インフルエンザで使ってはいけない解熱剤

実は子供がインフルエンザにかかりました。(11ヶ月です)こんな時期に!ともうびっくりです。高い熱が出たのが日曜日だったので救急病院に行ったのですが、そこでの診断は「風邪」ということで坐薬を入れられました。そして月曜日にかかりつけの病院に行ったところ診断の結果は「インフルエンザ」でした。そこでインフルエンザはむやみに坐薬を使ってはいけないといわれ、心配になり救急病院に確認したところ、やはりインフルエンザには使ってはいけないといわれている坐薬(脳炎、脳症の原因になるといわれている)で、もう使わないでくださいといわれました。2度びっくりです(使ったのは半分ずつ2回全部で1本です)。病院から帰ってすぐシンメトレルを飲ませました。夜には熱はまったく下がらず心配しましたが、次の日の朝には36度くらいまで熱が下がりました。昨日今日は昼間は平熱で割合元気(まだ少しぐずぐずいいますが)夕方になると少し熱が出るといった感じです。水分も取っていますし食欲もあります。熱が下がっても脳炎、脳症の心配はあるものでしょうか? (新潟市・Yさん)

お子さんがインフルエンザにかかられたとのこと、大変でしたね。4月も中旬ですが、まだインフルエンザの患者さんを見かけます。例年は1〜2月にA香港型、Aソ連型が流行し、3〜4月にB型が少しずつでます。ところが今年は、2月の最後になってやっとA型があらわれ(香港型とソ連型が同時に)、3月の上旬に中規模の流行を起こしました。3月の下旬から小康状態で、4月は「ほぼ終息」とは言っているのですが、流行の始まりが遅かった分、まだ少しずつ患者さんがでています。

子どものインフルエンザで怖いのは、ご心配な「脳炎・脳症」の発生です。ここ数年、流行が大きいときには日本全体で数百人の発生がありました。今シーズンは流行の規模が小さいので、さほど多くの発生はなかったのではないかと思います。

なぜ一部のインフルエンザ患者さんが脳炎・脳症になるのか、まだよく分かっていません。いわば原因は不明です。解熱剤の使用についても問題にされています。不適切な使用により、「脳炎・脳症の死亡率」を高めている可能性があるからです(「脳炎・脳症の発生率」を高めているわけではありません)。具体的には「ポンタール」という内服と「ボルタレン」という坐薬です(薬品名は代表的な商品名)。これらは、「インフルエンザによる脳炎・脳症の患者さんには使わないこと」とされています。

おそらくボルタレン坐薬を使用したのではないかと思いますが、インフルエンザ患者さんの全てに「禁忌」だというわけではありません。また、脳炎・脳症というのは、通常インフルエンザの発症(熱の出始め)から半日〜2、3日以内におきますので、今すでに熱が下がっていて、具合が良くなっているのでしたら、全く心配することはありません。

なお、15歳未満のインフルエンザ患者さんには、アスピリンとその類似薬は使用が禁止されています(同じく、15歳未満の水ぼうそうにも)。これは、「ライ症候群」という重篤な脳障害や肝障害をおこし、死亡率の高い病気を引き起こすことがあるからです(ライはこの病気について詳しく調べた医師の名前)。すでに日本では、小児用の熱さましとしてアスピリンは販売されていません(一般薬、医療薬とも)ので、こちらの方は心配されるひつようはありません。

ただし、子どもの発熱に対して解熱剤をどのように使うかは、難しい問題です。熱があるからすぐに熱さまし・・というのは、安易な使用になりかねません。熱が何のためにでているか、熱を下げる必要があるか、熱さましを使うべきか、使うとしたらより安全な熱さましは何か・・いろいろと考えておかなければいけません。

キーワード:インフルエンザ、解熱剤

2001.4.19

目次のページへ

ホームページのトップへ

塚田こども医院Q&A2001年4月