院長の書斎 003

四人はなぜ死んだのか --インターネットで追跡する「毒入りカレー事件」

著 者
三好万季(みよし・まき)

出版社
文芸春秋(1999.7刊)

定 価
1143円(税別)

分 野
ノンフィクション

感 想

2年前、和歌山でおきた「毒入りカレー事件」について、当時まだ中学生だった彼女が、「夏休みの宿題」で書き上げたもの。月刊「文芸春秋」で話題になった際に、さっそく読み、ため息をついた作品です。

ため息の理由--
(1)インターネットを駆使することが、こんな子どもでも自由にできるようになっている(私はまだ不自由だった)。
(2)事件当時、食中毒との情報も流れ、初期治療が不十分であったが、彼女はネットで検索をし、それが「ヒ素中毒」による症状であることをいち早く調べ上げた(現代は、「犯人は他にいる」というショッキングなものでした)。
(3)ヒ素中毒の解毒剤を見つけ、実際に被害者が使用できるように準備をした(医療従事者だって、そこまでしていない。あのときの保健所長のめちゃくちゃな会見の様子が思い出される)。
(4)インドでの大地のヒ素汚染による公害に対して、積極的に貢献したいと表明している(繰り返すけれど、まだ15歳の中学生が、です・・)。

ということで、この本は、私たちが行っている日本の医療体制が、じつは大変にお粗末であることを告発しているのです。たかが中学生の言うこと、と、無視するのは簡単ですが、でも、彼女の指摘している諸々の問題を真摯に考えてみるべきです。

そういえば、私が医師になろうと考えたのは中学生のときでした。今から30年ほど前、やはり医療事故などが大きな社会問題になっていました。「こんな医療で良いはずがない・・」と感じ、自分の将来を考えていました。今の私が忘れてしまっているものを、彼女は持っています。この本は、私自身の行き方を問う警鐘として、長く手元に置いておきたいと考えています。

作成日
2000.9.20

書斎の目次へ

このホームページのトップへ

(画面の左にフレームがない方)
ホームページのトップへ