母乳保育と健診

現在四ヶ月半になります男児を育てています。市の三ヶ月検診に(三ヶ月と二十三日)行きましたら、体重5850g、身長61.9cmでした。出生時は3205g、49.0cmでしたから、体重の伸びが悪いと医師に言われました。確かに見た目にも細いのですが、その医師に「細いから首もぐらぐらなんだ」とか「うつぶせして首を持ち上げられないのもだめだ」と言われ、落ち込みました。それまでは母乳中心で、ミルクも足したかったのですが本人が哺乳瓶嫌いで、何度も残したミルクを捨てていました。しかし、体重を増やすためにはミルクを与えるしかないので、今は80ccほどのミルクを一日八回くらいあげています。母乳もやりたいのですが、どうしてもおっぱいを欲しがってしまうので、ミルクの合間に与える程度にしています。ミルクは一度に飲む量で、多くて120ccくらいしか飲みません。それでも夜間は五、六時間続けて眠ります。母乳で育てたかったのに、息子に申し訳ないです。息子は泣いても抱っこすると良く笑い、落ち着いていることも多く、ぽっちゃりした赤ちゃんだった姉に比べ、おっとりしていて扱いやすい赤ちゃんです。授乳の感覚はいまだに三時間くらいで、そこが大変と言えばそうですが・・・。顔色もよく、よく言葉も発しますし、四ヶ月半の現時点ではうつぶせして首も持ち上げるようになりました。だから、心配なのは体重が少ないことと、ミルクを飲む量が少ないことです。そして、離乳食をすすめたら余計にミルクの量が減って痩せてしまわないでしょうか?教えてください。(滋賀・Tさん)

お子さんの身体発育についてですが、確かに身長のわりに体重の伸びが少ないようです。
しかし、これはあくまでも「平均」的な数値と比べてのことであり、理想的な数字をもとにしているわけではありません(そもそも理想的な体格はありません)。
赤ちゃんの発達はみな違っていていいわけで、病気によるものや、極端な栄養不足や偏りがなければ、大きい・小さいがあって当たり前のことです。
いただいた計測値をみてみましたが、これからは問題にすべきものはないように思います。

できるだけ母乳で育てようとされていることはとても良いことですし、これからもぜひ続けて下さい。
それで足りないようでしたら人工乳を加えていいですが、でもぜったいに必要なものではありません。
人工乳を加えることで、かえって母乳の飲みが少なくなったり(母乳の出方もすくなくなったり)するようでしたら逆効果です。
そんなときは、哺乳量としては少な目でも、離乳食が始まるまでは母乳だけでいってもかまいません。

哺乳量が平均より少ないと、体重も平均より少なくなるでしょう。
でも極端に少ないのとは違って、身長はちゃんと伸びているでしょうし、活発に運動し、表情も豊かで元気にしていることでしょう。
そんな様子なら、何も心配することはありません。

逆に哺乳量が平均より多ければ、体重よりも平均より多くなるでしょう。
体格全体が大きいのでしょうが、それ以上大目のカロリーをとっていると主に脂肪となって蓄えられます。
日本人にとって「健康な赤ちゃん」というのは、まるまるとしている赤ちゃんをイメージしがちですが、しかし「太っている」と考えると、それが「健康的」であったり、「理想的」であったりするのか、疑問です。
ちょっとやせていても、その方が運動がずっと活発であることが多く、もしかしたらお痩せさんの方がずっと「健康的」なのかもしれないとも思っています。

赤ちゃんの様子をお聞きする限り、とても良く育っているように思います。
どうぞ、ご心配なさらずにこのまま子育てをお続け下さい。

今後やはり哺乳量が少ないようでしたら、離乳食を早めに始めるのもいいのではないかと思います(アレルギーがなければ)。
生後4か月ころから準備期、5か月ころから本格的に始まりますが、そのペースや量を少しずつ多めにやってもいいかもしれません。
本人が欲しがるようでしたら試してみてください。

それにしても、何のための「健診」なのか、あらためて考えさせられます。
お母さん方に不安な気持ちを与えたり、子育てに頑張っているお母さん方の意欲を萎えさせるのは、健診にあたる医療従事者の最も行ってはいけないことだと思っています。
健診の中身も、発育や発達の評価をして、それを「審査」したり、もし平均的でなければ「非難」するようなやり方は、もうやめてほしいです。
戦中戦後のような、栄養不足から乳児死亡の多かった時代はもう終わっています。
今は、子どもたちの心をどう育てるかが大きな課題です。
そのためには、子育てに取り組んでいるお母さん方を支え、もっともっと赤ちゃんと安定して関われるような精神環境を作るよう、心がけなければならないと思っています。

私自身も健診に携わっていますが、その中でどれほどちゃんと出来ているか、良い反省の材料にさせていただきます。
話が健診のあり方にまで飛んでいきましたが、最後に、同じ小児科医としてお母さんに不愉快で不安な気持ちにさせてしまったことをお詫びしたいと思います。

2002.8.26

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塚田こども医院Q&A2002年 8月