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院長ブログ

混迷と落胆

オミクロン株の爆発的流行を目の当たりにして、色んな混乱が生じています。
政府の専門家委員会は「若者は受診の必要なし」と提言。
重症化しないんだから、家で静かに寝ていろ、ってことでしょうか。
診察のために受診するのは、かえって迷惑だとでも言いたいようです。
当初は「検査受ける必要なし」とまで言っていたのですから、驚きです。

確かにこれまでのコロナ対応では上手くいかなくなっています。
というより、元々うまくいっていなかったのですが、それがオミクロン株の流行で顕然化したということなのでしょう。
かつてないスピードで患者数が増加しています。
検査も受診も制限せざるを得なくなっている、という状況は分かります。

でも、そんな状況を作っているのは、若者ではありません。
十分な検査体制を作ってこなかった政府の責任です。
2年間、何をしていたのでしょうか。
第5波が収まったあとの数ヶ月、何をしていたのでしょうか。

「水際作戦」は効果があったようです。
それによって、国内の流行を1か月から2か月遅らせることができました。
でも、いずれは流行し始めることは分かっていました。
それまでの「時間稼ぎ」が、水際対策の効果。
その間に検査のキャパシティーを拡大し、ワクチン3回目を実施していれば、その後の混乱は多少は防げたのではないのかな。
無駄に過ごした秋(空き)でした。

当地でもオミクロンと思われるコロナ患者が発生しています。
当院では、医院や病児保育室に入室前にコロナの迅速検査(抗原定性検査)を実施しています。
その対象は、いわゆる感冒症状のあるお子さんです(必要であれば保護者の方にも)。
発熱、咳、鼻汁、咽頭痛などの訴えがあれば、コロナも疑って検査をしています。
なぜなら、症状や診察所見からコロナ患者を見分けることが不可能だからです。

子どもはよく風邪をひきます。
今シーズンはインフルエンザの発生は皆無ですが、でも風邪ひきさんは少なからずいます。
その中で一人でもコロナ患者を見逃してしまったら、アウトになりかねません。
特に病児保育室では、どうしても密集した環境で長時間、他のお子さんや保育士・看護師などと一緒にいます。
感染が拡大するリスクはとても大きいです。

もし陽性者が出たら、おそらく当日利用したお子さんや保育士の全てが「濃厚接触者」と見做されることでしょう。
そして、その日から病児保育室はしばらく休みになることでしょう。
一時的に閉鎖です。
社会的な影響を考えると、そんな事態には陥りたくありません。

そういったことを考慮し、入室前検査を実施しているのですが・・
「若者は検査不要」「受診も不要」などと言われると、はー!?
理解できません。
今取り組んでいることが、意味なし、と言うこと??

けっこう大変なんですよ。
トリアージは建物に入る前に行う必要があるので、その場所は屋外です。
ちょうど冬場で、雪が降り、嵐のような強風が吹き荒れる中で、来院(来所)した方のクルマまで行ってヒアリング。
その後必要に応じて抗原検査のための試料採取。
感染を受ける可能性もあるので防護服着用。
寒いので防寒具も着ているため、肉体的にも随分厳しい状況でトリアージの体制を作っています。

現場を知らないんでしょうね。
机上で話が終わるわけではないんです。

現在のコロナ患者の劇的・爆発的急増加の状況からは、何とかしないと、という政府関係者の「気持ち」は分かります。
でも、それが正しい方針だとは思えないのです。
行き当たりばったりの方針転換。
そういうのであれば、これまでの方針が間違いだった、それを推進してきた自分達の誤りを率直に認めるべきです。
必要なら首を差し出して、それでもこうした方がいいんだと言ってほしい。

そこまでの度量もないのでしょうね。
尾身先生は私の大学時代の先輩ですが、申し訳ないのですが、肩を持つ気になれません。

今自分達が必死にやっていることが、意味のないことと言われたように思えて、力が抜けてきます。
もう何もしなくていいの?
風邪症状で来院した子どもは、みなコロナとみなして、診察せずにかえってもらうの?
そんなことが認められるの??

医療法という法律には、医師は求められれば診療する義務があると書いてあります。
それに違反することを「応召義務違反」と言います。
それが可能になるようにするには医療法を改正してもらわないと。
あるいは何かの「超法規的処置」を認めてもらわないと。

長文になり、失礼しました。
ここまで読んでいただく方も、なかなかおられないと思いますが、お付き合いいただいたことに感謝いたします。

「まんえん防止等重点措置」の出されている週末は、おとなしく、そして穏やかに過ごすことにします。
きっと来週はまた元気が戻ってくることでしょう。

(写真は1月22日付「朝日新聞」)