塚田次郎著

上越市における病後児保育

(2001年5月)


新潟県小児科医会会報2001No.27掲載

 現在、上越市において、2つの施設が「病後児保育」を実施しています。県内でもっとも早く「病後児保育」が始まったこと、いずれも市が「乳幼児健康支援センター」として設立・運営をしていること、そして複数の施設があることは、他の市町村にはない特徴です。
 2つの施設のうち、1つは「わかくさ保育室」で平成9年10月29日に開設。もう1つは、約1年後の10年10月12日に開設された「がんぎ通り保育室」です。わかくさ保育室は厚生連上越総合病院(市内五智2−13−11)敷地内の上越病院若草寮内に、がんぎ通り保育室は旧富永医院(市内本町23−1−7)に開設されています。
 ご承知のように上越市は旧直江津市と旧高田市が合併して誕生した市で、今でも市の中心部が分かれている「複眼都市」です。2つの施設はそれぞれの地区におかれている形になっています。

保育室の概要と利用状況
 対象は、上越市に在住し、市内の保育園・幼稚園・託児所等に在籍している子どもたち(生後3ヶ月以上)で、入院の必要ではない次の場合としています。
・感冒など日常罹患する疾病で、急性期は脱したが保育園等に連れて行くにはまだ不安がある時。
・麻疹などの感染性疾患で感染の危険性は脱したが体力の消耗など、集団保育に不安がある時。
・喘息あるいは虚弱体質で保育園・幼稚園等に連れて行くのに不安がある時。
 つまり、主な対象は病気の急性期を過ぎ、回復期にある「病後児」です。
 開設されるのは、月〜金曜、午前8時〜午後6時。土曜、日曜、祝日、年末年始(12月29日〜1月3日)はお休み。
 利用料金は1日900円(生活保護世帯は無料)。昼食、おやつ、ミルクなどは持参。
 利用にあたっては「利用申し込み書」と、かかりつけ医師からの「同意書(指示書)」が必要で、事前に市役所の担当課(こども福祉課)に提出することになっています。(緊急時は、直接施設に提出可)
 各施設の定員は6名。それを看護士2名、保育士2名、パート1名の職員が担当。事業費とは年間約1,730万円(12年度予算)。なお、わかくさ保育室は国からの補助を受けています。
 利用上状況は次のようになっています(いずれも開設の翌年度からの実績)。
<わかくさ保育室>
・10年度 開設日数247日、利用延人数216人、1日0.87人(年間実人数80人、1人当たり2.7日)
・11年度 開設日数245日、利用延人数195人、1日0.80人(年間実人数160人、1人当たり1.2日)
・12年度(12年12月末まで) 開設日数186日、利用延人数145人、1日0.80人
<がんぎ通り保育室>
・11年度 開設日数245日、利用延人数235日、1日0.96人(年間実人数111人、1人当たり2.1日)
・12年度(12年12月末まで) 開設日数184日、利用延人数152人、1日0.83人
 小児の疾患には季節変動等もあり、いろいろな要素を考慮しなければいけませんが、しかし定員に比して利用状況が十分とはいえません。また、開設より3年ほどが経過していますが、利用状況に増加の傾向が見られないことも、今後の運営を考える点で重視すべきです。

設立までの経緯
 この病後児保育は、平成8年ごろ市の担当課で検討が始まったようです。公式なものとして最初に登場するのは10年度の予算案に盛り込まれた時点です。当初は小児科のある医療機関、なかでも個人の診療所を対象に委託事業として実施することを意図していました。
 9年1月に上越医師会あてに、この事業を受託する医療機関と医師について依頼をし、翌2月、同理事会より上越小児科医会へ検討が指示されました。
 これを受けて小児科医会内で協議をし、一部の開業医師より受託しても良い旨の意志表示がありましたが、同会および医師会で検討した結果、「特定の医院での委託事業は問題がある」ので、市の直営で実施するよう、市へ回答がされました。とくに最初にスタートする施設(わかくさ保育室)は、公的な医療機関が関与すべきとして、直江津地区の上越総合病院の敷地内で開設されました(上越病院の小児科医師が担当)。
 その後、高田地区での検討が始まり、廃院になった診療所を市が借り受ける形で、がんぎ通り保育室が開設されました。これは地理的には小児科医のいる医療機関、るいは保育施設と離れた施設としてデザインされました(高田地区の2人の開業小児科医が担当)。

今後の課題
 「病児保育」が全国で試行錯誤を重ねながら、少しずつ整備されつつあります。そのスタイルは、厚生労働省の「乳幼児健康支援一時預かり事業」の実施要項によれば、「医療機関併設型」、専用施設の「単独型」、そして「訪問型」(家庭への派遣方式)に大別されています。
 当市の施設でみると、わかくさ保育室は病院施設内にあり、距離的にも比較的近くにあるので「医療機関併設型」といえます。しかし、この施設内での医師の診察は通常は行わないことになっており、「医療機関併設型」のメリットは十分に生かされているとはいえません。
 また、がんぎ通り保育室は単独型であるため、「医療」と「保育」のいずれの側面からのサポートも不十分になるおそれもあります。
 今後これらをどう改善していくかが、利用者の増加にもつながっていくと思われます。
 厚生労働省はこの事業の他に「地域子育て支援センター事業」も実施するなど、子育て支援が少子化対策の上からも極めて重要な課題になってきています。当市で行われている病後児保育事業が、他の子育て支援策とも連携しながら、より発展することを期待しています。


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