塚田次郎著

子育て支援は少子化対策にあらず!?
(2005年10月)

かながわ子育て情報センター
子育て支援情報誌「子育てアドバイザーからのおたより」No.2(2005年9月号)掲載

 現在の日本は世界に類をみないほどのスピードで少子高齢化が進んでいます。合計特殊出生率(おおむね1人の女性が一生に生む子どもの数で、「2」なら人口を維持できる)は減少を続け、昨年は1.29でした。生まれてくる子どもたちも、戦後の一時期は年間200万人を超えたことがありましたが、昨年は約111万人と半分ほどに。今後はさらに少なくなるものと予想されています。

 その一方で高齢者の割合は増え続けています。医療や介護の費用、年金支払いなどが膨大になり、若い世代の負担が著しく増大していきます。また、日本は世界一の長寿国ですが、人間には“寿命の壁”があり、日本の人口はいずれ減少し始めます。100年後には今の半分くらいの人口になってしまうという推測もあるほどです。

 少子高齢化に対して何とかしなければいけないということで叫ばれているのが「少子化対策」です。10年ほど前から政府内で検討され、エンゼル・プランや次世代育成支援対策など、いろんな施策が講じられてきました。でもなかなか決定打がないのが現状です。

 
 私たちは今「子育て支援」がとても重要だと唱えています。そしてその実践の最前線にいます。

 私も子育て支援の一つとして院内に病児保育室を運営しています。病気などのために登園・登校できず、親御さんもお仕事を休めないというお子さんを一時的にお預かりする施設です。子どもの病気はそのほとんどが急なものですから、利用も急に必要になります。でも、どんな時でもお子さんをお預かりします。「いざ」という時に必ず対応でる“安全ネット”があるために、親御さんは安心して働くことができます。とくに女性にとっては、その役割はとても大きいことでしょう。病児保育は子育て支援であるとともに、母親(女性)支援でもあります。

 当施設の対しては、残念ながら公的な補助がなく、年間1,000万円を超える経費の大半は持ち出しですが、やめるつもりはありません。小児科医だけができる子育て支援として、とても手応えを感じているからです。

 そして、病児保育を少子化対策だとは思っていません。結果として一人でも多く子どもを生んで下されば嬉しいですが、期待してはいません。子育てしやすい環境を作り、子どもが体も心も健やかに育っていけるようにすることが、子育て世代の周りにいる私たちの務めです。

 
 仮に日本の少子化対策が有効であったとしても、効果がでるまでにはそうとうの年月が必要です。出生率が上昇して、赤ちゃんが多く生まれても、その子が働き盛りになるには20〜30年かかります。高齢化問題は逼迫しているのに、出生数を増やすというだけの対策だけでは全く不十分であることも分かっていただけると思います。

 しかし、子育て支援が不要だといっているのではありません。子育て支援は、まさに今生きている子どもたちと、その親御さんたちへの支援として必要なのです。それは、もともと子育てというのは社会全体でていねいに行っていくべきものだからです。直接には両親と家族が子育てを担いますが(そして日本では、その大半を母親=女性だけが背負わされていますが)、それを大きく包み込み、支える仕組みが地域や社会の中になければいけないのです。

 男女共同参画社会を作ろうというのも同じです。女性が人間として尊ばれ、大切にされる社会を作っていこうというのが目的です。その結果、結婚しないという選択、子どもを生まないという選択を女性がするかもしれませんが、それもまた尊重されなければなりません。

 
 子育て支援は少子化対策ではありません。人間として子どもや女性が大切にされながら生きていける社会を作っていくこと、そのものです。出生数が多くなるか少なくなるかは、社会全体が選んだ方向として受け入れなくてはいけません。

 ちなみに、高齢化社会の切り札は高齢者自身です。歳をとっても仕事は必要です。それが生き甲斐です。定年制度を見直し、お年寄りでも働き続けられる環境を作って下さい。元気の良い高齢者がほかの高齢者を介護するのもすてきです。日本の人口が減少したとしても、少ないながらも幸せに楽しく暮らしていける社会を作ることこそが政治の役割です。

 ただし、「少子化対策」という看板を掲げると公的な補助なども得られやすいのは確かです。それを上手に利用していくのも一つの知恵だと思います。

 
 このたび、神奈川県内で「緊急サポートネットワーク事業」が立ち上がることになりました。いろんな分野で、その専門性を生かしながら子育て支援をおこなっている団体や個人が、一つの大きなネットワークを構築していくことで、ますます大きな役割を果たしていくことになるでしょう。これからの活動に大いに期待したいと思います。

 その合い言葉は「少子化対策」ではなく、「子育て支援」と「母親(女性)支援」です!

目次の
ページへ

このホームページ
のトップへ