2006年8月号(188号)   


 
 今年の梅雨は各地で大雨の被害を出しました。

 やっと梅雨があけ、これからは猛暑の夏。しばらくは過ごしにくい季節です。健康に留意しながらお過ごし下さい。

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 今月の話題
  ● 肥満は夏にも作られる
  ●【子どもの救急(19)】夏の事故予防
  ●【院内迅速検査(5)】血清電解質
  ●ミニトマトで窒息!
  ●【HP院長ブログより】排水口に吸い込まれた女の子
  ●お知らせとお願い
  ●感染症情報

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■肥満は夏にも作られる

 夏と言えば、昔は「夏ばて」する子どもたちも少なくありませんでした。日本の夏は蒸し暑くて熱帯のような気候。食欲が落ち、体力も消耗しがちです。

 でも、最近は逆に夏に太る傾向が強いのだそうです。それも肥満児ほど体重増加の傾向が強いということです。すでに「夏ばて」という言葉は死語になったのでしょうか。

 栄養や健康状態が良くなったことに加えて、エアコンの普及によって、涼しい室内で一日を過ごすことが多くなったからです。ゲームやテレビなどを見ているだけで、体はあまり動かさず、その一方でお菓子やジュースなどは多量にとってしまう生活ばかりしていたら、体にとって有害です。

 熱中症の予防のためにもエアコンを全く使わない生活は現実的ではありません。適度に使って下さい。暑いと思っても、ある程度は我慢し、汗をかきながら体を動かすことも大切です。間食・ジュースもほどほどに。

 また、体重の変化はお子さんの健康状態を示してくれます。急な体重増加は要注意。体重をこまめに量って、健康管理にお役立て下さい。




■【子どもの救急(19)】夏の事故予防

 夏になると、子どもたちはいろいろな事故にあいやすくなります。

 まずは熱中症のことが心配。暑い時間帯に、屋外で活動していると起きやすくなります。炎天下の外出はさけたり、必ず日陰で過ごすようにして下さい。帽子は必須。水分を十分取ることも忘れずに。

 熱中症になったとき、早い段階で対処しないと急激に状態が悪くなります。暑さのために元気がない、赤い顔をしているなど、おかしい様子があればすぐに涼しいところで休ませ、水分を与えて下さい。

 もし顔色が悪く、目つきがとろんとし、手足がぐったりしてきたら一大事。すぐに救急車で病院に向かい、対処してもらう必要があります。

 海やプールなどへ行く機会が多くなるので、水の事故もおきやすくなります。家の中でも、浴室で遊んでいたりするとおきてしまうこともあります。

 水の事故は発見が遅れれば死につながります。危険と思われるところでは、大人がたえず子どもから目を離さないでいることが必要。万一溺れたら、ただちに人工呼吸などの対応をし、救急車を呼んで下さい。

 自動車を使って出かけることも多くなるので、交通事故にもご注意を。余裕のあるスケジュールで、お子さんの体調をよくみてあげてください。長距離の運転は休みをしっかりとりましょう。

 炎天下の車内は高温になりますので、やけどする子もいます。もちろん、子どもだけを残しておくのは危険であり、論外です。
食中毒も暑さとともに多くなります。手洗いやまな板などの清潔に注意する、新鮮な食材を使い、調理したら早めに食べる、冷蔵庫を過信しないなどの対策をお願いします。

 夏になると夏特有の事故もおこりがちです。大人として責任をもって子どもたちを見守り、事故にあわないように注意しましょう。

 夏の終わりまで楽しく過ごせることを願っています。 




■【院内迅速検査(5)】血清電解質

 体の中には多量の水分があります。その体液には、他種類の電解質があって、それらはイオンという形として存在し、一定の濃度になるようたえず調節しています。

 何らかの原因でこのバランスが崩れると、体の機能が正常に働かなくなり、命に関わることもあります。

 代表的な電解質は下記の4つで、院内で迅速検査できます。いずれも、体内の濃度が低すぎたり、高すぎるとけいれん、意識消失、心停止などをおこしてきます。

 小児では嘔吐、下痢が強かったり、水分摂取ができないときなどに、電解質の異常が起きやすく、注意が必要です。

 ●検査値の参考基準値
 ・Na(ナトリウム) 135〜150 mEq/l
 ・K(カリウム) 3.6〜5.0 mEq/l
 ・Cl(クロール) 101〜109 mEq/l
 ・Ca(カルシウム) 7.5〜9.5 mg/l




■ミニトマトで窒息!

