塚田次郎著

私の子育て支援
--私設病児保育の実践--

(2003年3月)


新潟県医師会報「おぴにおん」欄2003年2月号掲載

私の子育て支援
 --私設病児保育の実践--

 当院は1990年の開院以来、地域の中で小児科診療を続けてきました。日常診療を少しずつ充実させるとともに、2001年6月より「わたぼうし病児保育室」を併設し、微力ながら地域の子育て支援の一端を担うに至っていますので、その状況についてご報告いしたします。

 通常の「保育」は、健康なお子さんを対象にします。しかし、お子さんが病気などで登園(校)できず、さらに親御さんも家庭で保育することができない時には、その代わりになる社会的システムが必要です。それが「病児保育」です。共働き家庭が増えるに従い、その需要は大きくなってきています。

 当院では一応の定員を4名とし、専任保育士を2名常勤させています。対象は当院受診中のお子さんで、病気の急性期を含めた病児(回復期の「病後児」だけを対象にしてはいません)。年齢の制限なし。保育は月〜金曜、午前8時半〜午後5時半(前後30分程度の延長可)。利用にあたっては会員になっていただき(会費は一家庭月200円)、一日につき2,000円の料金をいただいています。

 開設当初は会員数、利用者数ともに少なかったですが、一年を過ぎた頃より次第に増え始め、昨年末には会員数は140人以上、利用者数は一日あたり3.8人(2002年11月)、3.0人(同12月)と定員に近づいています。

 利用者は当日の朝にならないと分からず、年齢や病状がまちまちであることから、一定の保育体制を作ることに難しさがあります。この事業は「困っている親御さんの手助けをする」のが目的ですので、 利用希望が集中してもお断りすることなく全て受け入れています。これまでの最高は10名でした(定員を上回る時は医院の看護師や、保育士の資格を持つスタッフなどが応援に入ることになっています)。

 現在この事業は当院単独で行い、行政などからの援助は受けていません。利用が増えてきているとはいえ、利用料だけでは人件費の半分にも満たず、大半は医院からの持ち出しです。今後さらに利用者が増えることも予想されますが、地域の期待に十分応える体制を作ることが、新たな課題になってきました。

 厚生労働省には「乳幼児健康支援一時預り事業」という自治体への補助事業があります。市町村で病児保育を行うとき、それを助成するものです。上越市は1997年よりこの事業を実施していて、当市にはすでに2か所の施設があります。しかし、これらはいずれも「病後児」のみを対象とし、実際上小児科医の関与の度合いが少ないものです。その利用状況をみても、これらの施設だけでは「子育て支援」としては十分とは言えないと考えています。

 しかし、上越市がこの事業を始めるにあたって、医師会と協議をする中で、「特定の医院での委託事業には問題がある」とされたいきさつがあります。当時、当院ではこの事業を受託すべく準備を始めていただけに、無念な思いで開設を見送りました。しかし、その後の動向を見ながら、必要性は十分高いと判断し、補助を受けずに単独で開設した経緯は先に述べた通りです。

 昨年、利用者の方からご意見を伺う機会がありました。その中からいくつか紹介します。
○共働きの私たち家族にとってとてもありがたい保育室です。1日の間に何度となく先生にも診察していただき、安心でした。
○いつも親切に見ていただき、子どもも体調が悪くても喜んで行くといってくれるので助かります。安心して預けられ心強いです。
○病気の子を預かっているのに、とても笑顔で預かっていただいて、本当に感謝しています。子どもたちがすごく喜んでいて、また行きたいというほどです。
 
 近年、少子化傾向のいっそうの進行にともない、「子育て支援」の重要さが国をあげて叫ばれています。私たち小児科医にとっては日々の診療を丁寧に行い、地域の中で適切な小児医療の体勢を作ることが最も大切な子育て支援であることは論を待ちません。

 そして、その仕事をさらに広げている努力や工夫もまた必要です。すでにさまざまな取り組みが行われています。病児保育もその一つで、これは「小児科医でなければできない」事業といえるでしょう。

 そんな小児科医の努力の積み重ねが、子育てを支援する大きな力になっていき、子どもたちがより大切にされる社会に成熟していくことを祈っています。

このページの
トップへ

目次の
ページへ

このホームページ
のトップへ