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2007年03月15日

ウンチの色は大丈夫?

 先日の小児科勉強会での成果の続報です(といっても、私はただ聞いてきただけですが)。

 「先天性胆道閉鎖症」という病気をご存じでしょうか。肝臓で作られた胆汁は、胆管という管を通って小腸に流れるようになっています(途中に胆嚢という、胆汁をためておくところもあります)。この胆汁の通り道=胆道が、生まれつき閉じてしまっていて、胆汁が流れていかない病気のことをいいます。

 そのままにしておくと、黄疸が強くなり、肝臓も固くなって肝硬変になっていきます。生後数か月でどんどん進行し、一度肝硬変になってしまうと、元の肝臓に戻ることはありません。

 治療は手術のみ。肝臓の一部と小腸を直接接合し、胆汁が流れていくようにする手術を行います。問題なのは、手術のタイミング。できるだけ早く見つけて、早く手術を受ける方が治る率が高くなります。そのタイムリミットは、生後60日。

 生まれたすぐの赤ちゃんは、胎児の時の赤血球がすべて壊れて、新しい赤血球に入れ替わります。そのための黄疸が生後すぐから始まり、数週間で落ち着いてきます。これは「生理的黄疸」と呼ばれる普通の状態。通常は生後1か月くらいで黄疸は落ち着いてきます。

 それに対して胆道閉鎖症の黄疸は、このころからさらに強くなっていきます。胆汁が体外に出て行かず、体内に蓄積されていくからです。生後2か月くらいまでには手術をしたいわけですから、生後1か月くらいで見つけることがベストということになります。

 胆汁が小腸に流れ出ると、便の色がいわゆるウンチ色になります。薄めの黄色から濃い緑までがその色です。胆汁が出ていないウンチは、白に近くなるのが特徴。そのため、ウンチの色を見てもらうと、胆道閉鎖があるかどうかを、ある程度知ることができます。

 生後1か月の赤ちゃんは健診を受けていますが、生まれた産婦人科で、産婦人科医が行っている場合が少なくありません。できれば小児科医に赤ちゃんを診させてほしいのですが、そうなっていないことも多いようです。診察をし、必要に応じて検査をすることで、赤ちゃんの黄疸の原因を知ることができるのですが、小児科医以外では不安があるというのが、正直な感想です。

 そこで出番になるのが、ウンチ色の観察です。お母さん方は毎日、赤ちゃんのウンチを見ています。その色が、白に近い場合には、早急に小児科を受診するようにしてもらおう。そのために指標になる「ウンチ色の見本」を作って、配布するという事業が、一部の県や市で以前から行われています。

 新潟県でも新年度から、カラー印刷の「ウンチ色見本」を母子手帳にはさみこむことになりました。これによって、先天性胆道閉鎖症の赤ちゃんを早く見つけ、早く手術し、長く生きてもらえるようになるのではないかと、期待されているところです。

 先日の勉強会では、このシステムのことなどが紹介されました。その翌日、さっそく市の担当課から「ウンチ色見本」を取り寄せたところです。当院でも生後1か月の赤ちゃんを検診していますが、ウンチ色の観察についても、お母さん方にお話をし、赤ちゃんの健康管理や病気の早期発見などのために役立てたいと考えているところです。

 インフルエンザ大流行がまだ続き、「破壊的な忙しさ」の診療を毎日行っていますが、そんな中でも勉強し、それを診療に役立てるようとするなんて、偉い! (誰もほめてくれないので、自分でほめておきます)

投稿者 tsukada : 2007年03月15日 23:59