 ある保育園で、2歳ほどの子がミニトマトで窒息死してしまったとのこと。この園では庭でミニトマトも栽培していて、どうもそれを口の中に入れていて、誤って飲み込み、気管にひっかかってしまったようです。

 乳幼児は口の中に入れた物を誤って飲み込んだり、それを喉に引っかけて窒息する事故をおこす危険性があります。3歳くらいまでは豆菓子を与えないようにしてほしいとお願いしているのはこのためです。

 実はミニトマトによる窒息事故は、けっしてまれではないようです。その大きさが、小さな子でもすっぽり口の中に入る程度。噛みきればいいのですが、2歳くらいではまだ奥歯がありません。皮はわりと固く、つるつるとしています。まるでスーパーボールです。それが喉に引っかかってしまえば、呼吸が止まってしまうことは容易に想像がつきます。

 今回、この子の事故を防ぐことは可能でした。ミニトマトには窒息の危険性があるという知識があれば、園の中で栽培することは適切ではないという判断がされたことでしょう。

 さらに、「ハイムリック法」という救命法を行うことで、もしかしたら異物を取り除くことができたかもしれません。これは上腹部を圧迫し、横隔膜を押し上げ、肺の中の空気を使って喉の異物を押し出させようとするものです。医療従事者だけではなく、一般の方にもぜひ覚えていてほしいし、いざという時にはためらうことなく、その場ですぐに実行してほしい救命の方法です。





■【HP院長ブログより】排水口に吸い込まれた女の子

 今日で7月が終わり。昨日の梅雨明けで一挙に夏らしくなったような感じですね。夏休みはお出かけする計画の方も多いことでしょう。事故にあうことなく、楽しくお過ごし下さい。

 その事故のことですが、今日埼玉県の市民プールで、小学校2年生の女児が亡くなりました。もうニュースをご覧になった方が多いと思いますが、排水口を覆っている鉄製の柵がはずれていて、排水管に吸い込まれるという事故だったようです。

 なぜ柵が外れていたのかなどの原因や、事故の責任などはこれから明らかにされることでしょう。詳しいことはまだ分かりませんが、またもやこんな事故がおきてしまったことに憤りを感じます!

 以前からプールで、こういった事故が多発することが問題になっていました。文部科学省は全国の自治体に、安全管理を徹底するよう通達をだしていますが、それが守られないための事故がその後もありました。新潟県でも数年前、町のプールで排水口の柵がはずれて、児童が亡くなりました。「ボルトで留めておく」ようにという通達を完全に無視し、点検すらしていませんでした。当時の町の担当者には、先日有罪判決が出されました。

 今日事故のおきたプールは、報道ではボルトで留める処置はしてあったとのこと。では、なぞそれがはずれていたのか。故意による事件なのか、事故なのか・・。

 原因はまだ分かりませんが、今回の事故は完全に予防できるはずでした。その一つは、排水口の柵を二重にしておくことです。1つが何からのことで外れたり、破損しても、もう一つその内側に柵や網を設置しておけば、吸い込まれる事故は防げたはずです。「もしも」のことを考えると、こういった安全策は二重にも、三重にもしておくべきです。そのための費用は、微々たるものです。

 考えにくいのですが、故意に行われた可能性もあります。残念ながら、私たちの社会には悪意を持った人たちも一定の割合で存在しています。それを前提に、犯罪や事故・事件の予防策を考えておかなければ、思うつぼです。

