« 拝啓 柳沢大臣さま | メイン | 段ボールはどこへ? »

2007年02月08日

暖冬とインフルエンザ

 インフルエンザは1月下旬に少しずつ発生が始まり、2月第1週で「流行期」に入りました。今シーズンの流行は、例年より遅く始まっています。

 このまま流行の規模が小さくてすめばいいのですが、なかなか将来のことは分かりません。以前の例では、2月中旬に始まった流行が、2月下旬から3月上旬にかけて大規模になったこともありました。油断は禁物です。できることなら、インフルエンザ・ウイルスに直接話を聞きたいものです。

 ただし、良い情報もありました。今シーズンの流行パターンが、始まりが遅いだけではなく、その立ち上がり方(患者数の増え方)がゆっくりだというのです。こんな年は、最終的な流行の規模が小さくて終わる傾向があるとのこと。それを信じることができれば、少し気持ちが楽になりますね。

 そうは言ってもやはり少しずつインフルエンザ患者が発生しています。うがい、手洗いの励行などとともに、生活リズムなどにも気をつけてお過ごし下さい。

 ところで、今冬のインフルエンザ流行が遅れているのが、暖冬の影響だという言い方をしている方もいます(私もそんなふうなお話をしたこともありました)。でも、それって本当なのかと、あるマスコミの記者の方から問われて、もう一度見直してみました。

 その記者の方も指摘していたのですが、測候所などで調べても、気象とインフルエンザ流行のパターンには関係がないようです。

 もし関係がある(つまり「寒かったり雪が多く降ったりする冬はインフルエンザが大流行する」)としたら、地理的に暖かくて雪も降らない地域では、インフルエンザはあまり大きな流行にはならない・・という現象がみられてもいいはずですよね。それがないことも、暖冬や少雪と関係づけることができない理由です。

 以前より多くの方がインフルエンザの予防接種を受けていただくようになりました。その点はどうか?という質問もありました。期待としては、そんな結論がでるといいのですが、ワクチン接種の普及との関係も、それほどないようです。

 現在使っているワクチンは、さほど効果の強いものではないので、インフルエンザの軽症化に役だっていても、感染を必ずしも阻止できているわけではないからです。今後ワクチンが改良されて、より効果の強いワクチンができてくると、ワクチンの接種率と流行規模が逆相関する可能性があります。

 インフルエンザは、一度かかると、一応免疫ができますので、次はかかりにくくなります。大きな流行がおきたあとは、その後は免疫をもっている人が多いためにしばらくは流行が小規模になると期待されます。 しかし、実際にはそうなっていないようにも見えるのは、また理由があります。

 インフルエンザウイルスには現在は3種類があるので、どの方が流行したかによって、違ってきます。さらに、A型はウイルスの形が変異しやすいので、同じA香港型とかAソ連型としても、翌年に少し変異したウイルスが出現すると、前年の流行と関係なく流行する可能性もあります。地域的に流行のおき方が違えば、翌年以降の流行を、全体として見てしまうとごっちゃまぜになって、訳が分からなくあります。

 インフルエンザの流行は、こういった多種の要因が絡み合っているため、単純にこうだからこうだというわけにはいかないようなのです。その点で、私たちも流行の予測がたてづらいですし、一般の方から、せっかくワクチンをしてもかかった、流行が大きかった、などという“苦情”をいただくことになってしまいます。

 何だか言い訳がましくなってしまいましたが、スパッと割り切れないところは、社会の縮図と似ているのかもしれません。

 インフルエンザウイルスは“生き物”。その形も性質も、どんどん進化していきます。新型インフルエンザの出現も時間の問題になってきています。もし人間の間で感染し合う新しいインフルエンザ・ウイルスができると、たちまちのうちに地球規模での流行(パンデミック)になってしまうと考えられています。日本でも数千万人が感染し、数十万人が死亡するだろうとの予測もあります。

 そんな怖いウイルスと付き合いたくはないのですが、残念ながら人間が生きていく限りウイルスと接触しないですむことはありません。そればかりか、人間の遺伝子の中にはウイルスの遺伝子が組み込まれているくらいですから、共に仲良く生きていくことが大切なのでしょうね。

 それにしても、あまり凶暴なウイルスとは友だちになりたくありません。ウイルスの皆さん、私たちと仲良くしたいのなら、少しは穏やかになっていて下さいね。

投稿者 tsukada : 2007年02月08日 18:08