塚田次郎著

「子どもの心」を見つめる教育
−教師は子どものモデル−

(2001年12月)


高田教育研究会「教育創造」139号掲載

 小児科医療の中での最近の関心事は「心」です。私たち小児科医は、どちらかというと主に「体」の病気や健康について勉強し、日々の診療をしています。しかし近年、不登校、心身症、ひきこもり、学級崩壊、青少年による凶悪犯罪、子どもに対する虐待などが社会問題化するなかで、「子どもの心」にどう対応するかが私たちに求められるようになりました。
 「心」をテーマにした研修を受講し、「子どもの心相談医」の資格を得ましたが、私自身、子どもたちの捉え方や接し方が少しずつ変わってきています。子どもの様子が見えてくるようになりました。まさに「目から鱗」です。
 皆さんから見ると、子どもについてはプロだと思われるでしょうが、実体はこうです。そして思うのは、同じくプロである教師も、「子どもの心」についてしっかりと研修や学習をしてほしいということです。なかなか研修会などに出席できないかもしれません。でも教師にとって幸運なのは、その絶好の機会が日常の教育現場にたっぷりとあることです。子どもたちと真っ正面から向かい合うことで、子どもたちが教えてくれるのではないでしょうか。
 
 先日、飯島 愛原作「プラトニック・セックス」というドラマがありました。内容は別として、「なるほど!」と合点したことが一つあります。それは、先の研修会で教えていただいたこと--「自分に自信のない子は、非行、中でも性的な非行に走りやすい」ということです。
 自分を大切にされ、愛され、無条件に受け入れてくれる経験をたっぷり味わって育ってこない子どもたちは、どんなに突っ張っていても、胸の中が空虚で、誰かに頼りたくて、安心して飛び込める存在を求めています。それが非行に繋がったとき、異性の大人に、文字通り裸で抱かれることで、心の空白を埋めようとするのではないでしょうか。もちろんそれが本物であるはずはなく、擬似的で、刹那的で、皮相な人間関係だけでしかありません。でも、そんなことですら「喜び」と感じてしまうのは、なんとも悲しいことです。
 日本の子どもたちは、自分自身をとても否定的にみる傾向があります。世界の子どもたちを対象にしたアンケート調査では、「勉強ができる」「人気がある」「正直だ」などの自己評価も、「幸せな家庭を作る」「良い親になる」「仕事で成功する」などの将来の見通しも、日本はおしなべて最下位です。
 こんな子どもたちを作っているのは、紛れもなく、今日本にいる私たち大人です。子どもの育て方を根本的に考え直す必要があります。

 先の講習会で「小児科医は子どもたちが生き方を模索する上での大切なモデルだ」という話がありました。それを聞き、背筋をしっかりと伸ばして子どもたちに接していこうと、思いを新たにしました。
 でも小児科医以上に、学校教育の場で出会う教師は、子どもたちにとって量的にも質的にももっと大きな影響を与えています。皆さんが、子どもたちが生きていく上での、誠実で良質なモデルになれるよう、自らの教師としてのあり方を問い直していただきたいと願っています。

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