2011年5月号(245号) 



東日本大震災の発生から2か月がたとうとしています。

被災され、今なお避難生活をおくっておられる多くの方々に、心よりお見舞い申し上げます。


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今月の話題

 ●天を恨まず・・

 ●【感染症】りんご病にご注意を

 ●放射線被ばくと医療

 ●お知らせ

 ●感染症情報


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●天を恨まず・・


それにしても巨大な地震であり、津波でした。

いまだ復興への道筋は見えていませんが、日本中のチカラを結集して、より早く、きちんと復興していくよう、願っています。


被災地だけではなく、電力事情の逼迫から首都圏や東北地方などでは停電対応を迫られています。

産業界も大きなダメージを受けました。

原発事故の影響から、外国人観光客は激減。日本経済全体が沈没するかもしれないという懸念もあります。


そんな中でも私たちは生きていかなくてはいけません。

東京電力が悪い、政府が悪いと恨み言だけを言っていても何の解決にもならないでしょう。

今、この状態からスタートするしかないのですから。


被災したある中学生が卒業式で「天を恨まず」と言ったそうです。

何と立派な言葉でしょう。

感心しました。


岩手の詩人・宮沢賢治は「雨にも負けず風にもまけず」とうたいました。

どんな逆境にあっても、雑草のようにまた元気に芽を出し、伸びていこう。

そんな気骨ある精神にも学びたいと思います。


今東北が、そして日本が直面している未曾有の事態を、知恵と志と勇気を持ち寄り、乗り切っていきたい。

いつか振り返るときには、むしろこの大震災をきっかけに素晴らしいものが形作られていることを夢見ています。


頑張ろう東北! 頑張ろう日本!



●【感染症】りんご病にご注意を


全国でりんご病(伝染性紅斑)が流行しているとして問題になっています。

りんご病は子どもたちに多い病気。ヒトパルボウイルスB19による感染症です。

主に唾液を介して感染し、2〜3週間の潜伏期をおいて症状がでてきます。


頬が赤くなるのが一番はっきりした症状です。

赤いりんごのようなので「りんご病」というあだ名がついています。

平手打ち様という表現もあります。

やや遅れて腕や腿(もも)にも発疹が現れます。

発疹は次第に大きくなり、周囲の発疹とくっついて一面が赤くなります。

その後中心部から色がさめてきて、縁取りが残るようになります(レースの編み目のように見えます)。


胸やお腹に発疹がおきることもあります(約1割)。

痒みは軽度ですが、入浴後や日にあたった時には赤みが強くなり、痒みも強くなるでしょう。

(お風呂に入ったりしてはいけないという意味ではありません)


とても特徴のある発疹です。

小児科医は見慣れているので、発疹を一目見るだけで判断がつきます。


子どもにとってはこのような発疹がでるだけで熱を出したり、具合が悪くなることはありません。

また発疹がでてきた時にはウイルスは体内にはいなくなり、すでに伝染力がないために登園や登校の停止にはしていません。


しかし、大人がかかると発疹が出る前に熱がでて、強い関節痛がおきます(数日で軽快します)。


もしも遺伝性球状赤血球症という先天的な血液の病気を持っている方にとっては、このウイルスは赤血球を壊して、重症な貧血をおこすことがあります。

(日本人にはまれな病気です)


一番問題になるのは妊婦さんです。

感染すると胎盤を通して胎児がウイルスにさらされ、赤血球が作れなくなって貧血になり、流産や胎児水腫などの原因になってしまいます。


時にはとても怖いウイルスなのですが、子どもの時に感染していればその後終生かかることはありません。

日本人の4分の3は子ども時代にかかっているそうです。


残念ながらワクチンがないので、積極的に予防することはできません。

周囲で流行している時には、インフルエンザ予防と同じくマスク、うがい、手洗いの励行をお願います。


血液の抗体検査をするとこのウイルスに対する抗体が十分にあるかどうかを知ることができます。

大人の方、とくに妊婦さんでご心配な方は抗体検査を受けていただくようおすすめします(自費)。



●放射線被ばくと医療


福島第一原発の事故発生以来、放射線の被ばくが問題になっています。

周囲は封鎖され、立ち入りができません。遠く離れている東京などでも水道水が放射性物質によって汚染され、乳児には与えないよう指示がだされたこともありました。


原発事故のレベルは最高ランクの「7」とされ、事態の深刻さを改めて考えさせられました。

現在は少しずつ終息に向かっているようですが、一日も早く沈静化し、安心できるようにしていただきたいと、切に願っています。


放射線は医療の中でもよく使われています。

一番多いのが診断のための器械で、当院でも肺炎などの検査のために胸部エックス線(レントゲン)検査をすることがあります。

大型の器械ではCT検査(コンピューター断層撮影)もおなじみでしょう。

がん治療のために放射線を使うこともあります。


それらの放射線被ばく量は、日常診療ではさほど多い量ではありません。

例えば胸部エックス線は0.04〜0.06mSv(ミリシーベルト)、頭部CT検査は0.5mSvなど。

地球上で自然にあびる放射線量は平均で年2.4mSvですので、通常は問題にはならないでしょう。

(一回の照射でフィルムに焼き付ける「写真」の被ばくは微量。

テレビモニターに映し出しながら検査をする「透視」ではやや多め。

CT検査も改良され、年々少なくなっています。)


仮に被ばく量が多くなっても、必要な医療は行います。

患者さんが受ける利益が、障害などが発生する不利益より大きいからです。


しかしそれでも放射線です。

危険性は少なくしなくてはいけません。

最小限の被ばくになるよう、回数を少なくしたり、必要な部位以外を鉛でおおうよう配慮をしています。



●お知らせ


○当院では自家発電装置を使い、停電時でも必要な診療や病児保育が支障なく継続できるよう準備をしています。

どうぞご安心下さい。



●感染症情報


4月というのにインフルエンザが大きな流行になりました。

A型は3月末から下火になり、ほぼ終息しましたが、かわってB型が流行し、真冬なみの勢いでした。

B型はもともと春先に流行しやすいのですが、4月にこれほどの規模で流行したことは珍しいです。

5月にはB型インフルエンザも終息に向かうとは思いますが、当面は注意をしていて下さい。


感染性胃腸炎もまだ流行しています。

秋のノロウイルスに対して、春はロタウイルスが多いようです。

これからの暑い季節は細菌性腸炎も発生しがちです。

食品の衛生や、手洗い、うがいなどを励行し、発生予防に努めていて下さい。


水ぼうそう(水痘)が新学年に入って急増しています。

とても感染力が強く、新たに保育園や幼稚園に入った小さな子はかかりやすくなっています。

抗ウイルス薬があり、発症してすぐに使い始めると軽く済ませることができます。

予防にはワクチンが有効です。任意接種ですが、ぜひ受けていただくようお勧めしています。


溶連菌感染症の発生はやや少なくなってきました。

強い喉の痛みがあり、抗生物質による治療が必要です。


おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)も今は少数の発生です。


りんご病(伝染性紅斑)を散見します。全国的には流行しているということですので、注意をお願いします。



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