2010年8月号(236号)  


 暑中お見舞い申し上げます。
 何と暑い夏なのでしょう。猛暑を通り越して「酷暑」です。
 あと1か月ほどはこの暑さが続きます。どうぞ体調に注意をしてお過ごし下さい。


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今月の話題
 ●もう一つの事故の怖さ
 ●【色々なワクチン】痛くないワクチン
 ●お知らせ
 ●感染症情報

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●もう一つの事故の怖さ

 水の事故が各地で発生。子どもたちも犠牲になっています。当地でも海で泳いでいた中学生数名が溺れ、一人が亡くなるという事故が起きました。プールで溺れてしまった小学生もいました(治療により回復しています)。

 水は身近にあります。暑い季節は水を使って遊ぶことがとても心地よいものです。しかし、水はときに人間に襲いかかってきます。その怖さを忘れていると、ちょっとした油断で水の事故はおきてしまいます。

 わずか数分間、呼吸ができないだけで死亡したり、脳障害などの重い後遺症をおこすこともあります。

 そして事故の怖さがもう一つ。家族や友達、学校や地域といった社会に大きな影響を与えることです。病気とは違って、ある日ある時、予期することなく突然にその知らせがやってきます。何も心の準備をすることなく、亡骸(なきがら)に接しなくてはいけないという苦悩は、それぞれの人生に暗くて重い影を作り出します。

 そんな事故にあわないよう、くれぐれも注意をしていて下さい。


●【色々なワクチン】痛くないワクチン

 数多くのワクチンがありますが、その大半は注射によって体内に接種します(皮下注射や筋肉注射)。どうしても痛みを伴います。

 とくに乳幼児期は毎月のように予防注射を受けます。診察をしたあとに予防接種・・赤ちゃんには「医者=痛いことをする人」という気持ちがすり込まれてしまうようです。医者嫌いになる子どもたちも少なくないことでしょう。病医院の玄関で、イヤなことを思い出し大泣きしてしまうお子さんもいます。

 ほとんどのワクチンが注射だというのは理由があります。血液中に病原体に対する免疫(抗体)を作るためには血液の中にワクチンが入らなければいけないからです。

 飲むことで効いてくれれば一番いいわけですが、たんぱく質でできているワクチンは胃腸で消化されてしまいます(同じような理由で、糖尿病の治療薬=インスリンや、低身長症に使う成長ホルモンなども注射で使うしかありません)。つまり大半の予防接種は「痛いワクチン」なのです。

 例外があります。今日本で使われているポリオ・ワクチンは飲むワクチン。これはポリオというウイルスが腸管内をすみかにするためです。そのウイルスを弱毒化した生ワクチンは、口から胃腸に達したあと増殖し、そして免疫が作られていきます。(赤ちゃんが飲みやすいように甘い味がついています)

 しかし、実はこの「飲むポリオワクチン」はある意味で時代遅れなのです。予防接種によってポリオという感染症は先進国では皆無になりましたが、ポリオワクチン由来のポリオが発生することがあるからです。そのため欧米では生ワクチンをやめ、注射による不活化ワクチンがすでに使われています。免疫のでき方はやや弱いものの、二次的なワクチン由来のポリオの発生はゼロにすることができます。

 日本でもいずれポリオが飲むワクチンから注射によるワクチンに変更されることでしょう(ただ、日本のワクチン行政は先進国から10年、あるいは20年遅れていますので、いつになることか・・)

 日本では「痛くないワクチン」はポリオだけですが、世界では他にいくつかあります。

 毎冬流行するインフルエンザのワクチンは、注射以外に鼻に噴霧するものもアメリカなどではすでに使われています。インフルエンザ・ウイルスの侵入口は鼻や喉の粘膜ですから、この噴霧ワクチンはその入り口をガードすることになります。鼻の違和感はありますが、注射に比べれば痛くはないので、ある意味で理想的なワクチンかもしれません。残念ながら効果が十分とはいえないという意見があり、まだ広く普及はしていません。

 でも日本でも導入できたら、秋のインフルエンザ予防接種の会場の様子ががらりと変わるでしょう。泣きさけぶ子ども、押さえつける親と看護師、腕や指が痛くなるほど注射を打ち続ける医者・・そんな光景が過去のものになってくれるかも。

 もう一つ。ロタウイルスのワクチンも飲むワクチンです。冬場を中心に胃腸炎をおこすウイルスです。子どもたちを中心に毎年多くの患者発生があり、入院する子どもも少なくありません。栄養状態の良くない発展途上国では命を脅かす病気です。

 ワクチンはすでに開発され、欧米の多くの国ではすでに乳児への接種が推奨され、実施されています。これも腸管内で繁殖するウイルスなので、飲むワクチンです。

 こういった「痛くないワクチン」もありますが、残念ながら多くは「痛いワクチン」です。お子さんに恐怖心を与えないよう、私たちも配慮をしています。親御さんは「悪いことをしたら注射してもらうよ」などと、子どもをおどかす道具には使わないようにお願いします。ワクチンは子どもたちを守るための大切な手段なのですから。

 もう一つ。「痛くないよ」と子どもに言うのもやめて下さい。それはウソだからです。「少し痛いけれど頑張ろうね」と声かけを。そして終わったら、「いっぱい頑張ったね」とほめてあげて下さい。


●お知らせ

○8月12日(木)?16日(月)まで夏休みをいただきます。ご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

○今年もやります、「上越子育てフォーラム」。明橋大二先生の「子育てハッピー・アドバイス」。どうぞご期待を。(10月16日)

○今年のインフルエンザ・ワクチンは昨年の「季節性」と「新型」が一つになりました。10月より実施します。詳細は後日発表。


●感染症情報

 手足口病が春から全国で流行していました。当地域も先月から流行が拡大し、そうとう多くの患者発生があります。ほとんどの子は熱もなく、普通の登園(校)できる程度の軽いウイルス性感染症ですが、まれに髄膜炎をおこすこともあります。

 同じく夏かぜの一つであるヘルパンギーナも先月後半から一挙に増加。高熱と喉のしみるような痛みがありますが、重症感はなく、3日ほどで軽快しています。

 プール熱(咽頭結膜熱)も夏かぜの仲間ですが、喉の痛み、目やに、高熱があり、ぐったりします。これは大きな流行にはなっていません。

 感染性胃腸炎ですが、例年より遅く春に大きな流行がありましたが、夏になってからは発生数は減少しました。

 マイコプラズマ感染症(気管支炎、肺炎)は咳がとても強くなる感染症で、近年は一年中発生が続いています。また罹患しても十分な免疫ができないために、くり返しかかるお子さんもいます。とくに喘息など、呼吸器が弱いお子さんは注意が必要です。

 水ぼうそう(水痘)、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の発生は少数です。ワクチン接種が有効です(任意接種)。

 溶連菌感染症は少なめですが、まだ発生しています。咽頭痛と熱が特徴で、抗生物質による治療が必要です。

 麻疹、風疹の発生は当院ではありませんでした。


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