アトピー性皮膚炎

2歳5ヶ月の男児です。昨年10月頃(1歳6ヶ月)より、眠る前などに膝の裏側を掻くようになりました。 そのうち膝の裏側は気が付くと治ったのですが、今度は右肘の裏側を掻き始め(これは赤いブツブツが出ました)、これはなかなか治らず。そのうち背中やお腹も掻き始めたので、かかりつけの小児科と皮膚科を受診しました。(2002年初夏のことです)小児科では即「アトピー」と診断され、皮膚科では「断言できない」とのこと。 皮膚科で比較的緩めの(医師曰く)ステロイド軟膏を処方されました。 その時に皮膚科医師から「痒い時塗って、綺麗になったら保湿」と言われ、今に至っています。困ったことに、夏の間に患部が増えてきています。 現在では、両肘・両膝・両手首のくびれが、かさかさしてやや皮膚が硬く皺があります。ブツブツがありません。紙おむつが当たる部分も、怪しい状態です。ただ、背中とお腹は今のところ保湿剤を風呂上がりに塗っているだけですが、湿疹はありません。(Oさん)

アトピー性皮膚炎の診断や治療については、なかなか一筋縄ではいかないところがあります。
そうとう個人差があるので、対処の仕方もお子さんによってずいぶんと変わってきます。

1.保湿→普通のかゆみ止め→ひどくなったらステロイド という繰り返しです。だいたい10日くらいの周期で繰り返しています。 ステロイド剤は必要なお薬と判っているのですが、やはり長期使用の副作用が気になります。どの程度で「長期使用」と言われるのでしょうか? また、現在の使用法に問題はないでしょうか?

赤みや痒みといった湿疹病変があれば、湿疹用の外用薬が必要かと思います。
程度が軽いようでしたら非ステロイド薬、ある程度以上ではステロイド薬です。
小児の場合には、中程度以下の強さのステロイド薬を主に使用しています。
赤みや痒みがなくなり、乾燥肌だけであれば保湿薬に切り替えていきます。
そのままうまくいくこともありますが、次第に湿疹が強くなっていけば、また治療用の外用薬を使用することになります。
こういったことを繰り返していくうちに、次第に皮膚の様子が良くなっていけばいいですね。

長期使用というのは特に決め事はありません。
「短期」というのはおそらく数日、「中期」というのは数週間という印象です。
それからすると「長期」は数ヶ月以上ということになりそうです。
しかし、通常の使用量(数日以上でステロイド外用薬1本使う)ではこの「長期の副作用」、つまり副腎萎縮などは生じません。

2.アトピー性皮膚炎というのは、慢性化すると聞きますが時間をかけてじわじわと拡がることもあるのでしょうか?

アトピー性皮膚炎はもともと慢性の病気です。
皮膚科学会の「診断基準」には、乳児では2か月以上、それ以外では6か月以上続いていることとあります。
また、症状がいつも同じではなく、違う場所にまた出てくることも良くあります。

3.全体的に乾燥肌という感じではなく、どちらかと言うとしっとりした肌です。部分的なアトピーということもあり得ますでしょうか?

アトピー性皮膚炎は全身的な病気ですが、症状が出る場所は様々です。
年齢によって出やすい場所もあります。
患者さんによって症状の出方、程度はまちまちです。
「部分的」なアトピー性皮膚炎もあるわけですが、経過を長めに見ることで本当のアトピー性皮膚炎かどうかが次第に分かってくるものと思います。

4.肌の乾燥が原因と思いこんでいたのですが、夏に増えたということは、汗が原因にもなりうるのでしょうか?

乾燥肌はアトピー性皮膚炎の症状を悪くさせるきっかけ(誘因)にはなりますが、「原因」ではありません。
皮膚の乾燥以外にも、汗、感染(とびひなど)、機械的な刺激(引っ掻き傷など)、気象条件など、いろいろなことが症状を悪化させます。
また、痒みは肌が温まっているときにはひどくなるので、夏に悪化することもあります(痒くて引っ掻くとますます症状が悪くなります)。

アトピー性皮膚炎は、単純な病気ではなく、その原因や誘因は複雑にからみあっています。
また、本当にアトピー性皮膚炎かどうかも、なかなか分かりづらいところがあります(診断基準に明確なものがなく、個々の医者によって違ったり、科によって違うこともよくあります)。
お子さんの症状が落ち着かないようでしたら、主治医の先生とよくご相談になって下さい。

2002.9.18

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塚田こども医院Q&A2002年 9月