2010年6月号(234号)  



 ゴールデンウイークの頃は夏のような暑さだったのに、その後は肌寒い日が続きました。
 胃腸炎がまだ流行し、風邪なども多いです。天候不順は農作物だけではなく、人間の健康も左右しているようです。
 体調管理に気をつけてお過ごし下さい。

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今月の話題
 ●医院は二十歳(はたち)
 ●【色々なワクチン】脳を守るワクチン
 ●私の「原点」
 ●お知らせ
 ●感染症情報

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●医院は二十歳(はたち)

 6月は当院にとっては開院記念にあたります。そして1990年に開院したので、今年は20周年。人間では「二十歳」にあたります。おぎゃーと生まれて、ようやく成人になったということでしょうか。

 これまでを振り返ると実にいろんなことがありました。全く何もない状態から医院を立ち上げ、日々の診療を休むことなく続けてきました。

 予防接種や健診にも力をいれ、子育て支援のためにわたぼうし病児保育室を併設。昨年は新型インフルエンザのパンデミック対策として隔離棟も建設しました。そのたびにスタッフを増やし、増築し、設備を更新。いつも走り続けてきました。

 子どもたちの顔がたえず目にうかびます。もっと笑顔になってほしい・・そんな思いが小児科医としての「初心」ですし、喜びでもあります。次の10年間、そして20年間・・さらにパワーアップして、地域の子どもたちのためにお役にたてていければいいなと願っています。

 まずは私自身が健康で、元気でいなくてはいけないな、とつくづく思っているところです。これからもどうぞよろしくお願いします。


●【色々なワクチン】脳を守るワクチン

 子どもたちを様々な感染症から守るため、数種類のワクチン接種を行っています(法定接種)。また最近、任意接種ではありますが、新しいワクチンも日本に導入されるようになりました(ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン)。

 それぞれは子どもたちの健康や命を脅かす重要な感染症です。ワクチン接種により、そのリスクをあらかじめ少なくしたり、無くしたりするのが目的です。

 個々のワクチンの話は別にゆずり、今回は「系統別効果」を考えてみます。

 感染症で一番重症なのは死に至ること。次はおそらく中枢神経(脳)へのダメージでしょう。脳炎や髄膜炎をおこすと意識障害、けいれんなどの症状がでて、重大な後遺症がおきることもあります。意識がもどらず「植物状態」になったり、知能障害、てんかんなどを合併することもあります。

 そんな脳の障害をおこす感染症の筆頭は「日本脳炎」。今でも東南アジアなどでそうとうの患者発生がでています。今回、より副作用の少ないワクチンに切り替わりましたので、副作用の心配をさほどせずに受けられるようになりました。

 新しいワクチンである「ヒブワクチン」、「小児用肺炎球菌ワクチン」は、細菌性髄膜炎を予防する強力なワクチンです。任意接種という制度上の(そして経済上の)難点はありますが、やはりぜひ受けておいてほしいです。

 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎、ムンプス)も合併症として髄膜炎をおこすことが多く、また聴神経のトラブルから難聴になることもあります。ワクチンでほぼ確実に予防できます(これもまだ任意接種のままというのは、とても困ったことです)。

 麻疹(はしか)や風疹は合併症として脳炎があります。また麻疹ウイルスがそのまま脳細胞に残り、数年後に脳障害をきたすこともあります(亜急性硬化性全脳炎、SSPE)。いずれもワクチンが有効です。

 このほかインフルエンザ(季節性、新型)は子どもたちに脳症を起こすことがまれではありません。有効性はやや劣りますが、やはりワクチン接種を受けることをおすすめしています。

 このように、いくつものワクチンが別々の感染症の予防をしているのですが、全体として子どもたちの命や脳といった重要な臓器を守っています。子どもたちに幸せな人生を願うのであれば予防接種をおろそかにすることはできません。

 そして、まだ任意接種に留まっているものを早く法定接種にするなど、親御さんが安心して予防接種を受けられるような制度を作ることは、政治や行政の大切な役割だと思います。

◇主な「脳を守るワクチン」
・日本脳炎:生後6か月〜7歳半未満(1期、標準は3歳で2回、4歳で1回)
・麻疹・風疹混合:1歳で1回目、小学校入学前1年間で2回目
・おたふくかぜ:1歳以上1回(任意)
・ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン:乳児期では複数回、年齢が高くなると回数は少なくなります(任意)
 

●私の「原点」

 当院にとっては20年の歴史ですが、私の医師としての経歴は約30年。そして医師を志したころから数えると40年ほどになります。小児科医院の「初心」をさかのぼると、医者になろうと思った「原点」ともいうべきものに突き当たります。

 今から40年前・・日本の医療は大きな曲がり角にありました。薬害や公害が大きな社会問題になり、医学・医療が患者さんのためになっているのか議論がさかんでした。

 渡辺淳一が、日本で初めて心臓移植の行われた札幌医大の整形外科を辞めて、小説家としてデビューしたのもこのころ(当時は医療問題をとりあげることが多かったです・・今では恋愛小説家になっていますが)。医療のあり方を問うするどい視点を学んだものです。

 自分が医者になったらこんなふうにしたい、こんなことはしたくない・・いろんなことを考えていました。その一部は実行でき、大部分は実現できていませんが。医学生時代は医療のあり方をめぐって熱い議論を交わしたことも思い出します。

 そんな私にとっての「原点」を時々は思い起こしながら、もう少し前に進んでみようかとも思っています。


●お知らせ

○6月14日は当院の「開院記念日」。その前後、ささやかですがプレゼントを用意いたしましたので、どうぞお受け取り下さい。

○日本脳炎予防接種を実施中。今月中は特別に土曜午後も接種を行っています。夏に発生する病気です。ぜひ早めに受けて下さい。


●感染症情報

 ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎がまだ流行しています。例年は秋から冬に流行するので、今シーズンは異例です。5月中も勢いが衰えていません。もうしばらく注意が必要です。

 水ぼうそう(水痘)、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の発生数も少しずつ増えています。いずれも主に保育園や幼稚園で感染しているようです。伝染力が強いので、周りに患者発生がある場合には注意をしていて下さい。これらの感染症はワクチン接種で予防できます。任意接種ですが、まだかかっていない方はぜひ受けるようにして下さい。

 溶連菌感染症も目立っていました。咽頭痛と発熱が特徴で、抗生剤が必要です。

 手足口病がしだいに増えてきました。手のひら、足のうら、口の粘膜に発疹ができる病気で、通常は軽くすみます。ときに髄膜炎を合併することがあり、注意が必要です。全国的に大きな流行になってきているということで、気をつけて下さい。

 マイコプラズマ感染症(気管支炎、肺炎)が多数発生しています。気管支炎や肺炎をおこし、咳がとても強くなります。

 RSウイルス感染症もときどき見かけます。幼弱な乳幼児に細気管支炎を起こし、呼吸困難に至ることもあります。

 麻疹、風疹の発生は当院ではありませんでした。

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