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2006年10月12日

のんびり行きましょう!

 赤ちゃんの離乳食は、いつから始めていますか? 日本ではだいたい5か月くらいから始めることが多いと思います。これまで小児科医や栄養士がそう指導してきたからです。それがこれから変わるかもしれません。

 今日のニュースにあったのですが、WHO(世界保健機関)はすでに、「生後6か月までは母乳で十分」と報告しているそうです。早くから離乳食を始めることが、かえって母乳不足になって、赤ちゃんの健康にマイナスになるおそれもあるのだと指摘しています。

 日本で「離乳の基本」という指針ができたのが10年ほどまえ。そこに離乳食は生後5か月から始めるように書かれています。また、それまでの生後3〜4か月を「離乳の準備期」として「薄めた果汁やスープを与える」とも書いてありますが、WHOはその非通用もないとしています。これから検討に入るということですが、近いうちに指針が改定されることでしょう。そこにはきっと「生後6か月までは母乳だけで十分であり、他の水分や固形物を与える必要はない」「離乳食は生後6か月から始める」と書かれることになるでしょう。

 この経過だけをみると、日本の指針は時代に合わないものと受け止めらるかもしれませんね。あるいは、間違ったことを教えていたのではないかと。実は離乳食の進め方については、日本のこれまでの指針は「先進的」だったのです。

 日本では、生まれたばかりの赤ちゃんはもちろん、生後半年くらいまではできるだけ母乳でそだてようという伝統がありました。一方で欧米では、母乳よりも人工乳をすすめていたり、生まれたばかりの赤ちゃんにも乳汁以外のものを与えることも多く、一定した指導方針がありませんでした。一部では、“超早期離乳食のすすめ”といった考えもあり、混乱している状況だったのです。

 そんな中で出された日本の「離乳食は生後5日月から」という指針は、そうとう革新的であり、進歩的な内容だったのです。それ以来、諸外国の離乳食の考え方は、日本と同じようになってきたようです。

 当院でも、すでにこの考え方を取り入れた指導をしています。「離乳食はあせらず、ゆっくりと始める」「生後半年くらいまでは母乳以外のものは、水分も含めて栄養的にも不要」「早い段階でスープやジュース、イオン飲料を与えてしまうのは、かえって問題」など。このHPを通して、離乳食の進め方についての質問が多く寄せられていますが、それへの回答は、このような考えをベースにして行っています。

 普通の赤ちゃんでもそのようにしているわけですが、これが食物アレルギーをもつ赤ちゃんであればよけいです。最初はお粥のような炭水化物を中心にしてもらい、動物性たんぱく質は生後8か月くらいの、消化吸収がしっかりくる月齢から始めるようにお願いしています。それも、本人の様子(嘔吐、下痢、湿疹などがでてこないかどうか)を見ながら、大丈夫だということを確認してから次に進むようにと。

 世の中一般に「早いほうがいい」「多いほうがいい」などという傾向が強くなっています。でも、赤ちゃんの健康作りのためには、離乳食は「早すぎず」「多すぎず」を基本に考えていってくださったほうがいいようです。

投稿者 tsukada : 2006年10月12日 22:11