塚田次郎著

新潟日報夕刊「晴雨計」(7)


病児保育は強い味方

(2004年12月16日)


 病児保育は、病気の子どもをあずかるところ。当院の「わたぼうし病児保育室」も毎日多くの子どもたちでにぎやかです。

 子どもたちはいろんな病気をするもの。とくに保育園に入った当初は休みがちになります。笑顔のかわいいゆうりちゃんもそうでした。昨年、病児保育室で四十六日間あずかりました。風邪、気管支炎、中耳炎、水ぼうそう・・。治って保育園に行くと、またすぐに病気をもらってきます。そのたびに親御さんはご苦労されたことでしょう。でも、今年は利用が少なくなり、元気に保育園に通っています。

 ゆうりちゃんのお母さんは、病児保育を利用できたので安心して仕事ができたと語っています。それがなかったら仕事を辞めることになっただろうとも。病児保育を利用することで、親子とも社会の中ではつらつと生きていくことができるということを、私たちも実感しました。

 うがった見方もあります。「そんな小さな子を保育園に通わせるのは問題だ」と。でも、子どもにとって家庭は、ときには母子だけの閉鎖されたきゅうくつな環境。日本では一般に父親の子育てへのかかわりは十分ではなく、社会の中でも孤立する傾向にあります。保育園での集団保育は子どもの発達をより豊かにし、親子関係をむしろ安定化させる役割もあります。

 「そこまでして母親は働くべきではない」というのもよく聞かれます。日本の社会は男性中心で、女性が一定の仕事を継続するのは困難。結婚や育児によってせっかくの仕事も中断せざるをえないのが現状です。働き続けたいと願う女性の気持ちは、今の日本では大切にされていません。

 「病気のときは親が仕事を休むべきだ」とも。確かにそうです。でも考えてみて下さい。子どもが具合を悪くしている時に、喜んで仕事にでられる親はいないでしょう。休めるものなら休んでいっしょにいたいけれど、簡単にはできません。そんな建前論よりも、「子どもは私たちに任せて、親御さんは元気に仕事に行ってらっしゃい」と言ってあげることの方がずっと大切だと思いませんか?

 それでも「病児保育は子どもたちのためになっていない」と思う方は、ぜひ見学に来て下さい。病気中でも子どもたちがいきいきと過ごしている様子を見ていただけるでしょう。具合が悪くても、逆に「わたぼうし」に行けるからといって張り切ってやって来る子も少なくありません。

 三年半にわたる病児保育の取り組みは、小児科医である私にとって、子育てと社会のあり方を考えるとても貴重な体験になっています。

このページの
トップへ

目次の
ページへ

このホームページ
のトップへ