2008年9月号(213号)   


 9月に入りました。
 これからしばらくは過ごしやすい気候になります。
 いろんなことができそうで、楽しみですね。


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今月の話題
 ●見守るということ
 ●医療と裁判
 ●【子どもの救急】お腹のトラブル(1)
 ●【院内検査】「正常値」とは
 ●お知らせ
 ●感染症情報

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●見守るということ

 9月は子どもたちの自殺が多くなる月なのだそうです。夏休みから2学期へのギャップが影響しているようです。

 たしかに生活リズムも変わります。わりと自由に過ごせていた夏休みから、学校のリズムに合わせなくてはいけません。一人でのんびりできていたのに、集団の中で友だちとの付き合いや、教師との関係をストレスと感じるかもしれません。

 そんな子どもたちを、家庭ではゆったりとした気持ちになれるように過ごさせてあげたいものです。

 お子さんの様子をよく見て下さい。心と体は一体です。悩んだり、落ち込んでいる時には、それが体に表現されます。顔色を悪くしたり、前屈みになったり、食欲が落ちたり。腹痛、頭痛といった症状になることもあります。

 子どもたちは変化に対応する力を持っていますから、だんだんと慣れてくるでしょう。子どもたちの本来の力が発揮されるようになるのは、やはり家庭が落ち着いていて、快い居場所になってこそ。そんな場を作ることが、親の役割だと思います。

 放任は良くありませんが、過干渉でうるさく関わるのも問題。適度な距離を保ち、子どもを温かく見守っていて下さい。


●医療と裁判

 先日、医療を巡って注目すべき裁判の判決が出ました。数年前、出産後の女性が手術中に出血死したメ事件モについて、産婦人科医が刑事責任を問われていたもの。

 女性は前置胎盤という特殊な病気で、出産後に大量出血をしました。止血のために胎盤を剥離しようとしたのですが、亡くなってしまいました。検察はこれを産科医の過失とみなしました。異常出血をした段階で、直ちに子宮の摘出手術をすべきだったというのです。

 判決は「無罪」。死亡原因は子宮からの大量出血によるものだが、このような場合でも胎盤剥離を試みるのは産婦人科で行われている一般的な処置であると認めました。仮に子宮全摘を行ったとしても、女性を救命できたという証明はできていないとも。

 元気にお産にのぞんだ妊婦さんが亡くなってしまうことは、とても不幸なことです。しかし、結果は残念なものでした。

 医師がもてる能力を最大に発揮し、最善の努力をしても、最高の結果がいつも得られるとは限りません。決して責任逃れをしているわけではありません。それが医療の本質なのです。

 実はこの病院の産科医は一人だけでした。彼が逮捕されたあと、産科は閉鎖されました。乱暴な起訴で地域の医療を壊してしまったことに対して、検察はどう責任をとるのでしょう。

 医療のあり方を考えさせられるメ事件モです。


●【子どもの救急(44)】お腹のトラブル(2)

 前回は腹痛の原因として便秘がそうとう多いとお話しました。この時の痛みの場所は下腹部(ヘソより下)のことが大半です。では上腹部(ヘソより上、みぞおち)の痛みがあったら・・それは胃のトラブルかもしれません。

 胃の中は食事を消化するために胃酸という強い塩酸が分泌されています。自分の胃酸で胃壁が傷まないように粘液が保護していますが、胃酸が強すぎたり、粘液が少なくなったりすると、胃酸によって胃粘膜が侵されることがあります。

 胃炎は胃の粘膜が荒れている状態。さらに進んで潰瘍(かいよう)になると胃の壁に穴があきそうになっています。これらの状態はとても上腹部の痛みが強く、空腹時に増強します(胃の中に食事が入ってくると、胃酸が中和されるので楽になります)。胃潰瘍や十二指腸潰瘍は大人の病気だと思われがちですが、子どもにもけっこうあるようです。とくに思春期ではそうです。

