乳児の腹部膨満・便秘

出産後、母乳育児を行っていましたが、生後数週間にて顕著な腹部膨満が見られました。しかし、その膨張具合が正常か異常かの判断がつかないまま、1ヶ月が経過しました。1ヶ月検診にて「腹部が硬いからERへ行きなさい」と言われそのまま入院することになりました。診断は『ヒルシュスプルング病』。十分な生検がなされないまま、すすめられて行く手術準備に疑問・不安を抱き、転院しました。その結果『超便秘』との診断。生後すぐから胎便も排出し、毎日5回程度の排便(黄色、白色のつぶつぶ入り。粘液などは認められず。においも酸っぱくはない)を認めていたので、便秘という診断には納得がいきませんでしたが、処置により腹部膨満は解消し退院しました。退院後、母乳とミルクを与えていましたが、数日後再び腹部が膨張してきました。夫に『乳糖不耐症』かもしれないから母乳を与えるのやめたら?と言われ、ミルクを変えたりと、試行錯誤を続けるうちに1ヶ月が経過し、特に目立った膨張もなく現在に至っていますが(現在、息子は2ヶ月半になります)母乳は1日1回という日々(乳糖フリーミルクは合計1l程)。確かに、母乳を2回与えた次の日には、うんちがゆるくなり『乳糖不耐症』なのかも?と思いますが、確定診断もなく単なる素人考え。夫曰く「母乳中のラクターゼが少ないからじゃないか」と(これまた、ネットからの情報で医師による診断ではありません)。そのうち、哺乳瓶に慣れてしまったのか乳首を嫌がり始めたので搾乳した母乳を哺乳瓶にて与えていました。ある日、母乳を60ml与えた数時間後から水様便を排出し始めました。機嫌も悪く何をしても泣き叫ぶばかり。もしかして、本当に先天性の乳糖不耐症では?と不安に思いつつ与える母乳量を調整していたところ、1日に50ml以上与えると水様便になることがわかりました。20ml位までは、うんちがゆるくなる程度で機嫌も悪くはなりません。2次性の乳糖不耐症が発症するような状態にはありませんでした。息子は本当に先天性の乳糖不耐症なのでしょうか?(乳糖不耐症によって、腹部膨満は起こりうるのでしょうか?)先天性のものはとても発症率が少ないと聞いているのですが、息子はまさにその1人なのでしょうか?最初の1ヶ月は、普通の黄色いうんちで水様便など排出したことがなかったというのに、突然乳糖不耐症になって、それが持続しているだけなのでしょうか?また、これからも持続するのでしょうか?日本でお医者様が処方して下さる乳糖分解酵素は、アメリカでは処方されず、乳幼児用のものは手に入らないので、私はすでに断乳の準備中で母乳育児については諦めてしまいましたが、乳糖フリーミルクだけで育てるべきでしょうか?やはり、母乳をあげるのは諦めるべきでしょうか?全くの不耐性ではない=乳糖分解酵素が少ないなどで下痢をしている場合、乳糖入りミルクに慣れることによって耐性が少しずつ増加したりはしないのでしょうか?また今後、離乳食が始まれば、どのように食事を与えればいいのでしょうか?長々と書き連ねてしまいましたが、現在アメリカ在住にて、頼れる小児科医にも巡り会っておらず相談する相手もおりませんゆえ、ご返答の程どうか宜しくお願いいたします。(Sさん)

医療環境の違う中で、いろいろとご苦労が多いと思います。
お仕事からは医療関係の方でしょうか。
私で分かる範囲でお答えさせていただきます。

まず「ヒルシュスプルング病かどうか」の点ですが・・
胎便が正常の排出されていること、腹部膨満が生後数週間後に現れていること、そしてその後の経過(手術的治療を行わないにもかかわらず改善されている)などから、否定的であると思います。

腹部膨満の原因は、定かではありません。
何らかの原因で、排便異常が起きたとしかいえません。
何かの感染症があったのかもしれません。
しかし、それもどうも一過性のものだったようです。

その後の様子は、乳糖不耐症であることは明らかだと思います。
一定量の乳糖(ここでは母乳)を経口摂取すると下痢になることからです。
乳糖不耐症はやはり先天的なものは少ないと思います。
そして、日本人はもともと乳糖場分解酵素の活性レベルがそうとう低いです(乳児においても)。
そのために、何らかの腸粘膜のトラブルがおきると、容易に「二次的乳糖不耐症」になってしまいます。

お子さんの乳糖不耐症が「先天的か二次的か」についてですが・・
一定量の乳糖は分解し、消化吸収できるようですので、先天的ではないように思います。
先天的であり、完全な乳糖分解酵素欠損であれば、少量の母乳摂取によっても下痢がおきるでしょう。
また、生後すぐから症状は出てくるはずです。
生後数週間、母乳栄養ができたわけですから、それだけですでに「先天的な完全欠損」は否定的です。

現在は少量の母乳を飲ませているようですが、乳糖不耐症の対処は「一定期間の完全な乳糖除去」がコツです。
母乳哺育の必要性はありますが、お子さんにとっては乳糖除去ミルクを当面使っていただくことが何よりも対応だと思います。
栄養的には普通の粉ミルクに劣ることはありません。
途中のトラブルが大きかったので、腸粘膜がもとに戻るまでにそれなりの期間が必要かもしれません。
いずれ乳糖分解酵素も含めて腸粘膜が“完全復活”してくるはずですが、それがいつになるか、分かりません。
気長に構えていって下さい。

離乳食は日本で行っているように、「生後5か月から、炭水化物を主に」始めていいかと思います。
それもゆっくり、少量を確かめながら進めいていって下さい。

乳糖は、いずれは摂取できるようになると思いますが、やはり少量を試しながら・・
母乳が出ているようであればそれを使ってもいいですし、粉ミルクでもいいかと思います。
コツは・・症状がでないような少量を、ゆっくり増やしていくことです。

乳糖分解酵素の製剤はありますが、実際にそれが治療の役にたつとは私は思っていません(使用していません)。
そうとう分子量の大きい物なので、かえってアレルギーなどの問題を起こしうることも指摘されていません。
アメリカで使用されていないのは、もともと「乳糖不耐症」が赤ちゃんに起きることは少ないことと、この製剤の効果に疑問があることからだと思います。

いろいろと思いつくまま書きましたが、多少なりともお役に立てることを期待しています。
その後の経過など、また教えていただければ幸いです。

2006.5.1

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塚田こども医院Q&A2006年