院長ブログ
読了
岩田健太郎さんは神戸大学医学部、感染症内科の教授。新型コロナのことでは多くの発言をされています。今年に入ってから新型コロナ関係の本の数冊刊行。
この本は先週発行された最新刊で、さっそく読ませていただきました。先月も、発行されたばかりの書籍を読んでいます。
彼のことが注目を集めたのは、2月に起きたダイアモンド・プリンセス号で集団発生。正規の手続きで入船しましたが、うるさいことを言うのでわずか数時間で厚労省の某幹部から追い出されました。
ゾーニングがきちんとできておらず、感染症対策としては劣悪な状態だったことを告発していますが、それが日本の中では嫌がられるのでしょうね。困ったことです。
私もこの「事件」をきっかけに、岩田先生の発言を注視するようになりました。テレビなどでも時々出演されているので、ご存知の方も多いことでしょう。
この本のテーマはPCR検査。感染症を専門とする医師として、PCRさえすればいいという論調には反対だということです。もちろん、先の豪華客船での集団発生(巨大クラスター)でも十分なPCR検査をしなかった(できるだけのキャパシティーが日本にはなかった)のが感染を拡大させた要因になっています。必要な時にはPCR検査をしっかりすべきです。
でも、心配だからと言って全ての人がPCR検査をすれば十分だということでもありません。検査の結果を適切に解釈する必要があります。PCR検査についても、出てきた陽性や陰性といった結果も、それが本当なのかどうか(偽陽性や偽陰性があります)。
まずは検査をする必要があるかどうか。「事前確率」と言いますが、罹患している可能性が低い時には、結果が陽性と出ても真の陽性である可能性はやはり低い。「尤度(ようど)」と言うのですが、尤も(もっとも)らしさのことです。事前確率に尤度を掛けた結果が事後確率。事前確率が低ければ、事後確率も低いと言うわけです。
例えば家族や職場で罹患者がいる場合や、症状からして新型コロナらしい(味覚や臭覚の異常があるなど)場合は事前確率は高く、検査の必要性は高いことになります。その時の検査結果は、事後確率も高いわけです。
要するに、検査より先に見立てをしっかりすること。周囲の流行の様子を把握し、本人の症状もよく問診し、その上で検査の要否を判断する。その上で検査をすることで、より確度の高い検査結果が得られるということになります。
これって、私たち臨床医が通常やっている診療のスタイルです。それをきちんとすることが、新型コロナの診療に当たってもとても大切なんだと思います。以前読んだ岩田先生の本にも詳述されていたことなのですが、改めて確認しました。
当地ではまだ市中感染には至っていませんし、発生数もまだ多くはありません。この状況がいつか変わってくることでしょう。当院でもしっかり対応していかなくてはいけない、と気を引き締めているところです。
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