« 年長さんも麻疹・風疹混合ワクチンを | メイン | 6月の末日・・外は大雨 »

2006年06月29日

年長児の麻疹風疹ワクチン(Q&A)

 昨日の「院長ブログ」の続きです。麻疹・風疹混合ワクチンの接種がいよいよ“年長さん”にも始まるよと書きました。今日はすでにいただいたいくつかの質問にお答えします。

●もうすでにワクチン接種はすませているのに、もう一度受けなくてはいけないのですか?

 素朴な疑問ですね。昨日も書きましたが、以前の「日本の常識」では麻疹も風疹も1回で一生かからなく程度の免疫ができるとされていましたが、それは半分は正しく、半分は間違い。純粋にワクチンだけでは一生の免疫にはなりません。以前は日本ではまだまだ感染症の流行が多かったので、途中で「自然のブースター」がかかっていたため、ワクチンは1回でも十分なケースが多かっただけ。現在はあまり流行することがなくなってきたので、やはりもう一度ワクチン接種を受けておいたほうが良いということになりました。せっかく制度ができたので、やはりぜひ受けて下さい。

 ちなみに、私は近くの看護大学で非常勤講師をしていますが、学生さんたちは病棟実習に入る前に抗体検査を受けてもらっています。そうするとけっこうの割で、免疫のない学生さんたちがいます。聞いてみると、小さな時に受けている人たちが大半。その人たちは1回のワクチン接種だけでは十分ではなかったということになります。こうした学生さんは、自腹でワクチン接種を受けてもらっています。

●2回目の接種を受ける前に抗体検査をしておいたほうがいいですか?

 その必要はありません。抗体検査をせずに、全てのお子さんが2回目の接種を受けることになっています。もちろん検査を希望される方は受けていただいてかまわないのですが(保険が使えませんので、費用は全額自費です)、仮に抗体があっても追加の接種を受けて何ら問題はありません。

 もし抗体検査を受けて、免疫がなければ当然2回目の接種は受けてもらっています。また、免疫はあるけれども、その値が低い場合(疑陽性、または弱陽性)には2回目のワクチン接種がブースターとなり、その後にはとても強い免疫になっていくと期待されます。

 ということで、わざわざお金を出し、子どもに痛い思いをしてまで事前に検査を受けてもらう必要はないということです。

 なお、医学的には、たとえばワクチン接種の前後で検査をして、免疫が十分にできたかどうかを知るということも大切だとは思いますが、それを全ての子どもたち(1年間で生まれる子どもは100万人強)に検査を行うことは無理なことです。

 もう一つ付け加えると、この抗体検査が多少ファジーな面があります。いくつもの検査方法があり、それぞれの意味するところが少しずつ違っているために、場合によっては異なった結果になることがあります。免疫について詳しい医師がきちんと行う必要があるのですが、残念ながら不適切な検査方法で解釈している場合も散見されます。そんな意味でも、抗体検査には重きをおいて考えないで下さい。

●海外に行くときには2回の接種が意味ありますか?

 アメリカなどの諸外国では、感染症が国内に持ち込まれることに神経質になっているところが多くあります。たとえばアメリカに留学するときには、事前に必要なワクチンを全て受けていないと留学の許可がおりません。麻疹であれば少なくとも2回の接種が必要です(州によっては3回のところもあります)。日本で乳幼児期に行っている予防接種を全て受けてあってもまだ足りないので、留学が決まった段階で急いで追加のワクチン接種を行うことがときどきあります。

 今回のように麻疹・風疹がともに2回接種を受けることで、「国際標準」に近くなってきたといえます。いずれ海外に行くときなどの時も、手続き上もとても役に立つことです。

●無料ですか?

 そうです。法律に基づいて市町村が行う予防接種なので、乳幼児期のいろいろなワクチンと同じ扱いです。

●麻疹にかかってしまったのですが、それでも受けるのですか?

 麻疹と風疹の混合ワクチンとしてご案内をしていますが、今回の改定で、麻疹や風疹の単独のワクチンも使えるようになりました。もし麻疹にかかってしまったのであれば、麻疹ワクチンは必要ありませんので、風疹単独のワクチンを受けて下さい。その逆に風疹にかかったのであれば、麻疹単独のワクチンを使います。

 なお、麻疹や風疹の診断は、経験の豊かな小児科医が臨床診断をしているか、抗体検査などで確実に罹患していることが分かっている時に限定して扱ってほしいと思っています。いずれも発疹(ほっしん)のでる感染症ですが、類似の感染症などもあり、見慣れた小児科医でないと間違って診断している場合もあるようです。

 もし、「怪しい」「疑い」程度のあやふやな診断であれば、できれば混合ワクチンで受けてしまって下さい。先にも述べたように、仮にそれが本物の感染症で、十分な免疫ができていても、そこにワクチン接種を受けて何ら問題はありません。

●副作用がさらに強くなるのでは?

 そんなことはありません。これも誤解されやすいことです。

(1)1回目のワクチンで抗体が全くできていない場合:2回目は初めてのワクチン接種と同じ程度に副作用がおきる可能性があります。
(2)1回目のワクチンでそうとう十分な抗体ができている場合:2回目のワクチンは、接種した直後にその抗体により中和され、体内で繁殖することもなく、当然、副作用がおきることもありません(麻疹・風疹ワクチンは、生のワクチンです)。
(3)1回目のワクチンで免疫ができているが、弱い場合:2回目はブースター効果になりますが、この場合にも体内での生ワクチンの繁殖は限定的であり、副作用がおきるほどには至りません。

 以上のことをまとめると、副作用は皆無であるか、またはあるとしても1回目の同程度だということです。けっして2回目だからよけいに副作用が起きやすいということはありません。

●いつまでに受けるのですか?

 2期の接種は。小学校就学前1年間と規定されています。今の園の年長さんは今年度いっぱい、つまり来年3月末日までが期限です。

 それまでであればいつでも良いということですが、冬場はインフルエンザの流行などもありますので、秋口くらいまでに受けるようにされてはいかがでしょう。

●まだ案内がありませんが、市町村によってやり方が違うのですか?

 厚生労働省は6月2日付けの文書で、全国で行うように通知をしています。すべての自治体がその方向で動いていますが、開始の時期が多少違っているようです。新潟県では一律に7月1日開始として足並みをそろえました。他のところも、そろそろだと思います。具体的なことは、お住まいになっている市町村からの連絡を待つか、直接担当の係にお問い合わせになってみて下さい。

投稿者 tsukada : 2006年06月29日 22:45