風疹の罹患と感染の違い

現在、3回目の妊娠中(5ヶ月)で、妊娠初期に同じ職場で風疹にかかったことに気づかず出社していた人が居ました。その人の風疹感染が分かったあと、医師に相談したところ、以前の妊娠中の検査で風疹の抗体(HI)が64倍だったので心配ないと言われました。風疹にはかかったことはないのですが、中学の時に予防接種を受けた記憶があります。今回、その後の血液検査の結果が出て、風疹の抗体(HI)が1024倍となっていました。医師に以前の感染を聞かれ、予防接種を受けたと伝えると、なら大丈夫だとの返事でした。過去の質問の回答を読むと、一度抗体が出来れば二度と感染することはないそうですが、抗体が増えたのは感染したという意味とは違うのでしょうか?(Tさん)

厳密にお話すると、「感染」と「罹患」は違います。
「感染」とは、その病原体に接触したことをいいます。
「罹患」は、そのために感染症にかかったことをいいます。
風疹抗体の動きと、周囲の風疹患者の存在から推測すると、今回風疹に「感染」したことになります。
しかし、すでに十分な風疹抗体があったために、風疹ウイルスを鼻や喉の粘膜面で中和(“殺す”)ことができ、それ以上体内に入れることはなかったはずです。
風疹という病気では、風疹ウイルスが血液中で増殖し、「ウイルス血症」という状態になっています。
今回のような場合、ウイルス血症はおきていませんし、まして胎児にウイルスが胎盤を通して移行していることはありません。
つまり、先天性風疹症候群の発生を心配することはありません。

もし風疹抗体が十分になければ、今回は胎児に大きな問題が生じうる危険性がありました。
「妊娠前に風疹抗体の検査をし、もし十分な抗体がなければワクチン接種を受けておく」ことをお勧めしているのは、そのような重大なリスクを回避するためです。

2004.1.12

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塚田こども医院Q&A2004年1月