インフルエンザ・ワクチンの効果 |
今年は、私も注射を受けさせていただきましたが、本当にインフルエンザの予防接種は受けてほしい。朝、学校に欠席の連絡が入るのですが、「まだ熱が下がらない。」「咳が止 まらない。」などの話を聞くと切なくなります。ちょうど保護者や同僚に同じくらいの子どもがいる人といろいろな話をしますが、予防接種も話題になります。「受けておいたほうがいいよ。」というと大体の人が、「型のあたるときとあたらないときとあるんでしょ。」といいます。実は、私も確率的なものは良くわからないのですが(勉強しなければいけません。)「予防」というものは積極的にするものだと思っていますので、 「でも、今まで重くならなかったからやってみたほうがいいよ。」と答えている気がします。自由に話せる雰囲気がある保護者が多いので「そうかな。」「受けさせてみよう。」 など今の時期になると会話することがあります。 (上越市・NTさん) 現在のインフルエンザ・ワクチンは、「当たり」ます。特にA香港型と、Aソ連型(いまではロシア型といわなければいけないのかな?)は、毎年ピッタリです。B型の抗体(免疫)の出来方が今一なので、こちらの方は、せっかくワクチンを受けたのにかかっちゃった、という話がでるかもしれません。(その反省で、このシーズン用のワクチンは、B型が変わりました。) インフルエンザ・ワクチンは、どうしても効きが悪いという話が出がちです。これは、注射で作る免疫(抗体、抵抗力)は血液の中にできることが原因です。インフルエンザは、のどや鼻の粘膜にウイルスがつき(感染)、その局所で増殖して、丸1日から2日ほどで熱などの症状が急激に始まります。注射で作られた免疫だけでは、この初期症状は抑えられません。 しかし、少し遅れはするものの、血液中の免疫も活躍し始めるので、それ以上の症状は抑えられるはずです。つまり、インフルエンザにはなってしまうけれども、軽くすむはずだということです。(実際にワクチン接種者では、熱の高さや期間などの症状が軽いことが証明されています。) ワクチンは、3種類の混合ワクチンです(A香港型、Aソ連型、B型)。例年、複数のインフルエンザの流行が起きますが、いずれにも対処できるように設定してあります。 インフルエンザ・ウイルスは、同じ型でも、少しずつ変化をします(小変異)。たとえばA香港型でも、数年以上前のワクチンは、最近流行をおこしているウイルスには効かない、ということが起こります。このため、ワクチンの中にいれるタイプを決めるに当たっては、次のシーズンに流行しそうなタイプを的確に決めなければなりません。「流行予測調査」といっていますが、近年、精度が向上し、ほぼ的中しています。(とくにA型では) もし、多少ことなるウイルスが登場しても、形は似通っているので、ある程度は効きます。 インフルエンザによる脳炎・脳症が相当の頻度で起きていることが分かってきました。脳炎・脳症になる機序はまだよく分かっていませんが、インフルエンザ・ウイルスが血液中に入り込み(「ウイルス血症」といいます)、その後に脳の中に入ります。ワクチンであらかじめ「血液の中に」免疫があると、ウイルス血症をおこさずにすみ、その結果、脳炎・脳症になるのを防いでくれていると考えられています。 ぜひ、多くのお子さんに接種を受けていただいて、脳炎・脳症という重い合併症を少しでも防ぎたいと願っています。 大きな問題がほかにあります。全くの新型ウイルスが登場した場合です。人類がこれまで経験したことのないウイルスですから、地球上の全ての人が感染を受ける可能性があります。 WHOでは、少なくとも1/4程度、つまり15億人以上は短期間(半年以内)に新型インフルエンザに感染すると推測しています。死亡率を1%とみても1,500万人。おそらく数千万人になるでしょう。日本でも、約3,000万人が一挙に罹患し、数十万人(あるいはそれ以上)が死亡する、と推測しています。 この新型インフルエンザを予防できるのは、新たに作られる「新型ワクチン」。これを短期間に作って、短期間にできるだけ多くの方に接種する必要があります。しかし、現行のワクチンも、このシーズンは300万人分の供給がやっとでした。とても十分な量の新型ワクチンを緊急に作る余裕はありません。そんな事態になったら、もうパニック状態でしょう。 多くの方が、普段の年から、通常のインフルエンザ・ワクチンを接種するようにしていれば、本当のいざというときにも、新しいワクチンをフル回転で生産し、注射する体制が作りやすいと思います。その意味でも、「平素からの危機管理」が大切だというわけです。(日本人は、「喉元すぎればなんとやら」で、ここのところが弱いようです。) 結論をいうと、インフルエンザ・ワクチンはおすすめ!! ということです。 1999.11.12 |
塚田こども医院Q&A1999年11月
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