妊娠中のおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)

4歳の子供が8月7日に発熱しその2週間前に保育園の仲のよいお友達がおたふくになったのでもしやと思い翌8日病院へ行ったところやはり耳の下が腫れているから可能性が強いと診断されました。その翌日にはもう片方も腫れ10日間程で完治しました。現在私は妊娠6ヶ月21週なのですが、8月8日に検診で血液検査があったのでついでにムンプスの検査も受けました。(私はどうやらかかっていないようなので)そして結果を聞いたところ8日の検査の血液の数値は32と言う結果でした。普通は8以下といわれ、その時はすでに発症していたということですよね?!これから発症するということでしょうか?!大人がかかればかなり症状がひどく出ると聞いていただけに私の場合全くと言って良いほどなんの症状もなかったので、本当におたふくに感染していたのか不安です。今のところ赤ちゃんがどうこうと言う事はないのですが、かなりお腹は張りやすいのでおたふくになると流産しやすいと言う事を聞いたりするとこれもまたかなり不安です。この数値の結果もふまえて妊娠中のおたふくについてお聞きできればと思います。(Iさん)

結論からもうしますと、今回お母さん(ご本人)がおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)に感染したとは考えにくく、心配することは何もないように思います。

まずおたふくの診断ですが、周囲での流行とお子さんの症状から考えて、まず間違いないことでしょう。

次にお母さんが受けられた検査ですが、これは詳しくはお聞きしていないのでしょうか?
きっとおたふく(ムンプス)ウイルスに対する抗体検査だと思うのですが、実は抗体検査にはいくつかの種類があり、それによって数字の意味が違います。
おそらくHI法によるものかと思いますので、そうだとしてお話しします。
「普通は8以下」と書いていますが、普通という表現はどうなんでしょうか。
「免疫をもっていない」というのが正しい表現です。
これは「おたふくにかかったことがない」場合もありますし、「おたふくワクチンを受けていない」という意味があります。
逆に、それを越える値は「おたふくに対する免疫を持っている」を意味します。
以前におたふくにかかったことがあれば免疫は一生ありますので、ある程度大きい値を維持します。
おたふくワクチンによって免疫を作ると、その後は「免疫がある」という状態になります。
つまり、「32倍」であることは「おたふくに対する免疫がある」ということであって、最近(今回の妊娠中)おたふくにかかったということを意味することではありません。

以上のことは検査法によっては多少違った解釈をすべきかもしれませんので、検査を受けた主治医によくお聞きになって下さい。

また、仮に妊娠中におたふくにかかったとしても、胎児に対する影響は否定的です。
大人のおたふくは重いので、妊婦さんの問題はありますが、胎児の奇形をつくることなどはないとされていますので、その点でもご安心下さい。

あえて付言しますが、抗体検査はその意味づけがとても大切です。
きっと主治医の先生はそれなりの説明をされているとは思いますが、患者さん(受診者さん)が正しく理解できていないような状況は「検査のしっぱなし」であり、不安を抱く分だけ、しない方がましかもしれないと思っています。
このような相談が多いのは、医師の説明不足、あるいは知識不足がそうとうあるように感じています。

2002.8.23

目次のページへ

ホームページのトップへ


塚田こども医院Q&A2002年 8月