2009年12月号(228号)  


 今年も残すところあと1か月。
 「師走」という言葉通り、しばらくは走り回っていることでしょう。

 新型インフルエンザの流行が落ち着き、良い年を迎えられることを祈っています。

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今月の話題
 ●ワクチン貧困国=日本
 ●【子どもの救急】新型インフルエンザの合併症に注意を
 ●ワクチンはどこに?
 ●お知らせ
 ●感染症情報

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●ワクチン貧困国=日本

 日本のワクチン行政がいかに貧困か、今回の新型インフルエンザのことでよく分かりました。

 以前から心配していました。ワクチンは急には作れません。パンデミック(世界的な規模での大流行)がおきた時は全国民分のワクチンが必要になる・・ふだんから季節性ワクチンをきちんと作り、多くの方に受けてもらえる体制が整っていなければできることではありません。しかし国内メーカーのワクチン製造能力は小さいまま。国がその増大を指示してはいません。

 季節性の予防接種は高齢者には公費負担をするけれど、子どもたちには1円も使っていません。今回の新型ワクチンも全額自己負担です。(自治体によっては補助がありますが、国による補助などはありません)

 ワクチンも用意できず、制度もないなかで、どうやってパンデミックから守ろうというのでしょう。国民の健康や生命を感染症の流行から守るのは国の大切な役割です。それができないのでは、もはや先進国とはいえないでしょう。

 麻疹の予防にも消極的でした。これまで日本は「麻疹ウイルスの輸出国」だと非難されてきました。数年前から2回の接種になり、やっと麻疹発生が減少しています。

 民主党政権は「コンクリートから人へ」をキャッチフレーズにしているのだとか。言葉だけで終わることのないよう、しっかり見守り、時には声を出していきたいと思っています。


●【子どもの救急(59)】新型インフルエンザの合併症に注意を

 新型インフルエンザは季節性とほぼ同じ症状で始まります。寒気やだるさを伴った突然の発熱。ぐったりした印象も共通です。

 合併症が問題になっています。一つは脳症。季節性インフルでも日本では年間に数百人の子どもたちがかかっています(なぜか日本人に多発しているようです)。新型インフルでも発生していますが、問題はその頻度。今年の夏から秋にかけて、多くの子どもたちが脳症にかかっていて、新型インフルの方がおこしやすいようです。

 発症は発熱からすぐのこともあります。うわごとを言う、急に走り回る、ママやパパのことが分からなくなる・・そんな症状が見られたら脳症が疑われます。また高熱が急にでるために熱性けいれんをおこしやすいのですが、もしもけいれんを繰り返したり、けいれんが長びいたりしたら、脳症によるものかもしれません。

 もう一つの合併症は重症肺炎による呼吸不全。肺の中に粘稠なタンがびっしりと詰まってしまう状態で、呼吸ができなくなります。これは季節性インフルではあまり見られず、新型インフル特有です。

 急に呼吸数が多くなり(多呼吸)、顔色を悪くしたり、唇が真っ青になってきます。単に咳が出る、タンがからんでいる、という症状であれば心配いりません。もし呼吸不全になってしまったら、直ちに酸素投与や人工呼吸が必要です。救急車を呼んで、入院のできる病院に向かって下さい。

 こういった合併症をおこさないためにも、新型インフルエンザが疑われたら(検査などで確認できなくても)、早めに、きちんと抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)を使用することが大切です。

 そして発症から数日は、お子さんの様子をよく見ていて下さい。


●ワクチンはどこに?

 持病のない子どもたちへの新型インフルエンザ予防接種がいよいよ始まります。新潟県は12月前半から「幼児」「小学生」「ゼロ歳児の保護者」を対象として予防接種を行うように指示をだしました。

 しかし、現場は大混乱。その一番の原因はワクチンの不足です。新型ワクチンはすべて「国家管理」。国内で生産されるすべてのワクチンを国が都道府県に割り当て、月2回のペースで出荷を指示します。

 都道府県では各医療機関にその配分を決め、問屋に納品を指示します。医療機関は直前にやっと「納品数」「納品予定日」が知らされる仕組みになっています。

 生産量が当初予定より少なくなったり、大人の接種回数が2回から1回に変更されるなど、国の指示がしょっちゅう変わります。自治体の担当者も、その都度振り回されているようで、可哀想です。

 「子どもたちへの接種(1歳?小学3年生)」に対する接種のスケジュールもたびたび変更されました。国は最初は12月後半からと指示。その後12月前半からに変更し、さらに11月中旬から接種するように都道府県に要請しました。東京都や大阪府などが11月中に開始したのは、こういった経緯からです。

 新潟県も国の指示に従い、12月前半から子どもたちへの接種を行うことを決めました。しかし・・ワクチンが足りません。現場に届いていません。

 11月24日に国から出荷され、県からは子どもたちに接種するように指示がでているワクチンが、この原稿を書いている11月30日になってもまだ納品されていません。これでどうやって12月前半からの子どもたちへの接種を行うことができるのでしょう。

 ワクチン接種を行うにあたっては予約をとるように指示がでています。そして予約をとってみたら・・電話回線はすべてふさがり、おしかりを受けました。直接窓口に来られる方がとても多く、診療に差し支えるほど。そんな「騒ぎ」が数日続きました。それでも予約をとれずに困っている方が多数おられます。

 現場のこと、そして何よりも国民のことをきちんと考えながら、政策立案をしていくという、至極当然のことが行政や政治に欠けているのではないのか、とあらためて感じているところです。

 12月後半からはワクチンの供給が十分になるといわれています。小児科などでの接種も順調になるでしょう。今すぐに接種できなくても、もう少し待っていただければ接種を受けられるはずです。

 でも・・その間にも新型インフルエンザの流行はさらに拡大していきます。親御さんのお気持ちを思うと、心が痛いです。



●お知らせ

○年末年始の休診を次の日程でいただきます。
  12月30日(水)〜1月3日(日)
 
○新型インフルエンザ予防接種は12月から一般の子どもたちにも始まります。しかし接種体制が整わず、ご心配をおかけしています。

○当院では11月中に予約受付を2回行いました。今後はワクチン納品数やキャンセル状況などをみながら受付を再開する予定です。


●感染症情報

 新型インフルエンザが大きな流行になっています。全国的にも「警報レベル」であり、地方に流行が拡がってきました。

 新潟県内でも新潟市や長岡市などでは10月から大流行でしたが、当地(上越市とその近隣)は一歩遅れて11月中旬から急速に患者数が増大。学級閉鎖や登園自粛が繰り返されています。当分は流行が続くものと思います。引き続き警戒をしていて下さい。

 新型インフルエンザでは重症化する場合があります。もしかかったら早めに抗インフルエンザ薬を使用した方がよいようです。お子さんの様子をよくみている必要もあります。

 その他では大きな流行をおこしている感染症はありません。おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)が一部の保育園で流行しています。今後他の園でも流行するかもしれません。

 夏かぜの一つである手足口病がまだ発生しています。しかし今後は少なくなっていくことでしょう。マイコプラズマ感染症はまだ見かけています。咳が強く、長びいている患者さんではこれも疑う必要があります。

 感染性胃腸炎、溶連菌感染症、水ぼうそう(水痘)などが少しずつ発生。いずれも冬場に多くなる傾向があります。注意をしていて下さい。麻疹、風疹の発生は当院ではありませんでした。

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