インフルエンザと解熱剤

最近テレビなどの報道でインフルエンザで熱が出ているときに解熱剤を入れてはいけない。と、聞いたのですがどうなんでしょうか? 病院でよくもらう座薬もダメなんでしょうか? うちの下の子はよく熱をだすので、その対処法など教えてください。(上越市・Kさん)

インフルエンザについて、話題が増えてきていますので、またいろいろお知らせしなければいけないと思っていました。

解熱剤との関係は、一番ホットな話題です。先に公表されたのは、「インフルエンザ脳炎・脳症の患者さんのうち、一部の解熱剤が使用されていると死亡率が高い」というものでした。一部の解熱剤とは、ボルタレンとポンタールです(いずれも代表的な商品名)。

これら2つの解熱剤は、熱を下げる効果が強いので、症状の重いときには好んで使われる傾向があります。つまり、脳炎・脳症のうちでもより重症のもの(換言すれば、予後の悪いもの)により使用されているかもしれないということです。ですので、これらの解熱剤が「死亡の原因」ではないかもしれないということです。(このような統計的な調査では、因果関係までは分からないことがよくあります。)

もう一つ、ここで注意が必要なのは、「インフルエンザ脳炎・脳症の患者さんへは使用しないこと」ということで、一般のインフルエンザの患者さんへの使用を制限したものではないということです。

では、これらの解熱剤をインフルエンザ患者さんに使っても良いかというと、やはりできる限り使わないでおく方がよいと、私も含めて、多くの小児科医が考えています。

解熱剤は、熱を下げる「対症療法」の薬であり、インフルエンザ・ウイルスを殺すなどの根本的な治療薬ではありません。解熱剤だけを一生懸命使っていても、決して良くはなりません。時には、熱が下がりすぎたりすることもあります。熱が高すぎて、具合の悪いときだけに限って使って見るという、やや慎重な態度が必要かと思います。

また、15歳未満のインフルエンザと水ぼうそう(水痘)の患者さんには、解熱剤の一種であるアスピリンとその類似薬は使用できないことになっています。これは、ライ症候群という重篤な合併症を引き起こす恐れがあるためです。

では、インフルエンザで使える解熱剤は何かということですが、最も安全性が高いと言われているの一般名「アセトアミノフェン」です。当院では、内服は「カロナール」(シロップ剤、散剤、錠剤)、坐薬は「アルピニー」を使用しています。

インフルエンザについては、最近は治療法がどんどん進んできています。A型については、すでに内服薬で「特効薬」とも言えるものがあり、昨シーズンから大きな武器になっています(シンメトレル)。さらに、A型とB型の両方に使える治療薬の発売も予定されています(例えば「リレンザ」という吸入薬がそうですが、残念ながら保険薬としては認められる見通しがなく、一般の診療で使えるのは、まだ先になりそうです)。

また、漢方薬には、このような解熱剤に付随する問題が無いため、当院でも近年は使うことが多くなってきました。

こういったこともあり、解熱剤に頼る治療は、すでに過去もものになりつつあります。インフルエンザの流行が近づいていますが、「インフルエンザがただの風邪ではない」ということと、「インフルエンザの治療は近年、格段に進歩してきている」ことを知っていてほしいと思います。

なお、一般的な風邪などへの解熱剤では、さほど制限はありませんが、やはり安全性の高いもの(アセトアミノフェンなど)を中心に、必要なときだけに限って使うようにされたほうがいいと思います。

キーワード:インフルエンザと解熱剤

2000.12.8

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塚田こども医院Q&A2000年12月