« 異変続き!? | メイン | 野戦病院? »

2006年04月26日

1点をめぐって

 日本の医療はほとんどが保険でまかなえます。国民の誰もが何かの保険に入っているという「国民皆保険」制度があるのは、世界中で日本と韓国だけ。その保険制度は、一定のルールに基づいて金額が決められるのですが、それが診療報酬という名前の点数制度です。

 診察料、検査料、注射料、手術料、薬剤料などがこと細かく決められています。その仕組みや点数が2年に1回改定され、この4月から新しい診療報酬になっています。病医院の会計も、今月から新しいものになっているので、もしかしたら「先月と同じことをしたのに今回の支払いは違っている」と思われた方もおられることでしょう(そのほとんどは安くなったことに気づかれたでしょうか)。

 新しい診療報酬についても詳しい情報が発表されたのが3月上旬。そこから1か月足らずで新しい仕組みや点数に変更しなくてはいけなかったので、3月の最後はけっこうバタバタと仕事をしていました。専用の医事コンピューターのソフトも入れ替えなくてはいけないのですが、それを作るメーカーも短い期間しかないので、大変な作業だということを聞いています。ソフトの変更だけでも業界全体で数百億円の費用がかかっているのだとか。それはみんな医療機関が負担しているわけで、何のための制度改定なのか、疑問に思うこともしばしばです。

 4月に入って、新しい診療報酬についてやっと慣れて会計業務ができるようになってきたところで、またまた新しい問題に巻き込まれています。保険の請求は1か月分をまとめて翌月に請求をだすのですが、その請求ルールも変更になったのです。いつものことなのですが、請求ルールは4月下旬に公表されます。請求業務には間に合うように見えますが、必ずしもそうではない面もあります。

 医事会計専用のコンピューターは、毎日の会計を患者さんごとに行っていくと、1か月分を自動でまとめてくれ、それを翌月の頭に打ち出し、請求用の明細書(レセプト)ができあがります。基本的には日々の会計業務に間違いがなければ、それをそのまま提出することで、請求業務は終了です。ところが今回の改定では、当初予定されていなかった明細書の書き方が突然に決まり、一部の会計業務をやり直す必要がでてきました。それが分かったのが昨日のこと。今月1日から今までの会計の見直しをしなくてはいけなくなったというわけです。

 それは「外来迅速検査加算」という料金です。その場ですぐに検査をし、それを患者さんの診療にすぐに役立てるときに、通常の検査料に加えて請求できるというものです。この加算をいただいた方の請求明細書に、それを実施した日付を書き入れるようにというのが、今回分かった新しい指示になります。会計業務をやりながらであればそれほどの作業量ではありませんが、ほぼ1か月分、さかのぼってコンピューターに入力し直さなくてはいけないというのは、ずいぶんの作業量になってしまいました。今日は事務員総出で、半日以上の超過勤務をして、やっと対応することができました。

 診療報酬のルールを作っているのは“霞ヶ関の住民”。厚生労働省の立派な建物の中からは、現場の様子が見えないのでしょうね。お役人のデスクワークに振り回されるのは、もうゴメンです。

 ちなみにこの加算はわずか1点(1点=10円)。診療報酬という仕組みの中で「最低価格」。わずか1点をめぐって、こんなにも手間をかけなくてはいけないのかとあきれかえりました。お役人の常識が、私たち一般人の常識と違う物だと言うことを、つくづく実感した次第です。

投稿者 tsukada : 2006年04月26日 23:54

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
https://www.kodomo-iin.com/mt/mt-tb.cgi/262

コメント