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2007年01月07日
ホワイトカラー・エグゼンプションについて
「ホワイトカラー・エグゼンプション」(white collar exemption、ホワイトカラー労働時間規制適用免除制度)について、昨日の「院長ブログ」に引き続き、お話をします。
用語の説明を先にしますが、「ホワイトカラー(white collar)」とは背広を着て仕事をする人たちをイメージしますが、ここではいわゆる管理職のことをさします。そのホワイトカラー労働者に対する労働時間規制を適用免除(exempt)することが、今回導入されようとしている制度です。
大きな会社組織の中で、部下を多数もち、仕事を自分なりの裁量で大いに行うことができる人たちは、週40時間の労働時間制度は必要ないでしょう。でも、大多数の労働者は上からの指示や命令の中で仕事をしているのであり、自分なりの働き方を自分で決めることなど、できるはずがありません。
実はすでに「管理職」になると時間外手当は出さないのが通例になっています。これらの人たちは、実質上すでに「ホワイトカラー・エグゼンプション」が適応されていることになります。
今回、国や雇用者側が導入しようとしているのは、「管理職」以外の普通の労働者に対しても適応したいということです。原案通りに導入されると、産業界全体で11兆円もの人件費が削減されるというのです。それって、あんまりじゃないですか!
政府案では、年収400万円以上の労働者を対象とすると書いてあります(それ以外の要素もありますが)。恐ろしいことです。ごく一部の「上流サラリーマン」だけが対象だと思ったら、大間違いです。年収400万円は、普通の会社員ならだいたい対象になってしまうでしょう。
また、この制度が適応されると、もし過労死したり、オーバーワークから体調を崩しても、それは本人の責任とされかねません。自分の裁量で働き方を決めているのだから、健康管理も自己責任なのだと。
形式的には労働時間や休日は自分で決めることになるでしょうが、仕事の内容や業務量は自分で勝手に決められるものではありません。それなのに、本人に健康上のトラブルが生じたときには、会社は知らないという態度をとるとしたら、それは卑怯です。
今の日本でも、すでに「管理職」を巡って、その乱用が問題になっています。医療関係でとく目立つようなのですが、病院の勤務医を全部「管理職」にしてしまうところがあります(研修医などは除く)。外科医であれば、夜間や休日に緊急の手術があっても、「管理職」であるために、時間外手当を支給する必要がありません。正規の勤務時間内から始まった手術がどんなに長びいて、夜中になっても同じです(難しい手術は10時間を超えることもよくあります)。小児科や内科医も同じように、夜や休みの日に働いても、何も手当がありません。
こういった制度を導入し、医師の人件費を安くしようとしている病院はしだいに増えているそうです。そこでは、次第に勤務医の疲弊と、意欲の減退、そして一部には燃え尽き症候群に陥る例も出てきていると報告されています。こうしたことが横行すれば、最終的には患者さんや地域の皆さんがきちんとした医療を受けられなくなるという不利益をこうむることになってしまいます。きわめてゆゆしき問題です。
今の日本でも「管理職」という“称号”を与えれば、こういったことが「合法的に」可能です。もし「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度が導入されれば、管理職以外の普通の労働者へも同じような働き方と賃金の支払い方がなされていくことでしょう。
そんなふうに考えると、「ホワイトカラー・エグゼンプション」はきわめて恐ろしい制度です。
日本は今は好景気なのだそうです。なかなかそれが実感できないわけですが、景気の良いのは大企業だけ。そんな企業に対しては、さらに減税案を用意し、個人の所得はすでにそうとうの増税を行い、これからももっと税金を多く取ろうとしています。それに加えて、この「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度の導入しようとしているのは、働く者を大切にしているとは、とても言えません。むしろ、虐げているとさえ思えます。
政府は日本をどんな国にしたいのですか? この先が見えてきません。
投稿者 tsukada : 2007年01月07日 19:49