塚田次郎著

麻疹対策は緊急の課題

(2004年7月)


「世界の子どもにワクチンを」日本委員会ニュースレター2004年7月号掲載

麻疹(はしか)はもう過去の病気だと思っておられる方が、そうとう多いのではないでしょうか。しかし、私たち小児科医にとっては、今でも大変に怖い感染症であり、決してあなどることはできません。

麻疹はとても強い感染力を持ちます。空気感染するため、患者が滞在した部屋にあとから入っただけでうつることがあります。免疫がなければまず100%発症し、全員、高熱が10日間続きます。体力を消耗し、中耳炎、肺炎、脳症などを合併することも少なくなく、とくに栄養状態の悪い乳幼児では失明にいたることもあります(ビタミンAの投与が必要)。死亡率も、適切な治療が受けられないと数%に上ります。

こんな麻疹に、世界中で3千万人の子どもたちがかかり、60〜80万人以上が死亡しているとWHO(世界保健機構)は推測しています。その大半はアジア、アフリカなどの開発途上国の子どもたちであり、栄養障害やその他の感染症と並んで、緊急対策が求められています。

有効な予防対策は、麻疹ワクチンです。ワクチン接種により100%に近い予防効果があります。その費用は一人あたり0.80米ドルほどということです。

先進国では麻疹ワクチンを徹底して行い、患者発生はゼロに近づいています。例えばアメリカでは、麻疹ワクチン接種を受けていないと、学校の入学許可が与えられません。また多くの州では「2回の接種」が義務づけられ、年間の患者発生は100名ほどに激減しました。

しかし、日本では予防接種が十分ではありません(決められているのは1回の接種だけで、接種率も80%台と完全ではありません)。このため、年間に20万人ほどの麻疹患者が発生し、数十人の死亡者が出ています。他の先進国からは「日本は麻疹の輸出国」と非難されている所以(ゆえん)です。

日本には「はしかにかかるようなもの」という言い方があるように、ともすれば麻疹を軽視する見方があります。あるいは、ワクチン接種を受けるのは各自の自由だとする誤った個人主義の考えもあるようです。

しかし、麻疹対策は今や地球規模で必要なこと。とくに幼い子どもたちの命と健康を守る重要な方策です。アジア、アフリカなどのほか、実は対策の遅れている日本においても緊急の課題となっているのです。

【紹介】院長の塚田次郎先生は、子どもたちのための医院として塚田こども医院を開設し、治療、健診、予防接種なども利用者の立場にたって熱心に取り組んでおられます。また、病気の子どもたちのための保育室「わたぼうし」を併設し、保育園や学校へ預けられない病中の子どもを安心して預けられる施設を、私財を投入して実現され、利用者からは大変好評を得ておられます。医療行政に対しても、小児科医の立場からさまざまな提言をされ、テレビやラジオなどにも多数出演されています。世界の子どもにワクチンを日本委員会へは、1995年から現在まで、院内でのカード回収や、予防接種の費用から一部を募金として頂くなど、長年にわたって多額のご支援をいただいているばかりでなく、国内外の予防医学についてアドバイザーとしてもご協力いただいております。

このページの
トップへ

目次の
ページへ

このホームページ
のトップへ