おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の診断と対処

おたふく風邪(流行性耳下腺炎)のことについてお尋ねします。昨年の3月頃、耳の下が痛いというので、受診したところ、おたふく風邪だろうと言われました。でも、流行がないので、はっきりとは分からないと言われました。その後、片方のほほが腫れて見るからにおたふく風邪の症状のようでした。が、熱が全くでなくて、腫れも2日くらいで引きました。予防接種を受けていなくてこんなに軽い症状ではおたふく風邪にもう一度かかるのではと心配です。他のQAで、免疫ができているかどうか調べるより、予防接種を受けたほうが早道とのこと。この子の場合は、どうでしょうか?3歳の妹がいますが、その時は、うつりませんでした。兄弟でもうつらないこともあるのでしょうか?子供の友達のお母さんがおたふく風邪で入院をし、現在は、自宅で療養中ですが、もう治療の薬もなく、ただ、療養しているそうで、動くと頭がいたく、家事などができないと聞きました。とても心配です。日にちが経てば良くなってくるものなのでしょうか?(和歌山県・Yさん)

結論からお話をしますが、やはり予防接種をみなさんで受けたらいいのではないでしょうか。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)はその名前のとおり「流行」するものです。
地域の中で流行がなく、一人だけおたふくになるということは、ちょっと可能性は低いですね。
また、耳下腺が腫れるのがおたふくだけではありません。
他の原因による「急性耳下腺炎」もありますし、幼児では繰り返し起きることもよくあって「反復性耳下腺炎」とも呼んでいます。
症状の違いがはっきりしないこともよくあるのですが、本物のおたふくでは耳下腺の腫れが1週間ほど続くのに対して、他の耳下腺炎では数日で良くなることが多いようです。
また、耳下腺と同じ唾液を作る働きのある顎下腺がいっしょに腫れることがおたふくでは多いのですが、他のものでは通常は腫れてきません。
他の耳下腺炎は片方の腫れだけですが、おたふくでは2/3ほどが両側が腫れます。
触った印象も少し違っていて、おたふくでは全体にぷわーっと、他のものでは硬くごつごつとしているような感じです(これは私の印象で、ちょっと医学的ではないかもしれません)。

そんなことで臨床的におたふくかぜ(流行性耳下腺炎)とそうでない物を区別しています。
もちろん、腫れているのが本当に耳下腺なのかというのも大切です。
ほっぺが腫れているものでは虫歯から来ているものもありますし、首の腫れではリンパ節かもしれません。

お子さんの場合、流行がなく、2日ほどで腫れがなくなっているとなると、おたふくではない可能性も考えられます。

「軽くてすんでいるとまたかかるかも?」ということですが、それはありません。
おたふくはムンプス・ウイルスが全身に入り込んでおきる感染症で、それが治ると体にはちゃんと免疫ができます。
そうなるともう二度とかかることはありません。
軽くすんでいても、それがおたふくであれば、免疫はきちんと出来ています。

よく「軽いからまたかかる」とか「片方だけだから、あとでもう片方おたふくになる」などと言われてますが、それらが間違いであることは、以上の説明でご理解いただけますね。
もし二度耳下腺が腫れたら、そのどちらかが(もしかしたら、その両方が)おたふくではないと言うことです。

おたふくの伝染力はさほど強くはありませんので、きょうだいでもうつらないで終わっていることもあります。
また、「不顕性感染」といって、症状がでないうちに終わっていることも、おたふくではあると言われています(この時でも免疫ができています)。

免疫の有無を調べることは、血液の検査でできるのですが、検査の種類の選択、その解釈など、感染症について専門的な知識が要求されますので、必ずしもすべての医師が満足できる対応ができるとは限りません。

いろいろとお話をしていますが、結論は、かかっていてもかかっていなくても、おたふくワクチンの接種をしておく方がいいということです。
(大人の方も確実にかかったということがなければ、いっしょに受けるといいですね)

2002.2.13

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塚田こども医院Q&A2002年 2月