2009年6月号(222号)  


 季節は夏に向かい、暑いと思う日も多くなりました。
 熱中症予防や健康管理にも気をつけていて下さい。
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今月の話題
 ●これからも地域の子どもたちとともに
 ●【子どもの救急】犬に咬まれた時の対処
 ●国こそ「冷静な対応をお願いします」
 ●【特殊検査】染色体検査
 ●お知らせ
 ●感染症情報

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●これからも地域の子どもたちとともに

 今月は当院の開院記念の月。1990年に生まれ、満19歳になります。いわば成人式間近かです。

 開院当初まだ小さかった子どもたちが、すっかり大人になり、ときにはパパやママになって赤ちゃんを診察に連れてこられることもあります。子どもたちの着実な成長を見守ることができ、そして2世代にわたって主治医をつとめさせていただけるなんて、嬉しいことです。小児科冥利につきます。

 医院も生まれて間もないころからはずいぶんと変わってきました。より多くの患者さんが来られるようなり、予防接種や健診など、子どもたちの健康増進のための活動も多くなりました。

 若い方々の子育てを支援する仕事もしだいに増えてきました。時間外の電話相談や栄養士による栄養相談。昨年は臨床心理士による「心の相談室」も開設しました。

 そして何より大きなものは「わたぼうし病児保育室」の役割でしょう。病気になったお子さんを、いつでも、お断りすることなくお預かりしてきました。その成果が認められ、先月からは上越市の病児保育事業の委託を受けています。

 子育ては決められた道だけをまっすぐに進んでいくものではありません。山あり谷あり。脇道もあるでしょうし、逆戻りもあるかもしれません。

 その時々で、子育てがうまくいくよう、そして楽しくなるよう、少しだけ後押しをこれからも続けていこうと思っています。


●【子どもの救急(53)】犬に咬まれた時の対処

 犬などのペットと暮らすことが多くなっていますので、噛まれたといって来院される子どももいます。

 よく狂犬病を心配されますが、日本国内であれば狂犬病になることはない、と言ってよいでしょう。日本では狂犬病対策が徹底して行われたので、ここ50年ほどは患者発生はありません。飼い犬は毎年ワクチン接種を受けているはずですので当然ですが、たとえ野良犬でも今は大丈夫だとされています。

 しかし、狂犬病が発生していないのは日本のような島国だけであり、世界では少数派。海外ではまだまだ狂犬病はとても怖い感染症です(世界では毎年数万人が死亡していますし、死亡率はほぼ100%です)。

 狂犬病の心配はないけれど、歯はとても雑菌が多いので、咬み傷が深い時にはそこから化膿することがよくあります。まずはその場でしっかり洗って下さい。流水で傷の中を洗い流して下さい。できれば石けんを使った方が良いでしょう。その後医療機関を受診し、再度アルコールなどで消毒します。

 出血が強い時には傷の上からきれいなガーゼやハンカチで圧迫して下さい。通常の傷であればそれで止血するでしょう。

 深い傷は縫い合わせることもありますが、咬み傷の場合にはすぐに閉じてしまうと中で雑菌が繁殖することがあります。そのために当初は傷を解放のままにしておき、感染症が起きてこないことを確認してから縫合することになっています。化膿防止のために抗生物質を使うこともあります。痛み止めも必要かもしれません。

 咬まれたことによる心的なショックもあるので、処置が終わったら大好きなジュースやおやつをあげて下さい。(甘い物は、ときに最高の痛み止めになりますよ)

※海外で犬や動物に咬まれたときには狂犬病が心配です。傷口の清潔や消毒を念入りに行い、その後現地の医療機関で必要に応じてワクチン接種を受けるなどして下さい。


●国こそ「冷静な対応をお願いします」

 新型インフルエンザが国内で発生してから1か月・・毎日報道されるニュースを通して、いろんなことを考えさせられました。

 当初は検疫を強化していました。しかし、検疫では発症者を見つけるだけ(それも完全ではありません)。まして潜伏期にある感染者を見つけだすことはできません。ものものしい防護服を着ていましたが、使い捨てでなければかえってウイルスをまき散らすことになります。

 濃厚接触者が隔離されるニュースも、さも殺人ウイルスであるかのような印象を与えてしまいました。テレビのレポーターが病院や、患者さんのでた高校で現場からの取材をしていましたが、そこまでする必要があったのか疑問です。異様ともいえる報道でした。
 厚生労働省は発症者の年齢、性別、学校名、学年、あるいは職業、渡航目的などの個人情報を細かに公表しました。いつもはうるさく言う「プライバシーの保護」はどうしたのでしょう。その結果、患者さんや学校が特定され、いわれなき非難や差別がおきてしまいました。社会全体が、この病気と冷静に向き合うことができていなかった証拠です。

 新型インフルエンザに対しては臨機応変に対応すべきでしたが・・国の危機管理はゴテゴテにまわり、国民を不安にするだけでした。

 首相がテレビCMで「冷静な対応をお願いします」と呼びかけていました。確かにそうです。日本全体が冷静さを失っていました。でも一番冷静さでなかったのは、国自身です。何とも皮肉な話です。


●【特殊検査】染色体検査

 染色体とは細胞の核内にあって、遺伝子情報がつまった物質。人間は46本の染色体があり、両親から半分ずつもらって生まれてきます。

 精子と卵子の中にはそれぞれ半分の染色体が含まれていて、それが受精により新しい生命体になります。最初は1個の受精卵でしたが、それがどんどんと増殖し、人間の形ができていきます。

 この過程がうまくいかないことがあります。染色体の数が多かったり、少なかったり。一部が欠けているなど。程度が強いと妊娠が成立しなかったり、中断します(流産)。程度が軽いと、染色体の異常をもちながら生まれてきます。

 染色体の関係した病気の多くは生まれたすぐに分かりますが、一部はほかの子と同じように育つので、あとになってから気づかれることもあります。

 一般外来でしょっちゅう行う検査ではありませんが、身長の伸びが少ないなど、先天的な病気が心配なときには、この染色体検査を行い、病気の診断や治療に役立てることもあります。


●お知らせ

☆熱、咳、くしゃみなどのある時にはマスクを。新型インフルエンザに限らず、病気をほかにうつさないようにするエチケットです。

☆新しい日本脳炎ワクチンが発売されることになり、予防接種が再スタートするようです。詳しくは行政からの案内をお待ち下さい。


●感染症情報

 今春は季節性インフルエンザの流行がなかなかとまらず、5月下旬まで患者発生がありました。インフルエンザは寒い季節の感染症と思っていたのですが、あてはまらないこともあることを実感しました。(熱帯地域などは一年中インフルエンザが流行しているのだそうです)。全国的にも同じ傾向で、ようやく終息してきたものと思います。

 今年は新型インフルエンザの発生もあったため、インフルエンザに振り回されていました。こちらも日本では下火になっているようですが、引き続き注意をお願いします。

 感染性胃腸炎の流行が5月も続いていました。大半はウイルスによる感染症で、冬場に多いのですが、インフルエンザと同様に春になっても流行が続いていました。夏場には発生が少なくなるでしょうが、食中毒など、細菌による胃腸炎は増加します。食品の衛生管理にもご注意下さい。

 溶連菌感染症も流行が続いています。溶連菌という名前の細菌による咽頭炎。食事を飲み込めないような喉の痛みが特徴です。

 水ぼうそう(水痘)も保育園などで流行中。伝染力が強いので、周囲にいたら要注意です。抗ウイルス薬が著効します。

 麻疹、風疹、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の発生は当院ではありませんでした。 

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