 あるいは、見落としということもあります。毎日チェックしていることになっているかもしれませんが、けっこう大切なことが見逃されることはあるものです。毎日の作業ということで、それがマンネリ化し、本当はちゃんと見ていないというような事態もあるかもしれません。

 民間の会社に管理を委託していたということですが、その体制が万全かどうか。もしかしたら・・という考えにたって、対策をたてておくことも、また必要なのではないかと思います。実際にプールの監視員は学生のアルバイトも多いようですが、仕事の質を考えると、やはり心配な面はあります。

 そしてもう一つ、事故を防げるチャンスがありました。それは監視員が排水口の柵のはずれていることに気づいた時点です。もしその時にすぐプールを閉鎖し、利用者を急いでプールからあげることをしていたら、大事にはいたらなかったはずです。報道では、外れた柵をプールサイドにあげ、監視員が近くにいる人たちに口頭で注意するように呼びかけていただけということでした。

 あるいは、プールの排水ポンプを停止させるだけでも事故は防げたことでしょう。このプールは「流れるプール」になっていて、そうとうの量の水をポンプでくみ出し、別の口から給水していました。普通のプールの排水とは大きく異なっているわけで、それだけ吸い込まれてしまう事故の可能性が大きい構造です。

 危険な状況なのだと理解すれば、悠長なことは言っていられません。監視員のその時の行動を見る限り、緊急な事態であるという認識をしていなかった可能性があります。あるいは、大変なことではあるけれども、どう対処すればいいか、分からなかったのかもしれません。

 きっとアルバイトの監視員だったのでしょう。状況判断がきちんとできるだけの資質がなかったのかもしれません。異常時の対処について、訓練を受けていなかったのかもしれません。もっとも、仮にしっかりとしたマニュアルがあったとしても、そこには「排水口の柵が外れている場合」という項目はなかったでしょうね。

 基本はやはり危機管理です。市、会社といった組織の体制も問われます。現場にいた監視員一人ひとりの危機管理能力も、問題にせざるをえません。そして、それぞれのレベルでの危機管理対応を考える上でもっとも重要なのは、そこにいる子どもたちや利用者の存在です。かけがえのない命と体を守ることに、どれくらい心をくだいていたのでしょうか。

 夏休みに入ってから、水の事故が多くなったように思います。事故は思いがけないところでおきるものです。くれぐれも注意をし、安全に、楽しく夏休みを過ごしてください。


  《HP「院長ブログ」7月31日より》




■お知らせとお願い

《夏休み》
今月11日(金)〜16日(水)まで夏休みをいただきます。どうぞよろしくお願いします。

《工事》
ただいま医院建物の修繕工事中です。玄関・外壁・屋根の「お化粧直し」です。ご迷惑をおかけし申し訳ありません。とくに足場に近寄ると危険ですので、事故防止へご協力をお願いします。




■感染症情報

 今春から始まったおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の流行が、先月(7月)も続いていました。規模はやや小さくなってきていますが、完全な終息はまだ先のようです。夏休み中は少なくなり、その後また多くなってくるかと思います。しばらくはまだ注意をしていて下さい。

 梅雨明けも遅れるほどのお天気だったためか、「夏かぜ」の発生はまだ少なかったです。ヘルパンギーナ、手足口病、プール熱(咽頭結膜熱)などの夏かぜは、いずれも暑くなると増えてくるかと思います。

 水ぼうそう(水痘)やウイルス性胃腸炎も少なかったです。りんご病(伝染性紅斑)はいくつかの保育園で集団発生していました。マイコプラズマ感染症はまだ患者発生が続いています。気管支炎や肺炎をおこし、的確な抗生物質を使わないと咳が長びいてしまいます。

 麻疹、風疹の患者発生はありませんでした。

 暑さが厳しくなると子どもたちは皮膚のトラブルをおこしがちです。あせも(汗疹)、日焼け(軽い熱傷)、とびひ(伝染性膿痂疹)など、いずれも皮膚を絶えず清潔にしておく必要があります。また熱中症の発生も十分に警戒しておいてください。

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