アメリカでの予防接種の受け方

来月3ヶ月の息子を伴って渡米します。1−2年滞在する予定です(未定)。日本では予防接種を受けていないので、向こうで受ける必要があると思うのですが、アメリカ小児科学会の勧告に元づくスケジュールでは
2ヶ月 B型肝炎、DTaP,インフルエンザ桿菌B、ポリオ、肺炎球菌
4ヶ月 B型肝炎、DTaP,インフルエンザ桿菌B、ポリオ、肺炎球菌
6ヶ月 DTaP,インフルエンザ桿菌B、肺炎球菌
一歳  B型肝炎、インフルエンザ桿菌B、MMR、肺炎球菌、水疱瘡
1歳半 DTaP,ポリオ
4才 DTaP、ポリオ、MMR
となっています。(aTPはacellular PTとのことです。)ご存じのように日本ではB型肝炎は肝炎感染の母からの出産児(か医療従事者)、インフルエンザ桿菌Bはなく、ポリオはアメリカでは皮下接種、肺炎球菌は日本では任意となっているようです。一年程度で帰国するとして、先生でしたら、この間にアメリカでどれを優先して接種すべきと考えになられますか?家族は日本人に対しては接種量が過量になるのではなどと心配しています。(多少、非医学的ですが)(アメリカ・Oさん)

予防接種については各国でワクチンや体制が異なっていますので、対応に苦慮することがしばしばです。
ですが、基本的にはその国で決められていること(あるいは、一般的に行われていること)をそのまま受ければいいと思っています。
特に先進国ではワクチンの問題もなく、いろんな事情(医学的、社会的・・)を考慮してプログラムが作られていますので、そのまま受けていただいたほうがいいです。
(帰国後は、日本の事情に合わせて接種を続けることになります。)
逆に発展途上国では、十分なワクチンの供給がなかったり、日本国内にはない感染症などの予防が必要であったりしますので、渡航する前にできる範囲で接種を済ませていただいています。

ワクチンの種類は、各国の製剤が違いますが、国による違いは目をつぶり(医学的ではないかもしれませんが)、接種の回数を問題にしているのが現状です。
(国内でも、厳密にはメーカー間の違いは多少ありますが。問題にはしていません)

接種量についても、この国での標準的な量で行ってもらって下さい。
生ワクチンは接種量の違いは問題になりません(数倍多くても、数分の一でも効果・副作用には関係しません)。
不活化ワクチン(トキソイドを含む)では、接種量が少ないと抗体価の上昇が少なく有効とならない可能性があり、接種量が多いと接種部位の腫脹等の局所的な副反応が増強する可能性があります(アジュバンドの影響かと思います)。

日本人は体格的に小さいから米国での通常の接種量では過量になるのではないかとのご心配のようですが、これは気になさらないで下さい。
米国には体格的に小さい東洋系の方もおられますが、通常通り接種を受けています。
また不活化ワクチンにおける局所の副反応の強さは個人差によるものが大きいです。
もし接種部位の腫脹などが著しいようでしたら、次回から減量してもらうよう依頼して下さい。

ワクチンの種類については、やはり日本とは違いますが、全体としては日本も米国を見本として改善の方向を模索しているところです。
若干、具体例をあげます。

・B型肝炎は日本では一般的ではありませんが、米国では東洋系人種でのキャリアー率が高いことから、ワクチン接種を奨励しているようです。
日本ではリスクの高い人に対してのみ行われていますが、できれば一般の方も受けていただいたほうがいいように思っています。
接種の機会があれば受けられるといいと思います。

・ポリオは日本では経口生ワクチンですが、ワクチン・ウイルス由来のポリオ発症が問題になっています。
いずれ日本も不活化ワクチンに移行するでしょう。
接種回数については、日本の2回法では不充分で、3回ないし州によっては4回の接種を求めています。
不活化ワクチンの接種方法(回数)については不勉強ですが、抗体価の上昇が生ワクチンよりも低いため、初年度に複数回、以後ブースター効果を期待して追加接種をすることになります。
これも米国内にいる間は、規定通りに受けておわれるといいと思います。

・インフルエンザ桿菌Bと肺炎球菌については、日本では一般的ではありません。
ですが、これもいずれ日本でも実施できるようにしていきたいと思っています(個人的ですが)ので、接種の機会があれば受けておかれるといいでしょう。
ただし、肺炎球菌ワクチンについては、日本国内で流行しやすい型が入っていないなど、日本での有効性がまだ確立していません。
(もちろん米国内では有効です)

・水ぼうそうワクチンは日本では任意接種ですが、これも大いにお薦めしてるワクチンです。
このワクチンは日本製で、とても優秀です。
水痘発症を予防ないし軽減してくれる効果が十分期待できます。
また、将来の帯状疱疹の発症を予防してくれるのではないかと推測しています(ワクチン開発からの年数が少ないため、数十年以上の「長期効果」はまだ確定していませんが)

・MMRは「はしか(麻疹)、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)、風疹」の混合ワクチンですが、これもどうぞ受けて下さい。
このうちおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は日本では任意接種ですが、おたふくの発症と、高頻度におきる中枢神経系合併症(髄膜炎など)を予防するために、私たちは大いにお薦めしています。
かつて日本でMMRワクチンが導入されたとき、おたふくワクチンの中枢神経系への親和性が想定以上であったため、髄膜炎ないし髄液異常の副作用が頻発し、その結果、MMRワクチンが中止にいたった経過があります。
しかし、欧米で現在使われているワクチンではこの問題が起きておらず、安全性については問題ないとされています。

以上、ざっと思いつくままに書いてみました。
参考になさって下さい。

2002.1.17

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塚田こども医院Q&A2002年 1月