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院長ブログ

2学期前に接種ができるかな?

記事を見て驚きました。12歳から15歳の接種ができるようになり、その体制もまだ十分にはできていないのに、「夏休み中に終わらせる」と。

気持ちは分かります。接種できるようになったわけですから、できるだけ早くやってあげたい。夏休み中に終われば、どんなにいいだろうかと思います。でも、現実はどうなんだろうか。

12歳といえば小学6年か中学1年。13歳から15歳はおおむね中学生。つまり、小中学生なので、接種は慎重にならざるをえません。

日本小児科学会と日本小児科医会は声明を発表し、この年代は個別接種で行うように求めています。当然ですが保護者の同意が必要ですし、接種の際は保護者同伴になります。

昔、ワクチン接種を学校で行っていた時代がありました。場所を学校に指定しているということではなく、学校管理下での集団接種です。保護者が同伴するわけではなく、保護者の同意は形だけ。学校で行うために、同調圧力が働き、みんなが受けているからみんなと一緒に受けることになるでしょう。

新型コロナワクチン接種においては、小児は個別接種を原則とするという方針は当然の結果です。

一方で、個別接種は医療機関で行うために、効率が良いとは言えません。予防接種を専門に行なっている医療機関はありません(海外渡航のためのワクチンだけをやっているトラベル・クリニックはありますが)。さらに、担うのは主に小児科になりますが、全国でどれくらい余裕があるでしょう。

小児科の診療所や病院は、病気の子どもの診療が仕事の主体。加えて、乳幼児の健診や通常の予防接種も行っています。診療所は通常は医師は1人。病院であれば複数の医師がいますが、入院医療を担当するのが主な仕事です。

日常の仕事で手一杯のところは少なくないでしょう。そこに新型コロナワクチンを接種する余裕は、どう考えても十分にあるとは言えません。

2学期前に接種してあげたいと思うのは、私たち小児科医の気持ちです。担当大臣は、ではどのような方策を取ればそれが実現できるかを考え、政策を作るのがあなたの仕事です!

「夏休み中に終わらせる」と言うだけで、後は自治体に丸投げ。それはないでしょう。

当市では高齢者の接種に目処がついたので、一般成人の接種を今月末から行います。16歳以上が対象ですから高校生も入っていますが、高校生は夏休み中に完了予定。安心して2学期を迎えられるようにしようということです。

小中学生の接種は7月上旬に開始し、個別接種で行うためにもう少し時間がかかりそう。それでも9月末までには行うという方針です(10月にはインフルエンザワクチンが始まるので、その前には済ませたい)。当院も最大限の協力をするつもりで、体制を準備しているところです。

でも、このところ、国から自治体へのワクチン供給量が絞られるという情報があります。自治体にはやれ、やれとハッパをかけているのに、ワクチン供給の見込みが十分に立たないようでは、自治体はどうすればいいの?

私もこの点が心配になり、市の担当者に問い合わせましたが、個別接種分のワクチンは確保するとのお話をいただきました。

幸いなことに、当院は近年、複数医師の体制になっているので、いわゆる打ち手の余裕があります。「隔離棟」(最近「ワクチンセンター」に改名しました)があるために、一般診療とは別に、同時進行で予防接種ができます。それでも、看護師などのスタッフに限りがあり、診療や通常の予防接種も暇だというわけではありません。

さてどうしましょう。当院に何ができるか、またしっかり考えてみます。