院長の書斎 010

リトル ターン

著 者
ブルック・ニューマン(五木寛之訳)

出版社
集英社(2001.11刊)

定 価
1,400円(税別)

分 野
文芸

感 想

この本は、本屋でちょっと不思議な印象があって手にしました。翻訳者が有名ですが、どこかで宣伝文句を憶えていて、読んでみたいと潜在意識にあったのかもしれません。

ある日、急に飛ぶことのできなくなった鳥のアジサシが主人公。いろんな人(?)との出会いの中で、自分を取り戻し、また飛ぶことができるようになっていくという物語です。

翼、胴などといった外部のものが壊れたのではなく、自分の内部の何かがうまくいかなくなったから飛べなくなった。でもそのために、普段(普通)では意識しないものがいろいろと見えてきたり、分かってきて、自分らしさ(鳥らしさ?)とは何かという、人間存在(鳥存在?)の根元的な課題にぶつかることになっていきました。

自分とは何なのかという「アイデンティティーの確立」が大テーマのようですね。でもその過程で、たまたま出会ったカニとの交流が、心のよりどころになっています。互いをあるがままに認め合うことのできる友をもつことが、一番大切なのかもしれません。

あとがきに、「飛べなくなって困惑している友に、そっと手渡したい」とありますが、どうなんでしょうか。ちょっとマニュアル的で、底が浅いような気持ちがします。「五木さん、あなたが落ち込んでいるとき、この本を読むぐらいで立ち直れますか?」って聞きたいですね。この本を読んだくらいで飛べるようになる友だちなら、ほっといても大丈夫。大切なのは、この本を手渡そうとする友がいるかどうか。あるいは、本当の意味での友といえる関係に、二人が成長していけるか、ではないのかなと思いました。 

主人公アジサシよりも、脇役のほうが興味をそそられました。カニがそうですし、思慮深い星にも、もっといろんな話を聞いてみたいな。自分にはそんな友がいるかな・・(自分がそんな友でいられるかな・・)。

作成日
2001.2.10

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