塚田次郎著

「日報を読んで(5)」(1999.8.17)


介護保険 老人に優しく/ダイオキシン報道

母乳中のダイオキシン濃度が「安全基準」の25倍に達しているとの厚生省発表があった(3日付)。と同時に厚生省は、母乳を飲むのが一生の中で短期間であり、粉ミルクで育っている赤ちゃんに比べて検査の上での異常が見つからないなどの理由で問題なしとしている。しかしデータを見る限り、個人差や地域差の発生の理由は解明されず、胎児の時からの汚染の実態も調査されていない。また一歳の時点での「安全性」が、長期に渡る安全性を保障してはいない。今回の発表は一定の検査結果でしかなく、ダイオキシン問題の一部分に過ぎない。

ダイオキシンに関しては、あるニュース番組で不適切な報道がなされ、大きな社会的混乱がおきてしまったことも記憶に新しい。報道機関は十分な科学的根拠をもって、冷静に、そして継続的して取り組んでいただきたい。このような全く新しい問題では、専門家の意見も分かれ、一定の評価を下すのは難しいのではあるが、私たち国民は、データも含めて十分な情報が的確に与えられる中で少しずつ適切な判断ができていく。その過程がきちんと公開され、議論を深めることが重要なのである。

さらに、ダイオキシン問題をより広く捉える見地も必要になる。「大前提になるのはダイオキシンを発生させない」(9日付社説)ことであり、母乳が汚染されていることが安全か、危険かという議論のみに終始してはならない。

来年4月の実施まであとわずかになった介護保険制度に関する報道量が、急激に増加している。本紙とBSNとの共同調査により、県内での保険料負担に2倍程度の格差が生じることが明らかになった(7月26日付)。それ以降、県内市町村の取り組みやサービス内容の検討がなされ、読み応えのあるシリーズになっている(「スタンバイ!?介護保険」8日付〜)。しかし市民には、介護保険への不安や懐疑的な意見もある(「窓」7月27日、28日付)。

現在受けている自治体からのサービスが、介護保険制度により受けられなくなったり、無料かそれに近いものが費用の1割負担を求められることで、辞退せざるをえなくなることも予想される。居住する市町村によって受けることのできる介護サービスに大きな格差が生じ、老人に不公平感がつのることも懸念される。一体何のための介護保険かといった不満はきっと高まるであろう。

あるいは、そもそも病気の老人を病院などの施設で治療せず、設備のない自宅で介護することが、正しい選択なのだろうか。国は、老人の医療・介護のあり方を大きく転換させるにあたって、国民の中での合意作りを軽視してはこなかっただろうか。そして、その結果としての混乱が、今私たちの目の前に繰り広げられているように思える。

介護保険制度の実施によって、日本の老人の一人ひとりが本当に幸せになれるのか、そんな視点でのきめ細かく、老人に優しい報道を望みたい。