2009年4月号(220号)  

 いったん終息に向かうかと思われていたインフルエンザは、3月途中からまた再燃。

 この時期としてはかつてないほどの流行となりました。

 季節も冬に逆戻り。春の到来が待ち遠しいですね。

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今月の話題
 ●新しい門出にエールを
 ●「病児保育」の進化
 ●【子どもの救急】肘内障(肘のトラブル)
 ●【特殊検査】細菌培養検査(1)
 ●お知らせ
 ●感染症情報

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●新しい門出にエールを

 新年度がスタートしました。子どもたちもそれぞれ、新しいスタートの時です。新入園・新入学・進級。大きなお子さんは就職も。そんな晴れやかな季節なのに、残念ながら日本全体、いや世界全体が暗い影で覆われています。昨年からの大規模な経済危機は、私たちの生活にも大きく影響を与えています。

 子どもたちには明るい未来を約束してあげたい・・大人は誰しもが思っています。でも、今この瞬間を生きていることに不安を覚えていれば、自分たちの将来すら希望を持つことはできません。子どもたちに夢を語ることも、難しいでしょう。

 日本は世界でもっとも少子化が進んでいます。その原因はいろいろとあるでしょうが、若い世代が大きな不安を抱えていることの現れなのだと思います。子どもを生み、育てることに喜びを見いだすことができないでいるのではないでしょうか。

 究極の少子化対策は、今を生きている人たちがみなハッピーになることだと思います。若い世代だけではなく、お年寄りもそうです。生きることに不安がなくなれば、おのずと少子化問題は解決していくでしょう。

 そんな日本になるよう、良い政治を期待するのですが、どうもその反対ばかりが目についてしまいます。何とかならないものでしょうか。

 ともあれ、新しく門出をした子どもたちに、大きなエールを送ります。

●「病児保育」の進化

 上越市では新年度より「病児保育事業」を始めることになりました。これまでも「病後児保育事業」は2か所の施設でおこなっていましたが、病児=急性期の病気のお子さんについても、新たに対象になります。

 用語が混乱しているので、一般の方にとっては分かりづらいことでしょう。「病児」は文字通りには病気にかかっている子どもをさします。広い意味ではそのように使うことがあります。その中で“病気の回復期にある子ども”を区別して「病後児」と呼んでいます。

 急性期の病児保育(狭い意味)は、お子さんの具合が悪いわけですから小児科医がいっしょになってケアをする必要があります。回復期の病後児保育は、お子さんの状態が落ち着いているので、経験と知識のある保育士と看護師だけでも対応することができます。

 今から十数年前、厚生労働省がこの病児保育(広い意味)を始める時は病後児保育を主としていました。まだ小児科医の協力がさほど得られず、また一般の方にも理解が進んでいなかったからです。その後各地でしだいに体制がととのい、急性期の病児保育を行う施設が増えてきました。

 「病児保育」はいわば“新参者”であり、狭い意味で使われることが多いのは、このような経過があるからです。

 しかし当院での経験から、急性期の病児保育こそ働く親御さんにとっては切実なもの。最も必要とされる事業を、市として新たに取り組むことは、子育て支援に大きな一歩を踏み出したと言えるでしょう。

●【子どもの救急(51)】肘内障(肘のトラブル)

 子どもの腕のトラブルでよく見かけるのが「肘内障(ちゅうないしょう)」です。

 肘関節が一見脱臼をおこしているかのように見える状態です。実際は脱臼ではなく、橈骨(とうこつ・親指側の前腕骨)の骨頭を関節内に固定している靱帯(じんたい)がはずれたことによって、肘関節がうまく動かなくなっています。

 親御さんが急に腕をひっぱった時や、腕を下にいれて変な寝返りをした時などに生じます。痛みはさほどありません。外から見ても腫れたりせず、普通の状態に見えるでしょう。肘内障になるとお子さんは肘を少し曲げ、動かさずにいます。腕全体を動かさないために、肩関節がはずれたと思う方もよくいます。

 発生してからすぐであれば、医師が道具などを使わず、その場で治せます。徒手整復といって、はずれた靱帯をもとの位置にもどして終わり。すぐその場で肘を動かすようになります。痛みはありません。小児科でも行えます。しかし半日とか丸一日ほどすぎると、関節の中がむくんでくるために、簡単に治らなかったり、整復をしてもまだ痛みが残ることもあります。うまく治らない時には専門の整形外科に紹介しています。

 一度肘内障をおこすと、クセになります。靱帯が外れると伸びてルーズになってしまうからです。小学生くらいになると、骨が成長して大きくなるために、肘内障を起こさなくなります。

 いくつかの注意が必要です。大人が子どもの腕を持つときには、急にするのは危険。子どもが自分で力を入れてからして下さい。子どもが転びそうになっても、腕をもたず、体を抱くようにして下さい。

 なお、肘関節の近くの骨が骨折していても、同じように腕を動かさなくなります。もし転んだりして強く打ち付けていたり、痛みが強かったり、腫れがある場合は、すぐに整形外科を受診し、治療を受けて下さい。

●【特殊検査】細菌培養検査(1)

 子どもの病気で最も多いのは何らかの感染症。その原因の多くはウイルスによるものですが、細菌(ばい菌)によるものもあり、それらは主に抗生物質を使って治療します。

 細菌性の感染症の診断を正確にするためには、何という細菌が原因なのかを調べる必要があります。しかし、一般には必ずしも検査をしてから治療してはいません。病状が軽ければ検査の必要はあまりないでしょうし、感染症の種類によっては原因となる細菌の種類がほぼ決まっているからです。

 細菌の種類を決めるのは簡単ではありません。直接顕微鏡で見ることで分かることもありますが、一部に限ります。細菌の量が少なくて検査できないときには、増殖させてから検査をする「細菌培養検査」が行われます。日数がかかるのも難点です。

 尿、便、痰(たん)、耳だれ、浸出液などを採取し、それを専用の培地(細菌を繁殖させるための栄養を含んでいる)に移植し、培養させます。特殊な検査なので、専門の検査センターに依頼しています。

●感染症情報

 インフルエンザの流行に大きな異変がありました。例年は3月は終息に向かうのですが、今シーズンはむしろ発生数が3週間連続で増加しました。当院の統計だけではなく、厚生労働省の全国調査でも同様の結果がでています。3月に入ってからのインフルエンザの大きな再燃は、私は小児科医になって初めて経験しました。

 終息の時期を正確に予想することはできませんが、やはり春になり、気候が落ち着けば発生数はしだいに少なくなるものと思います。今シーズンは流行の開始も異例でした。12月上旬からというのは、史上3番目の早さ。従来のインフルエンザ(A香港型、Aソ連型、B型の3種類)ですら流行の予測がつきません。もしも新型インフルエンザが発生したらいったいどうなるのか、とても心配です。十分な注意をお願いします。

 その他では感染性胃腸炎の発生が増加しています。園や家庭での集団発生も少なくありません。

 溶連菌感染症も目立ちます。細菌性の咽頭炎で、喉の痛みがとても強く、熱や発疹がでることがあります。抗生剤による治療が必要。

 水ぼうそう(水痘)は少数ですが発生しています。ワクチン接種で予防できます(任意接種)。

 麻疹、風疹、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の発生は当院ではありませんでした。 

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