小児の解熱薬の選択

私は管理薬剤師Nと申します。薬剤師でありながらこのような質問をするのはいかがかとも思いましたが、関わる患者さんのために恥を顧みず質問させていただきました。内科Drの処方なのですが、小児にボルタレン坐薬の処方を続けてます。3才、2才はもちろん1歳未満にも処方します。もちろん使用が禁止されているわけではないですし、個別例としては使用することもあるでしょうし、医師の診察に基づく裁量ですから薬剤師がとやかく言うことではないかもしれませんが、警告や、最近ではウイルス疾患への危険性が指摘されているので母親も薬剤名を知っています。(中略)小児医療の常識としてはどうなのでしょうか?最近ではインテバン坐薬を2,3歳児に使うことも多いです。(Nさん)

メール拝読いたしました。
このようなお考えの医師がまだ日本におらることに驚きをもっています。
実際に小児科診療をされていることに、憤りを覚えます。

おっしゃるように、ボルタレン坐薬もインテバン坐薬も小児の発熱に対して使うことは、副作用の点で大いに問題があります。

まずボルタレン坐薬ですが、かつては解熱薬として小児に対して適応がありました。
しかし、ご承知のように近年はその適応が削除され、さらに「小児のウイルス性疾患の患者に投与しないことを原則」となっています(2001年5月改定一般添付文書)。
この点では議論の余地はありません。
適応がなく、さらに他により安全な解熱薬があるのですから、そちらを使うことが臨床医の義務です。

同様にインテバン坐薬も副作用が懸念される薬剤で、当初より発熱疾患への適応はありません(小児に限らず)。
(実際にこの薬剤を使用している小児科医はいないはずです)

ポンタールとあわせて、小児の発熱、なかでもインフルエンザと水ぼうそう(水痘)に対する解熱薬の使用については、より慎重な態度が必要です。
すでに一般添付文書の中でも「禁忌」に近い表現がされていますので、「使わない」ことが現在の「医療水準」とも言えます。
もしも副作用としてトラブルが起きたとき、「当時の医療の水準を満たした医療を行っているか」どうかというのは、医師側の責任を問う論点になります。
まだ一般的ではないのであれば医師側の責任はさほど問題にはならないでしょう。
しかし、すでに一般添付文書に記載され、一般の方へもマスコミ等を通じて繰り返し知識の普及がはかられていることを考えると、医師の責任は免れないことになります。

そんな医師の責任問題もさることながら、やはり根本は子どもたちの命と健康が守れるかどうかの問題です。
私も小児科医の一人として、子どもたちに対して不必要な投薬が一日も早く中止されることを願っています。
もし、薬剤師さん方からの働きかけでうまくことが進まないようでしたら、私も多少は覚悟を持ってことにあたりたいと思います。
もっとも、製薬メーカーにお話になると、担当者が飛んでくるのではないかとも思います。
重大な副作用が生じたときには、メーカーとしての責任も問われるわけですから。

2002.12.17

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塚田こども医院Q&A2002年12月