食の細い赤ちゃんの発育

今回は離乳食のことでお聞きしたいのですが・・。娘は低体重出生児で生まれ(2189グラム/43.5センチ)、8ヶ月になった今も6900グラム/64.8センチととても小さめです。離乳食の開始は通常どおりの5ヶ月のときで、現在は2回食です。ただ、食が細く、離乳食を食べるとその後のミルクはほとんど飲みません。この場合、離乳食を少なくしてもミルクを飲ませるようにしたほうがいいのでしょうか? 少しでも体重を増やしたいのですが、栄養的な面からいうとどうなのか気になります。(東京都・Aさん)

お子さんの発育ですが、体重や身長の伸びはとても気になると思います。
私たちも「健診」というとまずそれらの計測から始まりますし、ともすると「計測」だけで終わっているようなときもあるかもしれません。
それほど大切な数字ではあるのですが、でも、これらの数字はお子さんの発育や発達を表す唯一のものではありません。
むしろ、多くの数字や評価の中の一部分だということを、まず最初にご理解下さい。

お子さんみんな遺伝子が違い、性格も育ち方も違います。
「平均的な姿」からの違いが大きいと、ちょっと心配になるときもありますが、でも、それだけで病気であるとか、不健康であるとかいうことはありません。

昔の話で恐縮ですが、日本では戦後「赤ちゃん競争」なるものがありました。
栄養失調のような戦前・戦中の赤ちゃんではいけないということで、赤ちゃんの発育を主に体重で競ったものです。
もちろん体重の多い方が優勝です。
母乳よりも人工乳がもてはやされ、さらにそこに砂糖を混ぜてカロリーを高くして、体重を増やすこともあったということです。
その結果、体重は大きくなっても、それが健康な発育なのか。
ただたんに肥満児を作っていただけですよね。
今から考えれば誰でもが分かるような間違いに陥っていたわけです。
(「頭のよい赤ちゃんに育てましょう」という粉ミルクのコマーシャルも流されていました)
このころでしょうか、日本人は「元気な赤ちゃん=丸まると太った赤ちゃん」というイメージができあがってきたように思います。

母乳(ときに人工乳)や離乳食は、その総量が多ければ、体重は増えていくでしょう。
でも、それが健康であるとは限りません。
飲んだり食べたりする量はみんな違います。
(体重が少なければ、少しのエネルギーで足りています)

体型が「健康優良児」気味(つまり肥満気味)だと、どうしても運動は苦手になりやすいです。
逆にやせ気味にみえる赤ちゃんのほうが、活動が活発で、運動発達はどんどん先に進んでいることがよくあります。
(体が身軽なのですから、当然ですね)
そんなふうに考えると、体重などの数字だけではものがいえないように思っています。

発育や発達は、その子を丸ごと見た上でないと評価できません。
簡単に言えば、活動が活発で、にこにこ・ばたばたと元気にしている子は、まず順調だと考えていていいのではないかと思います。

小さく生まれたのですから、みんなに早く追いつかせたいと思う気持ちは親心として当然でしょうが、でも、焦らないでいいですよね。
その子なりの発達や発育の道筋をゆっくりと歩ませてあげたいと思います。

なお、離乳食については少しずつ進めていってかまいませんが、基本的には食事の替わりになるものです。
それでお腹いっぱいになっているときは、ミルクをあげなくていいですね。
ミルクを増やしたいということで離乳食をストップするのは考えものです。

2002.2.5

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塚田こども医院Q&A2002年 2月