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2007年05月09日
金属疲労
私の愛用の聴診器です。リットマンという会社の製品で、使いやすく、性能も良いことに加え、カラフルな色のものが発売されているので、小児科医になってからずっと使っています。
といっても、同じ物を長く持っているわけではありません。1年か2年に一回くらい壊れてしまうので、ときどき新しく購入しています。今手元にあるのは、もう何代目になるのか、自分でも分かりません。おそらく20本くらいは買っていることでしょう。
今日、そのうちの1本が壊れてしまいました。ゴム製の管が2つに分かれて、左右の耳にさして使いますが、分岐部はバネのようになっていて、ちょうど良い圧力で耳に押し当ててくれます。その要(かなめ)の部分が折れてしまったのです。
ゴムを外して中の金属だけにしてみました。見て分かるとおり、2枚の鋼(はがね)が入っていて、それが左右に分かれた管を支えると同時に、バネの役割を果たしています。それが2枚とも折れてしまったということです。これが「金属疲労」です。
金属疲労といえば、先日の遊園地での大きな事故で問題になっています。車輪の軸が破断して、脱線し、お客さんがお一人亡くなりました。報道では15年ほどの間、車軸の交換はしていなかったし、きちんとした検査も受けていなかったとのこと。
金属は使い続ければ必ず壊れていきます。その時が早く来るか、遅く来るかの違いだけです。高速のジェットコースターだけに、もしものことがあれば今回のような大事故になってしまいます。安全管理が全くなっていなかったとしかいいようがありません。
聴診器の「破断事故」を繰り返し経験しているものとしては、信じられない対応だとしかいいようがありません。これを教訓に、今後こういった事故がおきないよう、十分な対策が日本中でしっかりととられることを願っています。
ところで、聴診器は小児科医にとって必需品。診察の際に、使わない患者さんは珍しいでしょう。ほとんど100%、聴診器で心臓の音を聞いたり、肺の呼吸音を聞いたりしています。病気で受診した時はもちろん、健診や予防接種の時もそうです。
私は年間に5万回くらいの診察をしています。そうすると、同じ聴診器を使ったとしてこの鋼は1年に10万回、力が加わり広げられることになります(1回の診療で、聴診器を付ける時と外す時の2回、この鋼を伸ばします)。同じところに力が集中すると、わずかな傷ができ、それが徐々に大きくなり、ある瞬間に破断することになります。
実際には何本かの聴診器を使っているので、果たしてどれくらいの使用回数で壊れてしまうのか、正確なことは分かりません。製品によっても違うでしょう。でも、これまでの“実績”からは10万回前後で壊れている計算になりそうです。
ところで、この聴診器は1本が定価で2万円ほどします。けっこうなお値段です。でも「寿命」を診察5万人分とすると、1回の診察にかかる聴診器代(?)は0.4円ということですから、それほど高額ではないことになるのかな??
今日壊れた聴診器はラズベリー色のもの。まだ手元にはピンクのものがあります。これは色は気に入っているのですが、汚れやすいのが難点(診察中はゴム印を使うことが多く、私の指がインクで汚れるのが原因)。さっそくラズベリーを1本と、さらにカリビアンブルーを1本注文しました(この色もおきにいりで、とくに“夏向き”の色をしています)。
ネットの通販を利用しています。こういった「業界物」ですら、ネットで買えるのですから、便利になったものですね。専門店に注文をするよりも品揃えが豊富ですし、早く手元に届きます(早ければ翌日には)。
今から新しい聴診器の到着するのが楽しみです!
投稿者 tsukada : 2007年05月09日 22:55