嘔吐下痢症と自家中毒

先日、発熱、腹痛、吐き気、元気がない等の症状があり受診したところ、ウイルス性の胃腸炎と言われました。さらに尿検査をしたら「自家中毒」をおこしているとのことで、点滴を受けました。点滴をしてもらった後は吐き気もおさまり元気になりました。インターネットでちょっと調べてみたら、精神的なことも影響するとか、繰り返す等が書いてありましたが「自家中毒」とはどういうことなのでしょうか?(上越市・Kさん)

症状からは、やはり現在流行している嘔吐下痢症(ウイルス性胃腸炎、流行性胃腸炎、吐き下し・・)だと思います。オシッコの検査で、おそらく「ケトン体」が陽性にでていたので、「自家中毒」もおこしているといわれたのだと思います。

ヒトの体の中では、エネルギー代謝にはブドウ糖が直接のエネルギー源として利用されます。食事でとった糖分や炭水化物は、とりあえずのエネルギー源として利用される以外は、脂肪分として蓄えられます。蓄えられている脂肪が少しずつ分解・生成されて、あらたにブドウ糖として利用されます。脂肪→ブドウ糖への代謝は、通常はゆっくり行われます。しかし、これが急激に行われると、いっしょにケトン体などが生成され、これが腹痛、嘔吐などをおこす「悪役」です。

この異常な脂肪の分解はいろいろな時におきてきます。「自家中毒」はその一つで、原因はハッキリしていないことがおおいのですが、精神的なことも関係している場合があります。何も食事をしていない「飢餓状態」が続くと、脂肪の分解が始まるので、ケトン体などが生成されてきます。今回の「ウイルス性胃腸炎」でも、十分な栄養がとれないため、「飢餓状態」と同様に脂肪の分解が急激におきてしまうことがあります。

このようなときは、ブドウ糖などの「甘いもの」を摂取することが有効です。吐き気があって食事がとれないときや、重症の時は、直接血液の中にブドウ糖を入れます。点滴注射の目的の一つです。(嘔吐下痢症では、脱水になっていることが多いので、糖分だけでなく、水分、イオン分も点滴注射で体内に入れる必要があります。)

ということで、今回のお子さんの場合は、「自家中毒」と同じように糖分の足りない状態があったのですが、感染によるたまたまのものかと思います。しかし、嘔吐と腹痛を繰り返すようでしたら、自家中毒も心配ですので、また小児科の先生によく診てもらって下さい。

キーワード:嘔吐下痢症、自家中毒

2000.12.26

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塚田こども医院Q&A2000年12月