2007年02月23日
社説盗用
いろいろなところで「ねつ造」が問題になっています。テレビでは「あるある大辞典2」の納豆ダイエットが世間を騒がせましたが、それ以外にもとくに健康番組で似たような不適切な表現が多くあるようです。
テレビは視聴率という数字が番組を評価する最高の物差しという世界のようですから、その内容の真偽や科学的な正確さについては、考慮してはいられない、ということなのでしょう。一見「科学的」と思わせるような装いをすることも、それが視聴率を高くすることが目的なのですから、ずいぶんと人をバカにした話です。
テレビの不正を追及している新聞も、似たり寄ったりのようです。先月は、朝日新聞の記者が地域の催し物を取材し、その写真につけた説明を、他紙からそっくり拝借していたことが発覚し、処分を受けました。記者の所属が新潟支局だということですし、近隣での出来事だったので驚きました。
数日前には、「新潟日報」という地方紙でも不祥事がおきました。今度は「社説」の盗用。朝日新聞の社説を下敷きにして、社説を書いていたというもの。全体の論旨と構成が同じであり、類似した表現も数か所にあったということです。この社説を書いた論説委員は、すでに処分されました。
社説といえば、その新聞の心臓部分。編集部がもっとも力を入れて書き上げるものでしょう。(それを読者が読むかどうかは別ですが。)文章に仕上げるのは個人の編集者だとしても、その内容については、編集部全体で討議し、合意しているはず。その意味では、他紙をコピーして作っただけの社説は、内容が問われるだけではなく、新聞全体の編集方針、力量、真偽など、その根幹が問われることでしょう。
もっとも、その程度の新聞だと思って読んでいればいいのかもしれません。その紙面を、新聞社が独自に作っているとは必ずしもいえないからです。地方紙だとはいえ、中央の政治や経済などについても、そうとう詳しい記事が載っています。世界中の出来事も、伝えられています。それらを、自社の記者が取材しているわけではありません。
こういった記事を作り、配信する会社があります。共同通信はその一つで、こういったところから記事を「買って」いるのですが、それが紙面を見る限り分かりません。かなり以前は配信会社名を記事に明記していたように思いますが、いつからか、それも行わなくなりました。
配信記事をそのまま使用しているので、他紙と同じ記事が載ることもあります。全国紙は独自取材が多いはずなので、こういったことはあまりないでしょうが、テレビ欄を読み比べると、同じ内容のことがあります。きっと番組紹介や批評といった記事を売っている会社があるのでしょう。
記事だけではありません。今回問題になった社説も、「論説参考資料」といったものを共同通信は配信しているのだそうです。それを下地にして、各地方紙などが自社の社説や論説を作ることもあるようなのですが、類似のものが他紙にも載ることがあるでしょう。
ときには、そのままそっくり使うことがあるかもしれません(ほとんど同じ社説を見たことがありますが、頻回におきていることではないと思います)。「社説」といっても、その程度のものかと思ってしまいます。
今回の「社説盗用」も、その延長線上にあったのかもしれません。普段から“下書き”にするものがあって、それを頼りに社説を作ることが習性になっていたのでは。いつもは契約料を払い、法的も問題のない「正規の下書き」を使っていましたが、たまたま(?)契約料を払わず、無断で(申し込んでも拒絶されるに決まっていますが)他紙の社説を「不適切な下敷き」にしてしまった・・。
そうだとすると、問題の根源はそうとう深いものがあります。自分の目でみて、聞いて、取材し、自分の頭で考えるという、ジャーナリズムに最も必要とされるものが欠如しているということなのですから。
新聞社も、結局は数字=販売部数だけがその存在の評価になっているとしたら、病根はテレビ界と同じです。芯があり、スジを通すことは、この社会では難しいことなんですね。
投稿者 tsukada : 2007年02月23日 23:29