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2007年01月27日
少年たちを殺したのは誰?
先週からインフルエンザの患者さんを少しずつ見かけるようになっています。例年ですと、1月下旬になると一挙に流行するものなのですが、今年はまだ本格的な流行にはなっていないようです。これは新潟だけではなく、どうも全国的な傾向のようです。
期待としてはこのまま大きな流行にならずにすんでくれればいいと思うのですが、さあどうなるでしょうか。相手はウイルスですから、どんな振る舞い方をするか、誰にも分かりません。今シーズンの流行がさほど大きな規模にならずにすみ可能性もある一方で、これから一挙に大流行する可能性も否定できません。まさに「神のみぞ知る」といった様子です。
手洗い、うがいなどの励行、あまり人混みにはでかけないこと、十分な睡眠をとって体調を整えておくことなど、インフルエンザに限らないのですが、気をつけていて下さい。
今週はいろんな事件や出来事がありました。あまりに多くの、そして大きなことがあったので、その一つひとつの内容をもう忘れてしまいそうです。でも、しっかりと記憶にとどめておかなくてはいけないことも多々あるように思います。時間の過ぎ去るのに流されず、ちょっと立ち止まって考えることも、また必要なことでしょう。
兵庫県宝塚市のカラオケ店で起きた火事で3人の少年が亡くなった事件(事故ではないと思います)が起きたのは20日の夜。ちょうど1週間になります。この間にいろんな事実が明らかになっています。あまりにずさんで、お客さんの命を粗末に扱っていたこのカラオケ店の経営者や店長に、腹が立って仕方ありません。
最初は倉庫として作られた建物をカラオケ店に改装しても必要な届け出をせず、許可も受けていなかったとのこと。少年たちが亡くなった2階には非常口もなく、部屋の窓はベニヤ板でふさがれ、ひとたび火事が起きれば逃げることができないことは自明のこと。
わずか数人のアルバイトに店のことをまかせっきりにし、避難訓練はおろか、消化器の使い方もしらなかったとか。今日の報道では、たった1本の消化器しかなかったのに、それもすでに使用済みで、使える消化器は皆無だったようです。調理で油を入れた鍋を何十分も加熱してしまったのが直接の原因であり、担当していたアルバイトの女性が逮捕されていますが、今回の事件で一番問題になるところは、経営者です。きっとその点は警察が調べているのだとは思いますが、よもや、経営者がただ届け出を怠っていたなどというような形式的な問題だけで起訴することのないようにお願いしたいと思います。
それと同時に、消防局の対応もやはり問題にせざるをえません。経営者の娘婿がこの消防署の職員だったとか、署員がこのカラオケ店を利用していたことがある、などといった報道もあります。お役所らしい「身内に甘い」態度で、この問題にあたることは許されません。
確か火事の翌日、消防署が行った記者会見で、「届け出がなかったので、カラオケ店であることを知らなかった」「消防としては適正に対応していた」といった内容の話が出ていました。これには驚いたと同時に、怒りがこみ上げてきました。大きな火事があり、そこで3人もの命が奪われています。そんな役人言葉は聞きたくないありません。
住民の命や健康を守るのが自治体の役割であり、それが火事などであれが消防署の役割です。どこでどのような間違いがあったかは別にして、まずもって自治体や消防署が少年たちの命を助けることができなかったという事実をしっかり見つめるべきですし、それができていれば、最初に出てくる言葉は役割を果たせなかったことへの謝罪や反省の言葉でしょう。
その上で、何がどう問題だったか、究明していくことになります。今回のように、違法に改築され、適切な届け出がされていない建物について、その情報をどうやって収拾し、その実態を把握し、生命と財産を守れるように指導し改善させていくか、など、解決すべき課題が見えてきます。
私の医院も一定の面積を超えるということで、防火設備を完備しています。各部屋には火災報知器を設置し、消化器も相当数用意するなど、法の求める基準をクリアしています。そのための費用は数百万円かかっていますし、毎年2回は業者による設備の点検があり(その費用だけで年に数十万円になります)、避難訓練も定期的に行っているところです。
消防署による指導は事細かいものです。法令に準じてするわけですが、その解釈はやや恣意的なところもあるのか、細かいところで業者の理解と違っていたり、消防署の担当者間でも若干の違いがあるように感じています。ときにはお役所的な対応に振り回されているといった実態もあります。
そんなふうにしながらも、でも基本的にはきちんと対処できているつもりですし、当院をおとずれる患者さんや保育室にお預かりしている子どもたち、そして職員を火事などの災害からしっかり守ることができています。当院に限らず、ほとんどの事業所などはきっとしっかりとしていることでしょう。
問題になるのは、消防署の目が届いていない所です。今回の事件で明らかになったように、正規の手続きをしていないところが、実はメチャクチャなことをしている可能性があり、一番危ないわけです。その部分をほったらかしていて、それで消防本来の役割を果たしているとは、言ってほしくありません。
先にも書いたように、このカラオケ店のことは消防署は知っていたはずです。それを見て見ぬ振りをしていたのが、最大の問題です。多少譲って、消防署の担当者が知らなかったから対応できていなかったとしても、このような違法な事業所のことを把握できないことが問題なのだと言うことを、しっかりと認識してほしいものです。
この火事のあと、全国でカラオケ店の防火対策がしっかりしているかを査察しているとのこと。それはそれで必要なことですが、もっと必要なことは・・危険きわまりない建物でもほったらかしておける消防署の意識、そしてその利用者の命を守るべきだという当然の責任感が欠如している消防署の体質こそ、緊急に「査察」し、改善すべきことでしょう。
それができなければ、結局は何も変わらないことになります。若者たちの死も、過去の事実として忘れ去られてしまうのかと思うと、いっそう無念な気持ちがこみ上げてきます。
投稿者 tsukada : 2007年01月27日 23:58