1997年6月号(78号)

今月は、当院の開院記念の月にあたります。平成2年(1990年)からですから、満7周年。そして、8年目に入ることになります。この1年間でもっとも大きな出来事は、増築の完成と院内調剤への変更でした。まだまだ問題や課題を残していますが、一つひとつ丁寧に解決していきながら、毎日の診療のレベルアップをはかっていきます。

次の1年間では、もっと信頼される小児科医院をめざして、努力していきたいと考えております。皆様の一層のご理解をお願いいたします。

今は学校で運動会のおこなわれるシーズン。子どもたちの歓声が聞こえます。初夏の青空のもと、元気いっぱいの子どもたちの様子をみていると、こちらも元気をもらったようなすがすがしい気持ちになります。

病原性大腸菌O-157にご注意を

先月、上越でも病原性大腸菌O-157の患者さんが発生しました。幸いにも軽症で、家族でもう一人かかっていましたが、 今後、いつどこで発生するか予想できません。
 暑い季節は、ほかにも食中毒がおきやすもの。食事の調理、保存などに十分に気をつけ、子どもたちには手洗いの習慣をきちんとつけさせてください。
 下痢だけで、ただちにO を心配することはありませんが、数日たっても良くならなかったり、強い腹痛があったり、血液がまじったりというときは、必ず受診してください。

神戸での小学生殺害事件

先月、神戸で小学生が殺害されるという痛ましい事件がおきました。残忍な手口、理解不能な目的、挑発的メッセージなど、社会を震えさせるものがあります。

被害にあった子が知的障害をもっていたり、父親が医師であったりということで、私には、余計身につまされる思いです(最近、とみに涙腺がゆるくなっているようで、このニュースを聞くたびに、親ごさんの不憫な気持ちを思い、つい涙してしまいます)。一日も早い解決を望みます。

それにしても、最近、子どもたちが被害にあう犯罪が多いのでは。一部の人の特異な犯行とするには、あまりに目立ちます。また、その手口もテレビや劇画で見たものを真似しているような気がしますが、どうでしょう。

テレビから暴力シーンをなくせばいいというような、単純なことではありませんが、でも、何か方策を考えるべきです。

同様な事件の再発をどう防ぐか。犯人の逮捕は当然ですが、それだけでは済まされないものがあるように思えます。

健康保険法の改正は・・?

政治では、健康保険法の改正が、大きな焦点です。すでに衆議院では、患者さんの負担を大幅に増やす方向での改正が可決され、現在、参議院で審議中です。(6月中旬までには決まりそうです。)

このうち、私たちに関係の深いものでは、薬剤に対する新たな負担として、「2〜3種類は400円、4〜5種類は700円、6種類以上は1,000円の負担」を求めるということですこれは、投薬日数の多い老人の負担の軽減のために修正されました。しかし、小児医療では、もともと薬剤の金額も安く、投与日数も2〜4日程度のことが多いため、日数に関係のない「定額の負担」では、あまりに負担割合が大きくなりすぎます。

そこで、当院に通院中の方、約160名の診療記録をもとに、どれ位の負担になるか、算出してみました。そうすると、薬剤に対する新たな負担は、実に薬の代金の約6割にもなってしまいます(グラフ)。また、100%以上の負担という「取り過ぎ」の例も5%ほどにみられました。こんな案をまとめた人は、きっと子どもたちの姿が目に入っていないに違いありません。

「少子対策」のために思いきった政策をとらなければならないと、政府・国会内で合意がまとまろうとしているのに、一体何たることか。そんな気持ちで、この不合理な負担の具体例をまとめて、与党の政策担当者、日本医師会、マスコミなどに緊急のFAXを送りました。

そして、朝日新聞も、この不合理な負担を批判する記事を一面に掲載するなど、社会的にも大きく取り上げられ、参議院では、この問題は避けて通れなくなっています。(将来的には、「6才未満の負担をゼロにする」という画期的な案も検討されているとのことです。)

ここしばらく、誰が子どもたちのことを真剣に考えているか、注視していたいと思います。

(参考)小児医療の不合理の改善を

先に衆議院を通過した健康保険法改正「修正案」では、薬剤の種類数によって新たな負担を求めることになった。これは、長期投薬の多い老人の負担軽減のためであるが、しかし、小児医療では、原案よりもさらに大きな負担になることが予想される。

小児科では、少量の薬剤を短い日数で使用することが多い。薬剤の形も粉や水のように異なったものを使い、投与の仕方も細かに変更することが少なくない。1種類205円以下の薬剤には負担がないというが、少額の薬剤であっても、複数組み合わせて使用すると、負担が生じることが多く、ときに薬価以上の負担になることもありうる。

実際、当院の診療例で、薬剤の負担率が60%近くになることが確かめられた。そして、100%以上の「逆ざや」となる例も、数%ある。老人の負担の軽減が、小児の犠牲の上で行われると言ったら、言葉が過ぎるであろうか。

衆議院の附帯決議には「就学前児童の一部負担の軽減の検討」が盛り込まれているが、このままでは、全く逆に、小児に対して、あまりに過重な負担を強いるものである。

参議院では、小児医療におけるこのような不合理な負担が解消されるよう、再修正の議論がなされることを願う。

(「朝日新聞」への幻の投書--残念ながら掲載されませんでした。)