塚田次郎著

当院での病児保育の現状と課題

(2009年11月)


「新潟県小児科医会会報」2009年第44号掲載

 当院は2001年6月「わたぼうし病児保育室」を併設し、8年余が経過したところです。これまでの歩みを振り返り、今後の課題と展望を考えてみたいと思います。

●開設の経緯

 上越市には当時すでに病後児保育事業があり、2か所の施設がありました。しかし利用者は1施設あたり1日に1名ほどと、多いとはいえない状況でした。

 「事業の性格からは利用が少ない方がいい」という意見もありましたが、日々接しているご家族の様子からはそうは思えませんでした。もっと必要性があるにもかかわらず、そのニーズを吸収できていないのではないか・・。

 原因はいろいろと考えられました。まずは保育の対象が「病後児」という、病気の回復期のお子さんだけになっている点です。子どもは急に病気になりますし、働く親にとって急な休みはとりずらいものです。急性期の病児を預かる「病児保育」こそ求められているのではないか。

 行政がかかわることで安定した組織になり、経営的な問題も少なくなるでしょう。しかし、急な利用に応じられない、定員が少なく決まってしまうと利用を断ることも生じる、など、不便な面もあるのではないか。

 そういった点を改めることで、もっと利用しやすい病児保育施設ができるはずだと考えて作ったのが「わたぼうし病児保育室」です。行政の援助を受けず、医院独自で開設しました。

●2つの方針

 運営にあたっては、利用者の利便を最大限に考え、2つの方針をたてました・・「急性期の病児も預かること」と、「利用希望者はすべて受け入れ、絶対に断らないこと」です。

 医院2階の空きスペースを使い、保育士2名という体制でスタートしましたが、利用者は年々増え、昨年度は年間で1,825名の利用(1日あたり7.6名)でした。当院の方針が利用者の方に広く浸透していったことが、利用数の著しい増加につながったのだと思います。

 利用者数の増加にともない、保育室を新築し、保育士も増員を続けてきました(現在は6名)。当初の予想を上回る増加数であったため、施設設備や人員の拡充には腐心しました。

●経営の難しさ

 経営的に困難さが増大してきたことも事実です。利用者の負担を少なくするために、利用料は少額にしてきました(現在は1日2,000円)が、運営費(大半は人件費)の数分の1にしかなりません。残りは医院の会計から補填していますが、8年余の累計で1億円を超えています。

 上越市では今年度より「病児保育事業」をスタートさせ、当院のわたぼうし病児保育室は市の事業を受託することになりました。しかし1日あたり4名までという事業なので、運営費のすべてがまかなわれるわけではありません。また市の事業となったことで、さらに利用数が増えることも予想されます。今後は市に対して、事業規模の拡大をお願いすることになるでしょう。

●運営の難しさ

 病児保育は運営面でもとても難しい事業だと実感しています。当院の方針である「全て受け入れる」ことを実行するためには、施設や保育士にそうとうの余裕が必要です。預かる人数はその日によって大きく変化します。預かる子どもたちの名前も、保育をしながらしだいに分かっていくという毎日です。

 昨年度は1日あたり平均7.6名の利用でしたが、0名の日が2日ある一方で、最も多い日には18名の子どもを預かりました。予約なしでの預かりが492名(27.0%)、当日の途中入室が79名(4.3%)。予約をキャンセルした方が170名でした。「飛び込みもOK」「キャンセルも歓迎」という柔軟で寛容な方針を堅持できているのは、民間施設ならではのことです。

 今年度からは市の事業委託を受けていますが、これまでのフレキシブルな運営がそのまま行えるよう十分に意思疎通をはかっていく必要があります。また、補助額の増額によって経営的に安定することも、病児保育が長く地域の子育て支援として役立っていくことにつながっていくものと考えています。

●さらなる発展のために

 当院で行っている病児保育は、当初行政に頼らないというスタンスをとったために独自に発展してきた経過があり、そのまま他の施設で取り入れることは難しいでしょう。しかし当院での経験が参考になるのではないかとも思います。

 病児保育が各地でさらにさかんに行われ、子育て環境がいっそう充実していくことを願っています。

 (「新潟県小児科医会会報」2009年第44号)

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