1997年3月号(75号)

雪国の冬も、もうすぐ終わろうとしています。何度か厳しい寒波がきましたが、この冬も、少雪ですんだようです。

3月は卒園、卒業、受験など、なにかと忙しい月。転居されるご家庭もおられることでしょう。まだ風邪や胃腸炎なども多く見かけます。気をつけて。

40歳になりました

私事ですが、先月40歳になりました。

急にどこが変わるわけでもないのですが、今までとは違った生き方を模索していきたいと思います。30代は、目標に向かってまっしぐらでしたが、40代は、もっと余裕のある「豊かな生き方」をしてみたい。そして、体力も気力も、あまり落ちずに維持できれば、と考えています。

50歳になった時、40代を後悔なく振りかえれるといいな。

医療費のあわただしい改定

保険医療費の改定をめぐって、今年はあわただしい動きがあります。

まず4月に、消費税のアップに伴って、若干の料金の改正があります。そして、健康保険法の改定が、秋にも見込まれています。社会保険の本人が1割から2割の負担に、老人の負担が月1,020円から1回500円(月4回まで)に。さらに薬剤費に対して、新たな負担が計画されています。

これからの国会審議で修正、廃案もありうるのですが、もし原案通り可決されると、患者さんの負担は大幅に増えることになります。ここ数カ月の政治の動きを、注意深く見つめていてください。

花粉症にご注意!

毎年、3月から5月にかけておきるスギ花粉症。しつこい目のかゆみや涙(アレルギー性結膜炎の症状)、たて続けにでるくしゃみ、流れ出る鼻水、がんこな鼻づまり(アレルギー性鼻炎の症状)などが主な症状ですが、体のだるさ、頭痛、微熱などの全身の症状がでてくることがあります。

要注意なのは、南風の吹いている暖かい日。雨上がりで、急に気温のあがってきた日中は、とくに花粉量が多いようです。

外出時は、マスクや眼鏡などを使い、帰宅後は早めにうがい、洗顔などをしてください。入浴、シャワーも効果的です。

症状の強い方は、症状を和らげる薬のほかに、アレルギーを抑える薬を早めに使っておいたほうがいいでしょう。


O-157事件を教訓に学校給食のあり方を考える

1996年は、病原性大腸菌O-157の恐怖に揺れた一年でした。岡山県邑久町の食中毒に始まり、大阪府堺市の六千名を超える未曾有の集団発生など、全国各地で発生が相次いぎ、幼い子どもたちの命を奪っていきました。

新潟県では、2名の患者発生はあったものの、いずれも単発例で、保育園や幼稚園、学校という場での発生がなかったことは、ただ単に幸運だったというほかありません。

O-157の感染を受けやすいのは、比較的年齢の若い子どもたちであり、給食という大規模調理の問題も加味されたため、親ごさんや学校関係者、そして私たち小児科医も多いに心配しました。

O-157の食中毒事例は、冬場に入ってから報告がなく、とりあえず胸をなでおろしているのですが、決してO157という病原菌がなくなった訳でもなく、食中毒がおきないような根本的な対策がとられた訳でもありません。つまり、食中毒のおきやすい暖かい季節になれば、またO-157による被害がくりかえされる可能性は大きいのです。その意味で、本当にこの事件をくりかえさないためにはどうすればいいのか、特に給食のあり方を中心に、しっかりとらえる必要があります。

これからの給食は
96年のO-157食中毒の発生件数は例年と大差がないにもかかわらず、あれだけの大きな規模になり、重大問題になったのは、なによりそれが学校や保育園・幼稚園での給食の場でおきたことによります。

食材の汚染が、給食用のものだけにおきたとは考えにくく、家庭や外食産業でのそれも、相当に汚染されていた(そして、現在も汚染されている)はずです。それが、なぜ給食という調理形態の中で、大規模な食中毒事件にいたったのか。答えは明かで、現在の日本の給食体制に大きな不備、欠陥があると考えなければなりません。

給食の方式に「自校方式」と「センター方式」があり、どちらが優れているか、以前から議論のあるところです。経済効率からは、センター方式が勝っているようですが、それも、大量仕入れをすることが、工業製品ならいざしらず、生鮮食品でははたして安く供給されるのか、疑問です。

では自校方式だから安全かといえば、決してそうではありません。堺市は、自校方式でありながら、あれだけ大量の食中毒患者をだしてしまったわけです。食材の全市分の一括購入、劣悪な環境での配送と保管など、衛生面からは到底容認できない体制のもとでは、いくら自校方式とはいえ、決して安全な給食にはならないことを、率直に反省しなければなりません。

さらに、安全で、安心できる給食を作ることとあわせて、学校や保育園・幼稚園でとる食事をとおして、子どもたちに学んでほしいことがたくさんあります。

これからの食の教育
小児科医療のなかで、現在重要視されている課題の一つに、「小児期からの成人病予防」というテーマがあります。「生活習慣病」ともよばれる様々な病気が、決して大人や中年になってある日、急におきるのではありません。その人の長い生活の中で、少しずつ形づくられ、それがある時、癌、脳や心臓の血管の障害、肝臓や膵臓の障害などとして、表面にでてきます。「成人病は一日にしてならず」といったところでしょうか。

先日、ある中学校でこのテーマについて講演をしましたが、子どもたちの食生活の改善を、家庭だけで実行していくことは、とても難しいことだと実感しました。やはり、学校などでの給食や家庭科教育の中で、大きな目標を掲げ、実践していってほしいと思います。

できれば、各学校に栄養士がいて、訓練と教育を受けた調理師がいることが望ましい。そして、献立の内容は、市内同一などという画一的なことはやめて、各学校で大いに特色をだし、知恵をだしながら作ってほしい。学校や地域の行事に関連した献立を作ることで、給食が楽しくもあり、教育上も有意義になってくるのではないでしょうか。また、子どもたちの食事量、食べ方、好き嫌いを栄養士や調理師が見ることで、積極的に子どもたちへの指導ができるものと思います。

そういった「豊かな給食」の実現を妨げている要因の一つは、経済効率。経営や財政状態も考慮することを否定はしませんが、経済的に豊かになった今の日本で、その富をどう配分するか、どこに重点をおくか、しっかり考えてほしいと思います。現在、問題になっている政界、官界の不正・腐敗をみるにつけ、この国の将来が心配になります。学校などの給食のあり方を、これまでと違う発想でぜひ考すむという保障は皆無です。

そして、せっかく提起された給食のあり方の問題、学校教育の問題などをそのままにしておかないで、今後、議論を深め、良い方向へ向かっていくことを望んでいます。