塚田次郎著

新潟日報夕刊「晴雨計」(10)


麻疹ウイルス輸出国

(2005年1月20日)


 今は韓国ドラマにはまっている私ですが、アメリカの物も好きです。中でも「ER(救命救急室)」は同じ業界物なので、大のお気に入り。魅力的な登場人物も多く、研修医からスタートしたカーターという青年が成長していく様は、自分の過去を見ているかのようです。

 ある時、とても驚いた場面がありました。それは発熱と発疹(ほっしん)のある子が運ばれてきたところ。全身状態も悪く、真っ先に麻疹(はしか)を疑うのは「日本の小児科医」にとっては常識。しかしカーターはなかなか診断できません。小児科の分厚い教科書を取り出してきて、やっと麻疹だと分かりました。すでに周囲は汚染されていたため、外来は閉鎖。感染を受けたと思われる患者と医師も隔離・・。

 日本では麻疹は日常的な病気ですが、アメリカでは診たことのない医者がそうとういるようです。つまり患者が少ないのです。手元の資料には、年間の患者数が日本は8,000人以上に対して、アメリカはわずか42人とあります(2003年)。アメリカでは報告を怠ると罰則があり、この数字は信用できます。一方の日本は一部の小児科だけからの報告で、実態はその数倍といわれています。

 アメリカで麻疹が根絶寸前にまでなったのは、予防接種を徹底したからです。欧米では子どものうちに2回接種するのが一般的。さらにワクチン接種を受けていないと、学校などへの入学が許可されません。

 ひるがえって日本はどうでしょう。法律によって受けることになっているのは1回の接種だけ。それも受けていない子どもたちがずいぶんいます。入学の条件になっておらず、ひとたび患者がでると学校等で集団発生してしまいます。

 こういった日本の状況は、風疹やおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)も全く同じです。まるで開発途上国のよう。日本が今まで予防接種をないがしろにしてきた結果です。

 さらに諸外国からは、日本は麻疹ウイルスを海外に輸出していると非難されています。返す言葉もありません。

 再来年度からは日本でも麻疹と風疹ワクチンの2回接種を始めるとのこと。日本も早く「先進国」になってほしいです。そして、私の世代が「麻疹を診たことのある最後の医者」になるといいなと思っています。

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