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院長ブログ

全例報告をやめれば解決する?

⭐︎新型コロナ発生届の実際

患者数の爆発的増大により医療が逼迫状態に。
その原因の一つが、2類相当なので「全数把握」、つまり全例報告をする仕組みだと言われています。
本当にそうかな?

当院は毎日数十人分の発生届を保健所に提出しています。
最多は、今月15日の43人分。
この報告に、実はさほど時間を使っていません。
保健所へ電話連絡をし、発生届をFAXで送ります(原本は郵送)。
この間数分以内。
患者さんの診療の中で一緒に行っているので、残業することもありません。
(患者数が多いことによる影響はありますが)

問題になっているのは厚労省が使ったHER-SYSという電子システムに入力する作業。
80項目ほどを、その日のうちに入力する必要があります。
テレビの報道番組では、この作業を医師自身が診療が終わった後の夜に、数時間かかって実施しているという話がありました。
睡眠時間を削り、医師の健康問題も生じかねないと。
その解決のために「全数把握」をやめてほしいという意見が出ています。
国もその方向で動く方針だということです。

でも問題がごちゃ混ぜになっています。
HER-SYSへの入力が大変であれば、基本的な入力を事務員などに補助して貰えばいい。
それだけで医師の負担は相当減ります。

当地では新型コロナ発生の当初から、HER-SYSへの入力は医師(医療機関)に代って保健所が行っています。
医師会と保健所との打ち合わせの中で、医師(医療機関)の負担軽減を図る目的でそう決まったのだと聞いています。
もしかしたら、開業医はパソコン作業ができないと思われていたのかも?
(嬉しい誤算です)

発生届は医師が作成する必要がありますが、その内容もワクチン接種歴は不要とするなど、簡略化されています。
氏名、住所などの基本項目は事務的に補助者が先に記入しておきます(青で囲んだ部分)。
医師が書くのはその下の部分(赤で囲んだ部分)。
6か所ありますが、その多くは丸で囲む程度。
これならさほど時間を使わずに記入できます。
(これでも結構煩わしいのですが)

こう言った作業を、電子カルテの情報を使って自動で行うAIのシステムがあるというニュースを見たこともあります。
いろんな手立てをすれば、現場の負担は軽減されます。
そんな意味で、当地の保健所が「入力代行」の方針をとってくれたことに感謝しています。

保健所に届け出ることで新型コロナの療養が開始されます。
全例報告する必要がなくなれば、その指示はどこがすることになるのでしょう?
もしその指示を診療した医師が行うことになったならば、新たな現場の負担が生じます。
入院や療養施設入所に調整もすることになれば、発生届を書いて提出する手間よりもはるかに大変なことになりそうです。

「全数把握」というと、単に患者数(陽性者数)のみと思われがちですが、そうではありません。
新型コロナに関する医療、公衆衛生の全てが関係しています。
変えるべきは早急に行うべきですが、拙速では後でまた大変なことになるでしょう。

こんな議論を、新型コロナ流行が始まって2年半も経っているのに、まだ始まったばかりというのも、いかにも日本的です。
お役所仕事というのは、このことを言っているのでしょうね。
しかも大流行の真っ只中で、身動きできなくなってから始めようとしている。
流行規模が大きくなる前に、医療現場も行政も皆落ち着いている時に、先を見越してシステム作りをしておくべきでした。

以上、現場から苦言を呈しておきます。