 不摂生やストレスがきっかけになるのは大人と同じ。生活リズムを整え、食事にも気をつけなくてはいけません。もっともストレスを無くすのは、なかなか難しいことですが。

 急な上腹部痛を訴えたとき、その程度がまだ軽いようなら消化の良い食事を少し摂ってみて下さい。お粥が一番ですが、とりあえずはビスケットのような物でもけっこう。胃酸分泌を刺激するような物は避けましょう。冷たい物や熱い物、炭酸の入った飲み物(胃の中で発泡して刺激になります)などです。

 しかし、そのようにしても腹痛がどんどん強くなったり、嘔吐を伴っているようなら、すぐに受診が必要です。とくに顔色が悪く、冷や汗をかいているようなら急いで下さい。
 
これからの季節はウイルス性胃腸炎が多くなります。この場合には腹痛よりも吐き気と嘔吐が強くなります。数時間は何も摂取せず、お腹を休ませて下さい。楽になってきたら水分を少しずつ与えてみましょう。


●【院内検査】「正常値」とは

 迅速検査の話題からは少し離れますが、今回は検査の結果について考えてみます。

 よく「正常値」という言い方をします。ある範囲に入っていればメ正常モだということです。正常と異常がはっきりとしている場合にはメ白・黒モの見分けは簡単です。しかし、実はそのようなことはむしろまれで、多くの検査はメあいまいさモがあるものです。

 「正常の上限」と「以上の下限」が区別できず、他の検査所見や診察所見などを組み合わせて初めて異常か正常かが分かるということが少なくありません。

 そうはいっても検査結果の評価をしなくてはいけないので、ある範囲を「正常」と決めています。それ以外を一応「異常」としています。

 従って、ある検査で「異常値」が出たからといって、それだけで「病気」があるというわけではありません。やはり多くの情報を総合的にみて判断する力が、私たち臨床医には求められています。


●お知らせ

☆子育てフォーラムのお知らせ
・当院主催第4回子育てフォーラムが開催されます。筑波大学教授宮本信也氏の「発達障害の理解と対応〜学校現場で困った時(児)にどう対応したらよいか〜」というご講演です。
・講師の宮本信也先生は、発達障害についての研究では日本の第一人者。分かりやすく解説してくれるでしょう。
・9月20日(土)13:30〜15:30、上越教育大学講堂(入場無料)
・入場整理券を差し上げています。ご希望の方は医院までご連絡下さい。
・多くの方のご参加をお待ちしております。

☆秋口は喘息発作を起こしやすい季節。とくに台風の接近や前線の発達している時。喘息のお子さんはあらかじめ発作止めの用意を。


●感染症情報

 先月(8月)は夏かぜが目立っていました。夏の病気ですから当然といえば当然ですが。とくに前半は手足口病とヘルパンギーナがそうとう多かったですが、後半になるにつれて減少。おそらく今後はそれほど多くは発生しないでしょう。

 プール熱(咽頭結膜熱)も夏かぜの一つで、症状がとても強い感染症です。全国的には多かったということですが、当院ではそれほど多いという印象はありませんでした。

 溶連菌感染症、ウイルス性胃腸炎は夏場はもともと少ないのですが、下旬になって少しずつ見かけるようになりました。秋以降は増加が予想されますので、注意していて下さい。

 RSウイルスによる細気管支炎が幼若乳幼児で散見されました。発熱、咳とともに喘鳴や呼吸困難をおこすこともあり、入院治療が必要になった乳児も数名いました。その場で診断できる検査キットがありますが、特効薬はなく、対症療法が中心になります。

 やはり咳がとても強くなるマイコプラズマ感染症(気管支炎・肺炎)もまだずいぶんと発生しています。

 水ぼうそう(水痘)とおたふくかぜは少数の発生でした。2学期以降また流行が再燃する可能性もあります。いずれも任意接種ですがワクチンがあります。ぜひ受けておいて下さい。

 麻疹、風疹の発生は当院ではありませんでした。

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