正常下限値(WHO)
 幼児(~6歳) 11g/dl
 小児(6~14歳)12g/dl
 成人男性13g/dl
 成人女子12g/dl
 妊婦11g/dl

表2.貧血の症状
 1.顔色が悪い
 2.疲れやすい
 3.めまい(立ちくらみ)
 4.動悸
 5.息切れ
 6.頭痛
 7.成長の障害など

表3.鉄欠乏性貧血の原因(小児期)
 1.鉄の摂取不足
  ・偏食
  ・「ダイエット」など
 2.鉄の吸収障害
  ・胃腸の病気など
 3.鉄の需要増大
  ・体の急激な成長
  ・過激なスポーツなど
 4.鉄の排泄増大
  ・月経
  ・消化管出血など