« 熱中症 | メイン | 地域唯一の小児科に »

2006年05月30日

恩師の開業

 私の恩師にあたる小児科医が先週新しく開業されました。今から20数年前、医学部を卒業したての私が臨床研修した新潟市民病院の、当時の小児科部長。その後副院長をされ、定年退職後は民間病院の副院長をされながら、毎日小児科外来での診療をされてきました。今春そこを退職され、開業されたというのが、簡単なご経歴です。

 私が小児科医になったのも、このO先生のおかげです。最初は「子どももある程度診れる内科医」を目指して研修をしていました。出身大学が自治医科大学で、地元である新潟県内の僻地の病院で働くことになっていましたが、規模が小さければ小児科医はおらず、ある程度のことは内科医が引き受けることになるだろうと思ったからでした。

 実は当時の臨床研修に、このような「総合的なカリキュラム」はありませんでした。専門試行が強く、内科医であっても特定の科に入ってそこで研修し、一人前の医師になっていくというのが一般的。何でもできる医者、科の境界は関係なく、患者さんをまるごと診療できる医者というのは、「専門医」より劣っているというようなヘンな見方が大勢でした。

 県庁の担当部長に直接お願いし、大学には行かず、市中の一般病院で臨床を重視した研修をさせてもらったのは、自治医大の新潟県卒業医師の中では初めてでした。そして・・最後にもなりました。残念ながら、地元医学部の了解が得られなくなったのだと、後日その理由を聞かされました。

 話は飛んでしまいましたが、市民病院の中での研修も、実は希望通りには行きませんでした。内科の研修以外にも、小児科、外科、麻酔科などを幅広く勉強したいとお願いしたのですが、外科などは、やはり専門医を育てるための研修だということで、門戸を開いていただけませんでした。そんな中でも“心の広い”小児科を加えてのローテーション形式の研修をすることができました。

 私は1年目は内科の中のいくつかを研修していたのですが、2年目には小児科医としての研修に切り替わっていました。その時に、私に小児科医になるように熱心に勧めて下さったのがO先生でした。その間の経過は、詳しくは覚えていないのですが、先生からお話があり、「小児科も悪くないな・・」などと思いながらもなかなか決めかねている間に、O先生が先に手続きを進めていったようです。というのは、私は正式に了解をした覚えが、どうもないのです。忘れてしまったのかもしれませんが・・

 当時の新潟市民病院は、小児科は内科の一部との混合病棟でした。糖尿病などの内分泌内科の研修でこの病棟を訪れていた時に、私を見そめて下さったようです。病棟で行われている小児科の行事などに、小児科の先生方よりも熱心に参加して、子どもたちと遊んでいたからのようです。内科の研修がヒマだったのかもしれませんが、子ども好きの性格を見抜かれてしまいました。

 そんなこんなで私に小児科医になることを(私の代わりに?)決めて下さったのもO先生ですし、その後の小児科の指導をして下さったのもO先生です。小児科医としての私の遺伝子の中は、すっかりO先生由来のものが詰まっているのです(←これはちょっと言い過ぎでしょう)。

 そんな小児科の大御所ですが、隠居の道は選ばなかったようです。これからも生涯、現役の小児科医として、子どもたちの健康を願って活躍されていくことでしょう。その志を、私も学んでいきたいと思っています。

 ちなみのこのO先生は、御歳70歳になられます。正直言って、そのお歳で新規開業するの!?って驚きましたが、でもまだまだお元気です。まだまだ何十年も診療できそうです。私は今49歳。あと20年ほど頑張って、やっと今のO先生と同じになります・・。まだまだリタイアさせてもらえそうにありませんね。ちょっとめまいがしてきました(T_T)

投稿者 tsukada : 2006年05月30日 21:43