移行抗体

移行抗体ですが、日本脳炎、結核、ポリオ等は胎児に移行しないため、出生後早い時期にワクチン接種等を行うようですが、何故、これらの抗体は胎児に移行しないのでしょうか。(Kさん)

移行抗体というのは、母胎から胎盤を通して胎児に与えられる抗体のことです。
感染症の発症を予防できる移行抗体には、いくつかの条件があります。
まずは母が十分な抗体を持っていること。
抗体が胎盤を通過すること。
抗体が一定の期間、新生児の中で残っていること。
ざっと以上でしょうか。

抗体の種類には「液性免疫」と「細胞性免疫」があります。
液性免疫とは免疫グロブリンというタンパク質によるもので、これには数種類があります。
細胞性免疫は主にリンパ球の中に記憶された免疫のことをいいます。

一部の免疫グロブリンは胎盤通過性があり、移行免疫になりうるものです(IgG)。
細胞性免疫は胎盤を通りませんので、移行免疫になりません。

麻疹、ムンプス、風疹などに対する抗体が母にたっぷりとあれば、新生児にとって有効な移行免疫になります。
百日咳などに対する免疫は液性免疫ですが、成人にそれほどの免疫がないため、移行免疫としては不充分です。
結核や水痘に対する免疫は細胞性免疫が主で、移行免疫はないものと考えれます。
ポリオに対する免疫は、腸管の粘膜内にある液性免疫(IgA)ですので、胎盤を通過することはありません。
なお、日本脳炎は一定の移行免疫があるものと思います。

ワクチン接種は結核は生後すぐから可能ですが、日本脳炎とポリオは生後6か月以降に行っています(日本脳炎は通常は3歳から)。

2004.5.10

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塚田こども医院Q&A2004年5月